ドジャースの佐々木朗希投手、右肩負傷「インピンジメント症候群」とは?

メディカルブレイン編集部

2025年5月、ロサンゼルス・ドジャースに所属する佐々木朗希ささきろうき投手が右肩の「インピンジメント症候群」と診断されたことが報じられ、関係者やファンの間でその回復に向けた動向が注目されています。 「インピンジメント症候群」という言葉に馴染みのない方も多いかもしれませんが、肩に痛みを引き起こす、比較的一般的な障害のひとつです。特に投手や肩を酷使するスポーツ選手に多く見られ、放置すれば痛みの悪化や動きの制限につながることもあります。

インピンジメント症候群とは?

「インピンジメント(Impingement)」は英語で「衝突」や「圧迫」を意味します。肩関節は、上腕骨(腕の骨)と肩甲骨(背中側の骨)で構成され、その隙間には筋肉のけん(筋肉と骨をつなぐ丈夫な組織)や滑液包かつえきほう(関節の動きを滑らかにする袋状の組織)が通っています。

インピンジメント症候群は、肩を動かす際にこれらの組織が骨に押しつぶされたり擦れたりすることで、炎症や痛みが起こる障害です。初期には軽い痛みだけでも、徐々に動かしづらくなったり、肩を上げにくくなったりすることがあります。

なぜ投手に多いのか?

野球の投手は、投球動作によって肩に大きな負荷をかけます。特に「腕を振り上げて加速させ、ボールをリリースする」一連の動作では、肩関節の構造が狭い空間の中で高速に動きます。その際にけん滑液包かつえきほうが圧迫され、炎症を引き起こすことがあるのです。 また、投手は長年にわたり肩を酷使するため、疲労の蓄積が症状の悪化を招きやすくなります。

主な症状と診断

インピンジメント症候群の代表的な症状には以下のようなものがあります。

  • 肩を動かしたときの痛み(特に腕を上げるとき)
  • 夜間痛(寝ているときに肩が痛む)
  • 可動域の制限(肩が思うように動かない)
  • 腕を後ろに回せない・上に上げられない

これらの症状が見られた場合は、整形外科を受診して正確な診断を受けることが重要です。診察では問診や触診のほか、レントゲンやMRI、超音波検査などの画像検査が行われます。特にMRIはけん滑液包かつえきほうの状態を詳細に確認できるため、診断には非常に有効です。

治療法

保存療法(手術を行わない治療)

ほとんどのケースでは、まず保存療法(手術を伴わない治療)から始められます。

  • 安静とアイシング:まずは痛みが強い時期に肩を休め、炎症を抑えます
  • 薬物療法:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの内服や外用薬で痛みを和らげます
  • 理学療法(リハビリ):肩周りの筋力を強化し、柔軟性を高めるトレーニングを行います

また、再発予防のために投球フォームの見直しも行われることがあります。特にプロ選手の場合は、スポーツドクターやトレーナーの指導を受けながら、フォームや筋力バランスを改善することが重要です。

手術療法

保存療法で改善が見られない場合や、腱板けんばん損傷などの合併症がある場合には手術が検討されます。代表的な方法は「肩峰下除圧術けんぽうかじょあつじゅつ」という、狭くなった肩の空間を広げる処置で、内視鏡によって行うことが多く、比較的体への負担が少ないのが特徴です。

日常でも気をつけたい肩のサイン

インピンジメント症候群は、プロの投手に限らず、日常生活でも発症する可能性があります。長時間のデスクワークや重い荷物の持ち運びといった動作でも、肩に負担がかかることがあるため注意が必要です。 日頃から肩まわりのストレッチや軽い筋トレを取り入れておくことで、予防につながります。違和感を覚えたときは無理をせず、早めに休養を取りましょう。 早期に対応すれば、症状の悪化を防げる可能性もあるため、肩の不調は見過ごさず、日々のケアを意識しておきたいところです。

更新:2025.05.22