アルコール性肝障害
概要
アルコール性肝障害とは、長い期間にわたる過度の飲酒によって肝臓に障害が起こる病気の総称です。肝臓は食べ物の栄養を利用しやすくしたり、体にたまった毒素を無害化したりする重要な臓器です。
アルコール性肝障害は、飲酒量と期間に応じて段階的に進行します。最初は肝臓に脂肪が溜まるアルコール性脂肪肝から始まり、炎症が起きるアルコール性肝炎や、肝臓が硬くなるアルコール性肝線維症を経て、最終的には修復不可能なアルコール性肝硬変へと至ります。早期の段階(脂肪肝など)であれば、禁酒によって正常な状態へ戻ることが期待できます

アルコール性肝障害の原因
アルコール性肝障害の主な原因は、長期間にわたり大量のアルコールを摂取し続けることです。アルコールは肝臓で分解されますが、その過程で生じるアセトアルデヒド(*1)や活性酸素(*2)が肝細胞(*3)を傷つけます。飲酒量が多いほど、これらの有害物質が増えて肝臓へのダメージが強くなり、肝炎や繊維化(*4)(せんいか)を起こします。
一般的に「過度の飲酒」とは、1日平均の純アルコール摂取量が60g以上(日本酒なら3合、ビールなら中瓶3本、ウイスキーならダブル3杯程度)を指します。女性や高齢者、エタノールを分解する酵素の活性が低い人は、これより少ない量でも肝障害を起こすリスクが高いため注意が必要です。
また、アルコールの摂取量が同じであっても、個人差によって肝臓への影響は変わります。飲酒の習慣が長く続くほどリスクは高くなりますが、肥満や糖尿病など、ほかの健康上の問題があるとさらに肝臓への負担が大きくなると考えられています。
※1:アルコールが分解される途中にできる有害物質
※2:細胞を傷つけやすい酸素
※3:肝臓を構成する細胞
※4:肝臓が線維状の組織に置き換わる状態
アルコール性肝障害の症状
アルコール性肝疾患は、初期の段階でははっきりした症状が出ないことがあります。しかし、病状が進むと、次のような症状が見られることが多いです。
- 疲れやすさ・だるさ
- 食欲不振
- 吐き気や嘔吐
- 腹痛や右上腹部(みぞおちの右あたり)の違和感
- 黄疸(*5)(おうだん)
- 手のふるえや意識障害(重症の場合)
黄疸は、肝臓がビリルビン(*6)を処理できなくなることで起こります。意識障害は肝性脳症(*7)の一つで、深刻な状態を示します。症状が重くなると入院が必要になる場合があります。
注意すべきは、初期の脂肪肝や肝炎の段階では、自覚症状がほとんどないことです。体のだるさや黄疸、腹水(お腹に水がたまる)などの明らかな症状が出現したときには、すでに肝硬変まで進行しているケースが少なくありません。健康診断での「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」の数値上昇を見逃さないことが、唯一の早期発見のチャンスです。
※5:皮膚や白目が黄色くなる状態
※6:人間の体内で見つかる黄色い色素。主に古くなった赤血球の分解によって生成される
※7:肝臓機能の低下で脳に毒素がたまって起こる症状
アルコール性肝障害の検査・診断
アルコール性肝疾患が疑われる場合、まず医師は飲酒量や生活習慣、症状などを詳しく聞き取ります。そのうえで、以下のような検査を行います。
- 1.血液検査 「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」の数値を確認する
- 2.画像検査
- 超音波検査(*8)(エコー)やCT(*9)(コンピューター断層撮影)、MRI(*10)(磁気共鳴画像)で肝臓の形や大きさ、脂肪のたまり具合を確認する
- 肝硬変の兆候として、肝臓がかたく小さくなっていないか、血液の流れが乱れていないかなどを調べる
- 3.肝生検(*11)
- 必要に応じて行う検査で、肝臓の組織がどの程度ダメージを受けているかを直接確認する
これらの検査結果を総合して、アルコール性肝障害の程度や合併症の有無が判断されます。
※8:人間の耳には聞こえない高い周波数の音波(超音波)を用いて、体の内部を画像化して臓器の状態を調べる検査
※9:X線を用いて人体の内部を輪切り状に撮影する検査
※10:強い磁石と電波を用いて体内の断面画像を撮影する検査
※11:肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる検査
アルコール性肝障害の治療
アルコール性肝障害の治療で最も大切なのは、アルコールを断つことです。アルコール性肝障害は、どの段階であっても断酒が治療の基本となります。特に脂肪肝の段階であれば、数週間の禁酒で劇的に改善することが多いです。重症のアルコール性肝炎や肝硬変であっても、断酒を継続することで生存率が著しく向上することが証明されています。
加えて、以下のような治療や対策がとられます。
- 1栄養管理
- バランスの良い食事や十分なタンパク質摂取により、肝臓の回復をサポート
- 食欲不振がある場合や重度の肝障害がある場合は、医師や管理栄養士によるサポートが重要
- 2.薬物療法
- 薬物療法は他の治療の補助として使われます。
更新:2026.09.25

