歯科口腔外科 さらに明るい笑顔になってもらいたい~顎矯正手術で顔のゆがみ・かみ合わせを治療~

中部ろうさい病院

歯科口腔外科

愛知県名古屋市港区港明

顎変形症とは

顎変形症(がくへんけいしょう)は、上あご(上顎(じょうがく))や下あご(下顎(かがく))の位置・かたち・大きさの不調和によって、かみ合わせの異常と顔の変形が現れる疾患です。原因は不明ですが、あごの成長のアンバランスによるものと考えられていて、多くの場合、思春期にあごが急成長するときに症状が明らかになります。

顎変形症は、上顎と下顎の位置によって分類されています(図1)。このような状態では、うまくかめなかったり(不正咬合(ふせいこうごう))、発音に支障が出たり(構音障害(こうおんしょうがい))、あごの関節が痛くなったり(顎関節症(がくかんせつしょう))といった症状が出ます。前歯が出ていたり、「受け口」の方などは、人知れず容貌(ようぼう)に悩んでいることも少なくありません。

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図1 顎変形症の分類(日本口腔外科学会HPより)https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_gaku/

成長期のお子さんなら矯正歯科治療であごの発育をコントロールできる場合もありますが、骨の成長が終了した16歳以降ですと、矯正歯科治療とあごの手術(顎矯正手術)を組み合わせた外科的矯正治療の適応になります。

矯正治療、入院・手術から訓練まで

図1のように、上下顎骨の不調和が大きい場合には、外科的に矯正する顎矯正手術の適応となります。

顎変形症の治療では、矯正歯科医と外科医との協力・連携によって治療計画を立てます。手術の前に半年〜1年半の間、矯正歯科治療を行い、手術によって骨を移動した後にかめる状態になるまで歯を移動します。手術後数日間は安静のため、あごが動かないようにゴムなどで固定しておきます(顎間固定(がくかんこてい))。その間は、口から流動食を摂ってもらいます。

入院期間は7〜14日で、日常生活に支障のない状態で退院してもらいます。退院後も歯の位置の微調整をするために術後矯正歯科治療を行い、口を開ける訓練(開口訓練(かいこうくんれん))を行い、あごの骨が安定するまで、食事のとき以外は上下の矯正装置に自分でゴム(顎間ゴム)をかけておく必要があります。ゴムをかけたままでも、話しをすることはできます。

「顎口腔(がくこうくう)機能診断施設」の届け出を出している施設では、健康保険が適用されます。その場合、入院および手術費用も保険適用になります。また、高額医療費の対象となるため、申請をすれば医療費の一部が返還されます。

あごや顔の機能調和をめざす——顎矯正手術

顎矯正手術は非常に困難とされてきた手術ですが、安全に行うための手術機器の開発、手術手技の改良により標準化され、近年では、国内でも年間3,000例の手術が行われています。

手術は全身麻酔下で行います。下顎は下顎枝矢状分割術(かがくししじょうぶんかつじゅつ)(図2)、上顎はLeFort(ルフォー)Ⅰ型骨切り術(図3)の適応になることが多く、骨片(こっぺん)はチタン製ミニプレートで固定します。口の中から行うので、顔に傷がつくことはありません。十分な痛み止めを使いますので痛みで苦しむようなことはありませんが、術後の腫はれ、口が開かないこと、流動食の摂取などには数日間辛抱が必要です。

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図2 下顎骨形成術による骨片のプレート固定
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図3 上顎骨形成術による骨片のプレート固定

あごの変形が治り、正常なかみ合わせが得られること、それに伴う顔貌の改善が得られる喜びは、長期間の治療や手術の大変さを上回るものと思います。

顎矯正手術の計画にあたって一番大切なのは、患者さんに合った適切な方法(矯正治療と手術との組み合わせなど)を探すことです。当科では、見た目の改善だけではなく、あごや顔面の持つ重要な機能の調和をめざして治療計画を立て、安全で精度の高い手術が行えるよう努力しています。

歯科口腔外科の特徴

歯科口腔外科は地域の医療機関や関連各科と連携して、口腔・顎・顔面ならびにその隣接組織にみられる疾患の治療を行っています。対象となる疾患は、手術や入院、高度な医療機器による検査が必要となる疾患で、外傷・炎症・嚢胞(のうほう)・腫瘍(しゅよう)・先天異常・顎変形症・顎関節症・埋伏歯(まいふくし)・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(へいそくせいすいみんじむこきゅうしょうこうぐん)などです。特にインプラント治療と外科的矯正治療は専門的に行っています。

更新:2022.03.23