「歯ぎしり」はボトックス注射で治療できる!?知っておきたい効果と注意点を徹底解剖
メディカルブレイン編集部

日中や睡眠時に、無意識のうちに歯をこすり合わせたり食いしばったりする「歯ぎしり」。慢性化すると頭痛や肩凝り、顎関節症にもつながり、場合によっては歯がすり減ったり、割れたりしてしまうことも。マウスピースの装着が主な治療法でしたが、近年注目を集めているのがボトックス注射による治療です。今回はボトックス注射による歯ぎしり治療の効果や注意点について、解説します。
歯ぎしりについての基礎知識
歯ぎしりは放置していると健康寿命の短縮や歯周病の悪化につながる
歯ぎしりは顎の筋肉(咬筋)が過剰に働くことで起こります。主な原因は日常生活のストレスや歯のかみ合わせの不整合、あるいは浅い睡眠などで、複数の要因が絡み合って発症することもあります。

歯ぎしりを放置して慢性化すると、頭痛や肩凝り、顎関節症につながっていきます。特に顎関節症は「顎関節症治療の指針2025」(一般社団法人日本顎関節学会)などによると現代の日本では4~5人に1人が患者さん(潜在的な患者さんも含む)とされていて、その主な原因の1つである歯ぎしりに悩む人の数も多いことが推測できます。
(関連記事:「顎関節症」)
頭痛や肩凝り、顎関節症を放置していると健康寿命の短縮を招いてしまいます。さらに、強い力で歯をこすり合わせたり食いしばったりすることで歯が割れて、歯周病の原因にもなってしまいます。
歯ぎしりは大きく分けると4タイプ
歯ぎしりは、4つのタイプに大別されます。
-
左右にこすり合わせる「グラインディング」
上下の歯を強くかんだ状態で左右に動かすことで、ギシギシ、ギリギリとこすり合わせるタイプを「グラインディング」といいます。
歯ぎしりの中では最も多く見られるタイプで、歯や顎に大きく負担がかかるため、歯がすり減ったり、歯の根っこの部分が損傷して歯周病の悪化につながったりします。
音が鳴る場合は家族が気づくこともあるのですが、中には音を立てずに「グラインディング」する患者さんもいます。
-
歯を強くかみ締める「クレンチング」
「グラインディング」とは異なり、上下の歯を強くかみ締めるものの左右にこすり合わせることはないタイプが「クレンチング」です。
音を立てることがほとんどないため、家族にも気づかれにくいのが特徴です。
-
歯をカチカチと連続的にかみ合わせる「タッピング」
上下の歯をカチカチと連続してかみ合わせるタイプが「タッピング」です。小刻みに震えるように歯をかみ合わせる患者さんもいれば、リズミカルに歯をかみ合わせる患者さんもいます。
「グラインディング」や「クレンチング」よりも数は少ないものの、ほかのタイプと混ざって起こることがある歯ぎしりです。
-
歯の一部のみを強くこすり合わせる「ナッシング」
「ナッシング」は、歯全体ではなく、一部分のみを強くかみ締めて左右にこすり合わせるタイプです。一部分のみをこすり合わせるため、キシキシときしむような音が鳴ります。
特定の歯のみをこすり合わせるため、特定の歯だけが徐々にすり減っていくのも特徴の1つです。

歯のかみ合わせの調整やマウスピースの着用が主な治療法
歯ぎしりの治療法は、原因となるストレスの解消のほか、マウスピースの着用が主流です。
特にマウスピースは歯ぎしり対策としてよく用いられていて、就寝時の歯ぎしりによる歯へのダメージの軽減を目的とした「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースや、歯のかみ合わせを調整することを目的とした「バイトプレート」が一般的です。
ボトックス注射で、歯ぎしりが治療できる仕組み
ボトックス注射によって咬筋を緩和させて、歯ぎしりを防ぐ
近年注目を集めているボトックス注射による歯ぎしりの治療は、マウスピース着用による歯ぎしり対策とは異なり、咬筋に薬剤を注射し、筋肉を緩和させて歯ぎしりを起こりにくくするというものです。
ボトックス注射とは、ボツリヌス菌が作り出す毒素を分解・精製した成分を注射することで、筋肉の収縮を緩和させる治療法です。食中毒を引き起こすボツリヌス菌の毒素とは異なり精製された成分なので、医療目的で適切な量を適切な部位に注射することに問題はありません。
ボトックス注射による歯ぎしり治療の流れ
ボトックス注射による歯ぎしり治療は、短時間で終わります。まずは歯のかみ合わせや口の中の状態をチェックした後、表面麻酔を行い、次に咬筋の該当箇所にボトックス注射を打っていきます。ボトックス注射の施術時間は、10分程度です。
ボトックス注射は施術3~7日後から効果が見られ、約4~6か月間効果が持続します。ボトックス注射は細い針を使用するため痛みは感じにくく、表面麻酔を行わなくても施術可能な場合もあります。

ボトックス注射による歯ぎしり治療の注意点
場合によっては治療を受けられないこともある
以下のような患者さんは、ボトックス注射による治療を受けることができません。
- 妊娠中、授乳中、あるいは妊娠の可能性がある患者さん
- 重症筋無力症など、神経筋接合部疾患の患者さん
- 以前ボトックス剤に対してアレルギー反応を起こしたことがある患者さん
- 重篤な心疾患、肝疾患、腎疾患の患者さん
- 注射部位に炎症がある患者さん
ダウンタイムはないが、一時的に違和感を覚えることも
ボトックス注射後、ダウンタイムはほとんどなく、その日のうちに日常生活に戻ることができます。ただし、薬剤が拡散することを防ぐためボトックス注入箇所へのマッサージは3日程度控え、また血行が促進され過ぎることを防ぐために施術後3日程度は飲酒や激しい運動、サウナ、長風呂も控える必要があります。
また、施術後2週間程度は違和感を覚える場合もあり、一時的に硬い食べ物がかみづらくなることもあります。
歯ぎしり治療のためのボトックス注射は保険適用外
ボトックス注射による歯ぎしり治療は保険適用外となり、原則自由診療となります。施術にかかる費用は医療機関によって差はあるのですが、目安としては1回当たり15,000円~60,000円程度です。
注意したいのは、ボトックス注射の効果が持続するのは約4~6か月間のため、効果が切れるたびに注射する必要があることです。
ボトックス注射による歯ぎしり治療は、あくまで対症療法であり、根本の原因を取り除くものではありません。ただ、マウスピースなど従来の対策では効果が得られにくい患者さんにとっては、有効な治療法です。歯ぎしりにお悩みでボトックス注射に興味をお持ちの場合は、まずは医療機関に相談することをおすすめします。
更新:2026.05.22
