2026年3月から保険適用。薬に頼らない高血圧の治療法「腎デナベーション」とは?

高血圧は放置していると動脈硬化(どうみゃくこうか)が起こり、さらには脳卒中や心筋梗塞(しんきんこうそく)大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)などにもつながっていく怖い病気です。これまでは、保険適用で受けられる治療は「食事療法」や「運動療法」の指導、降圧剤を使った「薬物療法」が中心でした。ところが2026年3月から、降圧剤を用いない「腎デナベーション」という新しい治療も保険適用で受けられることになりました。今回はこの「腎デナベーション」について、解説します。

そもそも「高血圧」とは、どんな病気?

血圧の値は、心臓が送り出す血液の量と、血液が流れる血管の抵抗で決まる

心臓は、全身に血液を送り出すためにポンプのような役割を担っています。血液が流れていく際に血管の内側を押す力が、血圧です。血液は1分当たり60~70回程度、約4~5リットルの量が血管へと押し出されていて、この量はほぼ一定です。

心臓が収縮して血液が押し出された瞬間、血管に最も強く圧力がかかります。この時の血圧を最高血圧(収縮期血圧)といい、逆に心臓が広がって圧力が最も低くなった時の血圧を最低血圧(拡張期血圧)といいます。血圧は、心臓が送り出す血液の量と、血液が流れる血管の抵抗によって決まります。

血圧の値は、最高血圧と最低血圧が併記されます。例えば最高血圧が115mmHg、最低血圧が80mmHgの場合は、115/85mmHgと表されます。

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高血圧と診断される血圧の値は?

高血圧には、自覚症状はほとんど見られません。飲酒や喫煙、運動などでも血圧は変動するのですが、健康な状態であれば安静にしていれば血圧は下がります。

ところが高血圧が慢性化して常に血管に圧力がかかった状態が続くと、動脈硬化の原因になってしまいます。さらに進行すると、脳卒中や心筋梗塞、大動脈瘤といった重大な病気につながっていきます。

日本高血圧学会が「高血圧治療ガイドライン」で定めている、高血圧の患者さんの降圧目標値は、診察室血圧が130/80mmHg未満、家庭血圧が125/75mmHg未満です。

降圧目標値
診察室血圧 130/80mmHg未満
家庭血圧 125/75mmHg未満

診察室血圧はその名の通り医療機関で測定した血圧の値で、家庭血圧は自宅で測定した血圧の値です。緊張やストレスなども影響するのか、一般的に診察室血圧の方が高く出る傾向にあります。

従来の「食事療法」や「運動療法」、「薬物療法」とは異なる治療法

高血圧の治療は保険治療が基本となっていて、減塩などを行う「食事療法」、有酸素運動などを定期的に実施する「運動療法」の指導、そして降圧剤を用いる「薬物療法」が中心でした。

特に降圧剤は効果が長く続き、さらに副作用も少ない薬が多数開発されているのですが、それでも複数の降圧剤を併用しても効果が少ない患者さんがいます。そんな中、2026年3月から新たに保険適用となったのが、「腎デナベーション(腎交感神経除神経術)」という、これまでとは全く異なる治療法です。

神経を焼き切ることで血圧上昇をブロックする「腎デナベーション」

腎臓の周囲にある交感神経が過剰に働くのが高血圧の原因の一つ

腎臓の周りには、交感神経が張り巡らされています。この交感神経が過剰に働くと脳に信号が伝わり、血圧が上昇します。

高血圧はストレスや肥満、飲酒や喫煙、遺伝的要因といったように複数の要因が絡み合って発症することが多いため、「食事療法」や「運動療法」、「薬物療法」を組み合わせて治療することが基本になります。しかし「腎デナベーション」は、脳に血圧を上昇させる信号が伝わる回路をブロックすることで高血圧を防ぐという、全く異なる治療法なのです。

カテーテルを腎臓内の血管にまで通し、高周波や超音波で神経を焼き切る

「腎デナベーション」では、足の付け根や腕の血管から直径2mm程度のカテーテルを通し、腎臓内の血管まで届かせます。

その後、カテーテルを通して腎臓の血管内から高周波や超音波を照射し、交感神経を焼灼(しょうしゃく)する(焼き切る)ことで、脳に血圧を上昇させる信号が伝わることをブロックします。

腎デナベーションの手順イラスト図

「腎デナベーション」は局所麻酔で行われる手術で、手術に要する時間はおよそ1~2時間程度です。体への負担も少なく、また長期的な血圧上昇の抑制につながることから、新しい高血圧の治療法として期待されています。

「腎デナベーション」を受ける上で注意したい点

本態性(ほんたいせい)高血圧」と「二次性高血圧」の違い

高血圧には、検査をしても原因が特定できない「本態性高血圧」と、ホルモン異常や腎動脈狭窄(きょうさく)などの病気が原因で血圧が上がる「二次性高血圧」の2種類があります。

「二次性高血圧」は、原因となる病気を治療すれば血圧も正常値に戻ります。「腎デナベーション」での治療が必要となるのは、原因が特定できない「本態性高血圧」の場合です。

高血圧の患者さんに多いのは圧倒的に「本態性高血圧」の方で、その割合は約9割とも言われます。

グラフ:本態性高血圧と二次性高血圧の割合を示す円グラフ。本態性高血圧が全体の90%で圧倒的に多い。

3種類以上の降圧剤を使用しても効果がない場合などに保険適用

「本態性高血圧」だからといって、すべての患者さんが「腎デナベーション」を保険適用で受けられるわけではありません。保険適用のためには、主に以下のような条件があります。

  • 「食事療法」や「運動療法」を実施しても、効果が見られない場合
  • 3種類以上の降圧剤を用いても降圧目標値を達成できない場合

また、「腎デナベーション」は体への負担が少ない治療法ですが、一般的に3日~4日の入院が必要になることや、カテーテルを挿入する部位(主に太もも)に血種や動脈瘤(どうみゃくりゅう)ができたり、検査に用いる造影剤に対するアレルギーなどの副作用が生じたりする可能性も少ないながら存在することにも注意が必要です。

「腎デナベーション」はどの医療機関でも受けられるわけではなく、現時点では高度な循環器内科・高血圧専門外来を持つ大学病院などに限られます。もし「腎デナベーション」に興味がある場合は、まずはかかりつけ医に相談するところからスタートしましょう。

更新:2026.05.11