「電車に乗るとおなかが痛くなって、通勤・通学がつらい…」。その原因は、過敏性腸症候群かもしれません
メディカルブレイン編集部

大腸に病気がないにもかかわらず、通勤・通学のために電車に乗ると、毎朝おなかが痛くなるという経験はありませんか?実はその痛み、ストレスだけが原因ではなく、過敏性腸症候群(IBS)という病気が原因かもしれません。今回は、過敏性腸症候群が起こる仕組みやその症状、対策について解説します。
約10%の人がかかっているといわれる過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は4つのタイプに分類される
過敏性腸症候群は、おなかに痛みや不調があり、下痢や便秘が数か月にわたって続くという状態のときに、最も考えられるポピュラーな病気です。過敏性腸症候群には、4つのタイプがあります。
- 急に便意を催し、一日に何度もトイレに駆け込み水のような便を排せつする「下痢型」
- おなかに膨満感や痛みを感じ、便秘が続いて水分のないコロコロとした便を排せつする「便秘型」
- 便秘と下痢を繰り返す「混合型」
- 上記3タイプに分類されない「分類不能型」

過敏性腸症候群の診断基準
『過敏性腸症候群(IBS)ガイド2023』(日本消化器病学会)によると、日本人のおよそ10%の人がこの病気にかかっているといわれるほど、よくある病気です。患者さんは女性に多く、年齢とともに患者さんの数が減っていきます。命に支障がある病気ではありませんが、おなかの痛みや下痢・便秘が続くため、日常生活に影響を及ぼすことも少なくありません。
過敏性腸症候群と診断される基準は、以下の通りです。ほかに大腸の病気にかかっていないことが前提です。
- ここ3か月の間、週に一日以上にわたりお腹の痛みが繰り返し起こる。
- そのうえで、以下①~③の項目のうち、2つ以上に該当する。
- 排便に関連した痛みを感じる。
- 症状とともに排便の回数が増えたり減ったりする。
- 症状とともに便が軟らかくなったり硬くなったりする。
過敏性腸症候群が起こる仕組みと、その原因
大腸の収縮運動と知覚過敏がおなかの痛みを生じさせる
食べたものを小腸で消化・吸収し、大腸で不要なものを便にして排せつするために、腸には食べ物を肛門に向かって運ぶ収縮運動と、腸の変化を感じるための知覚機能が備わっています。
収縮運動や知覚機能は脳によって制御されているのですが、この大腸の収縮運動が激しくなり、痛みを感じやすい知覚過敏状態になるのが、過敏性腸症候群の症状です。
健康な状態なら大腸の収縮運動で痛みを感じることはありませんが、運動が激しくなっているのに加え、知覚過敏の状態であることによって、過敏性腸症候群の患者さんはおなかの痛みを感じやすくなっているのです。
過敏性腸症候群の原因はストレスだけに限らない
通勤・通学時に感じるストレスや不安は過敏性腸症候群の原因の一つです。ストレスや不安は、大腸の収縮運動を活発にし、知覚を敏感にさせます。
しかし、原因はストレスだけとは考えられていません。細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかると、腸に炎症が生じて粘膜が弱くなって腸内環境が変わり、大腸の収縮運動が促進され、知覚も鋭敏になることがあります。また、遺伝的な要因も原因の一つだとされています。
このように、過敏性腸症候群はストレスや不安に加え、細菌やウイルス、遺伝などの要因が重なり合って発症すると考えられていますが、まだ明確な原因は分かっていません。腸の機能異常を起こす細菌やウイルス、遺伝子を見つける研究は、今も盛んに進められています。
過敏性腸症候群の治療と対策
過敏性腸症候群にかかった場合、まず重要なのは生活習慣の改善です。一日3食をバランスよく規則的にとることが大切です。刺激物や高脂肪の食品、アルコールなどは控えましょう。

生活習慣を改善しても症状に変化が見られない場合は、薬による治療を行います。腸の運動を整える薬や便の水分バランスを調整する薬などを主に用います。これらの薬は下痢型であっても便秘型であっても、同じように用いられます。便秘型には便を軟らかくする薬、下痢型には下痢止め薬、おなかの痛みが激しい場合には腸の動きを抑制する抗コリン薬を使用することもあります。
特に下痢型の場合、通勤・通学途中の電車内で突然便意に襲われるかもしれないというストレスを抱えている場合も。そんなときは、市販の水なしでも飲める下痢止め薬をかばんに忍ばせておくと、お守り代わりになります。
おなかの痛みの裏に、重大な病気が隠れていることも
過敏性腸症候群で注意したいのは、原因となるほかの病気がないのにおなかの痛みが続く、という点です。血液検査や尿検査、便潜血検査に加え、必要に応じて下部内視鏡検査も行って調べた結果、大腸に炎症や腫瘍など、痛みや排便異常の原因がないことが確認できたうえで、初めて過敏性腸症候群と診断されます。
そのため、過敏性腸症候群の診断基準と照らし合わせて、医療機関を受診せずに自分で判断することは禁物です。おなかの痛みや下痢・便秘の陰には、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)といった、重大な病気が潜んでいる可能性もあります。
長らく続くおなかの痛みや下痢・便秘に悩まされている場合は、まず医療機関を受診することが重要です。
更新:2026.03.23
