【ランナー必見】マラソンによる膝の外側の痛み、ランナー膝(腸脛靭帯炎)かもしれません。原因と予防法

3月に入って東京マラソンなどの主要なマラソン大会も終わり、この冬のマラソンシーズンを走り終えたという人も多いのではないでしょうか。でも、マラソン大会に出場するために走り込みを重ねる中で、(ひざ)の外側に痛みを感じていませんか?その痛み、もしかするとランナー膝かもしれません。今回はランナー膝の原因と予防法について、解説します。

ランナー膝は、なぜ膝の外側が痛くなるのか

ランナー膝は、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)大腿骨(だいたいこつ)の出っ張りがこすれる炎症

長距離のランニングを行うと、膝の外側に痛みを感じることがあります。この症状はマラソンなど長距離を走るランナーによく見られるため、ランナー膝と呼ばれています。

原因が分からないまましばらく時がたつと痛みが消えるため、ランニングを再開したら、再び痛みが生じる――そのような悩みを抱えたまま練習を続けるランナーも少なくありません。しかし、ランナーによく生じる膝の外側の痛みには、明確な原因があります。

その原因とは、腸脛靭帯と大腿骨の膝側にある出っ張りがこすれることで起こる炎症です。腸脛靭帯は、骨盤から太ももから膝にかけての外側を通り、膝下にある脛骨(けいこつ)へとつながる(けん)です。

骨盤から脛骨(すねの骨)にかけて太ももの外側を通る「腸脛靭帯」と、それにつながる「大殿筋(お尻の筋肉)」の解剖図。

一方、太ももにある大腿骨には、大きな出っ張りがあります。膝の外側の出っ張りを大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)といいます。

大腿骨(太ももの骨)の構造図。膝の外側にある突起部分「大腿骨外側上顆」が赤く強調されている。

足を曲げ伸ばしすると、腸脛靭帯がこの大腿骨外側上顆の上を行ったり来たりするように動き、出っ張りとこすれ合います。その結果、炎症が起こるのです。

ランナーに多く発症する理由は、走る時に膝を曲げる角度

長距離を走ると、その分だけ腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が摩擦する(こすれる)回数も多くなります。特に、摩擦が強く発生しやすいのが、膝を20度から30度程度曲げた時です。ランニングで足が地面に着地し、膝に体重がかかる瞬間がまさにこの角度であるため、ランナーにはこの症状が起こりやすいのです。そこから、この腸脛靭帯炎はランナー膝と呼ばれています。

膝を曲げた時の腸脛靭帯の動き。大腿骨外側上顆と靭帯がこすれる「摩擦点」で炎症が起きるメカニズムの解説図。

ただ、長距離の走り込みは原因の一つではあるのですが、それだけではありません。

ランニングを行う際、路面は必ずしも水平ではありません。一見水平に見えるアスファルトの路面も、水はけをよくするために両側に向かって軽い傾斜がついています。ランニング時は、骨盤の平行を保とうと、体は無意識に体重のかかり具合などを調整しています。

そこで腸脛靭帯の柔軟性や股関節周りの筋力不足、クッション性が低下した古いシューズの使用、路面やランニングフォームの乱れなどがあると、さらに腸脛靭帯に負荷がかかり、大腿骨外側上顆との摩擦が激しくなります。ランナー膝は、一つだけではなく、複数の要因が絡み合って発症することがほとんどなのです。

ランナー膝を予防する方法

股関節周りのトレーニングで、骨盤の動きを安定させる

ランナー膝を予防するには、まず骨盤の動きを安定させることです。骨盤の安定を担っている中殿筋を鍛えることが特に大切で、おすすめのトレーニング方法は、床に横向きに寝て、両膝を90度程度曲げ、(かかと)同士を付けたまま上側の膝を貝殻が開くかのようにゆっくりと持ち上げて下ろす「クラムシェル」と呼ばれるトレーニングです。

中殿筋を鍛えるトレーニング「クラムシェル」。横向きに寝て両膝を重ね、貝殻のように上の膝を開く動作のイラスト。

左右各15回から20回ずつ、2~3セットを目安に行いましょう。

腸脛靭帯を引っ張る大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)をほぐす

次に大切なのは、腸脛靭帯の柔軟性を高めることです。腸脛靭帯自体は非常に硬い腱のため、通常行うストレッチなどでほぐすことは難しいのですが、腸脛靭帯につながっている太ももの大腿筋膜張筋という筋肉を緩めることで、腸脛靭帯が突っ張った状態を緩和することができます。

大腿筋膜張筋のストレッチには、フォームローラーを使用した筋膜リリースがおすすめです。太ももの外側、腰骨のすぐ下あたりの少し出っ張った筋肉が大腿筋膜張筋です。ここにフォームローラーが当たるように横向きに寝て、ゴロゴロと転がすように揺さぶったり、じっと圧をかけたりして、ほぐしましょう。

フォームローラーを用いたケア。横向きに寝て太ももの外側(大腿筋膜張筋や腸脛靭帯)をローラーに乗せ、自重でほぐす様子。

注意点は、膝近くの腸脛靭帯には当てないこと。腸脛靭帯にフォームローラーを当てて筋膜リリースを行うと、炎症を悪化させてしまう恐れがあります。

走行距離・速度の見直しや、シューズの交換も重要

ほかにも、ランニング時の走行距離や速度を急に上げないことや、クッション性の低下したシューズを使用しないことも、ランナー膝を予防する上では大切です。

また、ランニングコースもなるべく平らな場所を選び、周回コースの場合は時折逆回りで走って体への負担のバランスを整えることも、ランナー膝の予防に効果的です。

ランナー膝は体からのSOSサインと受け止めよう

マラソン完走に向けたトレーニングをしていると、いくら予防していてもランナー膝になってしまうこともあります。兆候としては、下り坂を走るときや階段を下りるときに特に膝の外側が痛む場合や、膝を曲げ伸ばしする際にきしむような痛みを覚える場合が挙げられます。

このような場合はランニングを中断し、膝の外側をアイシングして安静にし、医療機関を受診することをおすすめします。ランナー膝は、体からのSOSサインです。焦って痛みを我慢しながらランニングを続けることは控え、しっかりと予防とケアを行い、次のマラソンシーズンに備えましょう。

更新:2026.03.09