加齢に伴う目の機能低下「アイフレイル」をチェックして、健康寿命を延ばそう!
メディカルブレイン編集部

年齢を重ねるにつれて心身の機能が低下すると、いずれ日常生活に支援が必要な「要介護状態」になってしまいます。この要介護状態と、健康な状態の間を意味するのが「フレイル(虚弱)」という言葉です。いかに早くフレイルに気づき、正しい予防や治療を行うかが健康寿命を延ばす鍵になるとして、近年注目を集めています。
フレイルは、筋力低下などをはじめとする身体的フレイル、認知機能低下などの精神・心理的フレイル、外出の機会が減り活動が減少する社会的フレイルの3つに分けられます。目の機能低下である「アイフレイル」は身体的フレイルの一種であり、放置すると健康寿命を損なう原因となってしまいます。
今回は、この「アイフレイル」について解説します。
「アイフレイル」とは、どんな状態?
「アイフレイル」とは、加齢に伴って視力が衰えてきたところに、さまざまな要因が加わることによって目の機能が低下した状態、あるいはそのリスクが高い状態を指します。
「アイフレイル」になると、以下のような症状が表れるようになります。

これらの症状を放置していると、視覚障害につながる恐れがあります。そうなると、単純に目の機能が衰えるだけではなく、日常生活が制限されることで日々のさまざまな活動にも悪影響を及ぼすため、いずれは要介護の状態へと結びついてしまいます。

「アイフレイル」につながる要因とは?
「アイフレイル」につながる主な要因には、以下のものが挙げられます。
老眼
老眼は、加齢に伴い目の調節力が低下し、近くが見えにくくなる状態のことです。老眼鏡で矯正することで、より見えやすくすることが可能です。
白内障
目には水晶体という、カメラで例えるとレンズに当たる部位があります。水晶体は本来透明で、光を屈折させてピントを合わせる機能を持っています。この水晶体が白く濁り、視力が低下してしまう病気が白内障です。
白内障の主な症状は目がぼやける、かすむというものですが、濁った水晶体を取り除いて人工レンズに置き換えることで、視力を回復させることができます。
緑内障
目の内部の圧力(眼圧)が上がり、目と脳をつなぐ視神経が障害されることで視野が欠けてしまう病気です。初期症状では気づきにくいのが特徴で、知らない間に症状が進行してしまうことがあります。一度欠けてしまった視野は手術をしても元通りには戻らないため、定期的に眼科検診を受けて早期発見に努めることが重要です。
点眼薬で眼圧を下げて視神経の障害を遅らせることが治療の第一選択肢になりますが、点眼薬では十分眼圧を下げられない場合は、レーザー治療や手術が必要になります。
他にも、糖尿病が原因で網膜に障害が起こる「糖尿病網膜症」や、色や形を見分けるために重要な、網膜内の黄斑部という部位が損傷する「加齢黄斑変性」なども、「アイフレイル」につながる病気です。
「アイフレイル」の予防について
「アイフレイル」を予防するために効果的なのは、定期的に眼科検診を受けることです。眼科検診では視力検査以外に、目の内側を調べる眼底検査や、緑内障の原因にもなる目の圧力を調べる眼圧検査、そしてまっすぐ前を見た状態で見える範囲を調べる視野検査を行います。
しかし、定期的に眼科検診を受ける人は少ないのが現状です。
日本眼科啓発会議が2024年に、全国約1万2000人の40歳以上の男女を対象に行った「目の健康に関する意識調査」によると、「目(視覚)に現在不自由を感じている」という人は42.5%にも上っています。
ところが、「普段から目(視覚)についての健康維持・病気予防に努めている」という人は22.8%でした。目に不自由を感じながらも、対策を取っていない人が多数いることが分かります。
前述の通り、「アイフレイル」の予防に効果的なのは定期的に眼科検診を受けることです。しかし諸事情により、すぐに受診することが難しいこともあります。その場合は、まずは以下のセルフチェックを行ってみることをお勧めします。
「アイフレイル」セルフチェックリスト
- 目が疲れやすくなった
- 夕方になると、見にくくなることが増えた
- 新聞や本を長時間見ることが少なくなった
- 食事のときにテーブルを汚すことがたまにある
- 眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった
- まぶしく感じやすくなった
- はっきり見えない時にまばたきをすることが増えた
- まっすぐの線が波打って見えることがある
- 段差や階段が危ないと感じたことがある
- 信号や道路標識を見落としそうになったことがある
出典:日本眼科啓発会議「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド」より引用
セルフチェックを行ってみて、該当する項目が0個の場合は、今のところ目は健康です。もし今後何か変化を感じることがあれば、またセルフチェックをしてみてください。
該当する項目が1個の場合は、目の健康に懸念はありますが、ただちに問題があるわけではないでしょう。
ただし、もし該当する項目が2個以上の場合は、「アイフレイル」が始まっている可能性があります。この場合は、一度眼科を受診することをお勧めします。
加齢に伴う目の機能の低下は、「仕方ない」と考えてしまいがちです。しかし、軽く見てしまうのは禁物です。放置していると、要介護状態に結び付いてしまう恐ろしい症状なのです。セルフチェックリストを活用して「アイフレイル」から身を守り、健康寿命を延ばしましょう。
更新:2025.06.06