がくかんせつしょう

顎関節症

概要

顎(あご)は複雑な構造をしていて、多くの機能を持っています。食事や会話をするときには、顎の筋肉と関節、神経が連動して動きます。しかし何らかの原因で、ちょうど耳の穴の前にある顎関節(がくかんせつ)や下あごを動かす咬筋(こうきん)に負担がかかると、顎の関節やその周辺に痛みが出たり、顎が動かしにくくなったり、動かしたときに音が鳴ったりします。そのような障害は総称して顎関節症と呼ばれています。

図
図:顎関節と筋肉の構造

原因

長年にわたり、顎関節症の原因は噛み合わせの悪さだと考えられてきましたが、近年の研究で、噛み合わせは原因の一つに過ぎず、実際には顎関節そのものがもともと弱いなどといった構造上の問題、ストレスや不安などによる顎の筋肉の緊張、外傷など多くの要因が絡んでいることが分かってきました。

また、日常生活での習慣や癖なども大きく影響しています。例えば、頬杖(ほほづえ)をつく、歯ぎしりをする、歯を食いしばる、食べ物を片側の歯ばかりで噛む、唇や頬の内側を噛む、うつぶせで寝る、といった習慣や癖は顎関節症を引き起こす原因になるとされています。

さらに、スマートフォンやパソコン、ゲーム機などの長時間に及ぶ操作、猫背などの姿勢も原因の一つであることが分かっています。

症状

顎関節症の主な症状としては、食べ物を噛むとき口の開け閉めをするたびに顎の周辺に痛みを感じる、口が大きく開かなくなる、顎を動かすと顎関節からカクカク、ゴリゴリといった音がする、などです。これらの症状により、硬い食べ物を噛めない、大きなものを食べられない、顎の音が不快であるといったストレスを抱えることになります。

顎関節症が悪化すると、さらに腕や指のしびれ、めまい、片頭痛、首や肩、背中の痛み、腰痛、肩凝りなどの不調が出ることもあります。

顎関節症は、以下の4つに分類されています。

咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
咀嚼筋(そしゃくきん:下顎を動かす筋肉)に障害が起こっている状態。頬やこめかみの筋肉だけに痛みがあるタイプです。
顎関節痛障害(Ⅱ型)
顎関節を包んでいる組織や靭帯(じんたい)に障害が起こっている状態。顎関節だけに痛みがあり、ほかの関節にみられる捻挫と似たタイプです。
顎関節円板障害(Ⅲ型)
顎関節の中にある関節円板(圧力分散のためのクッションの役割をしている組織)が正常な位置からずれてしまっている状態。a.復位性(口を開けると関節円板が正しい位置に戻るタイプ)とb.非復位性(口を開けても関節円板が前方にずれたままで戻らないタイプ)に分けられます。
変形性顎関節症(Ⅳ型)
顎関節に対する強い負担が繰り返されることで起こります。顎関節を構成する骨が変形しているタイプです。

検査・診断

顎関節症と診断されるのは、顎が痛む(顎関節痛、咀嚼筋痛)、口が開かない(開口障害)、顎を動かすと音がする(顎関節雑音)のうち一つ以上の症状があり、同じような症状が出ることのあるほかの病気(関節リウマチや外傷性の顎関節炎など)がないと判断されたときです。

まずは問診で、どのような症状があるか、その症状はいつから起こり、どのように変化したか、顎に負担がかかるような習慣や癖はないかなどを確認します。その後、あごの動きや痛みの検査、頭部のX線検査やCT検査などによって、顎関節やその周辺の筋肉、口腔内などに異常がないか調べます。加えて、MRI検査や顎関節鏡視検査を行って、より詳しく関節や筋肉の状態を調べることもあります。また、痛みには心理的な要因が関連している可能性もあるため、心理テストなどを行う場合もあります。

治療

顎関節症の治療法は、症状に合わせて選択します。関節の痛みに対しては安静を指示し、痛みが強い場合には非ステロイド系消炎鎮痛薬(痛み止め)が処方されます。また、筋肉の痛みに対しては生活習慣を見直すとともに、口を開ける訓練や筋肉をほぐすマッサージなどを行います。場合によって、抗不安薬や抗うつ薬が効果的なこともあります。

就寝中に歯ぎしりや食いしばりのある人にはスプリント(マウスピースのようなもの)を用いて上下の歯の接触を緩和することで、顎の関節を正しい位置に修正していく方法もあります。なかなか改善が見られない場合には、ボツリヌス菌から抽出されるタンパク質成分を注射して筋肉の緊張を取り除くボトックス治療を行うこともあります。

更新:2022.05.16