アルコール性肝障害 初期は脂肪肝、進行すると肝硬変・肝臓がん

済生会吹田病院

消化器内科

大阪府吹田市川園町

アルコールの長所と、健康障害

アルコールは世界中で飲まれ、私たちの食生活や社会生活に深くかかわっています。アルコールにはリラックスさせる効果があり、人間関係の潤滑油としての働きがあります。また、一般に少量(1日20g以下)の飲酒をしている人は、飲まない人に比べて心筋梗塞(しんきんこうそく)になる割合が低く(Jカーブ効果)、健康に良いと考えられています。

このようにアルコールには良い面があるため健康障害に関して寛容になりがちですが、適量を超えた連日の飲酒は健康障害を引き起こします。日本人は2型アルデヒド脱水素酵素の活性が欧米人に比べて低く、アルコールによる健康障害が起こりやすい体質を持っています。飲酒で顔が赤くなる人は代謝酵素活性が弱いので、飲酒量に注意が必要です。

アルコールにより脂肪肝から肝硬変へ

大量飲酒により肝障害や膵臓(すいぞう)障害(慢性膵炎)を起こすことはよく知られていますが、それ以外に喉(のど)や食道のがん、大腸がん、乳がんを発症する危険度を上げ、手足のしびれ、痛風(つうふう)などの病気を引き起こします。アルコールによる健康障害は全身に起こりますが、ここでは肝障害について解説します。

飲酒量に関しては、少量(1日20g以下)なら健康に問題ないと考えられています。この量は、日本酒で1合、ビールで500㏄(中瓶1本)、ワインでグラス2杯、焼酎で約2/3合になります。この3倍の量(日本酒3合相当)を毎日飲酒すると、アルコール性肝障害の起こる確率が高くなります。女性は男性に比べてアルコールの代謝能力が弱いので、男性の3分の2、すなわち40gの飲酒量でも肝障害を起こしやすくなります。

アルコール性肝障害の初期は脂肪肝です。太っていないのに健康診断で脂肪肝を指摘されたら要注意です。血液検査でガンマGTPが高い場合はアルコール性脂肪肝の可能性が高いと思われます。この状態になっても大量飲酒を継続していると、肝硬変(かんこうへん)に進行します。肝硬変になると血小板が低下し、10万以下に低下すると、進行した肝硬変で食道に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ができていることが多く、肝不全、大量吐血の危険性があります。ガンマGTPがいつもと同程度なので大丈夫と思っていたら肝硬変に進行していたということがよくあります。さらに、肝硬変まで進行していなくても、一時的に大量飲酒を続けるとアルコール性肝炎を発症し黄疸(おうだん)が出ることがあるので、注意が必要です。

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図 大量飲酒を継続すると初期の頃は脂肪肝ですが、症状のないまま肝硬変や肝臓がんに進行します

治療に関しては、残念ながら特効薬がありません。軽度の肝障害なら節酒、肝硬変なら断酒が必要になります。当院では、アルコール性肝硬変が疑われる紹介患者さんに対して、紹介当日にフィブロスキャンや超音波検査を用いて肝硬変への進行や、食道静脈瘤や肝臓がんの有無を調べ、アルコールによる肝障害が手遅れにならないように、かかりつけ医とともに患者さんをサポートしています。

更新:2022.03.08