泌尿器科 体にやさしい小切開手術-ミニマム創内視鏡下泌尿器科手術

中部ろうさい病院

泌尿器科

愛知県名古屋市港区港明

小切開手術は、どんな手術?

小切開手術は、正式には腹腔鏡下(ふくくうきょうか)小切開手術といい、別名「ミニマム創(そう)内視鏡下泌尿器科手術」とも呼ばれています。ミニマム創とは、目的の臓器を摘出するために必要な最小限の創(きず)(傷)のことです。

前立腺がんに対して行う根治的前立腺摘除術(こんちてきぜんりつせんてきじょじゅつ)を例にして図示します。「図1」の左側は、従来の開腹術の切開創(そう)で、「図1」の右側は、小切開手術の切開創です。小切開手術で行った傷跡は、従来の開腹術で行った傷跡に比べて明らかに小さく、パンツに隠れる程度の大きさです。なぜ、このような小さな創(傷)で手術ができるのでしょうか?

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図1 前立腺がんの手術の切開創、従来の開腹術と小切開手術の比較

「図2」を利用して説明します。

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図2 ミニマム創内視鏡下手術の基本操作(右腎に対する手術)

まず、目的の臓器が摘出できるサイズか、もしくはやや大きめの切開を加えます。そして、体の中で臓器の摘出に必要な空間を作成します。この空間を利用して、術者は創(傷)の直下は自分の目で見ながら(直視)、奥が深くて直視できない場所は内視鏡を併用して手術操作を進めます。最終的に、この小さな創(傷)から臓器を摘出し手術を終了します。

小さな創(傷)から手術を行い、体内でもより小さい空間で臓器の摘出を心がけるため、体への侵襲(しんしゅう)(負担)が少なく、体にやさしい手術といえます。

小切開手術の長所と短所は?

小切開手術の長所は創(傷)が小さく、体にやさしいだけではありません。すべての手術操作は内視鏡のモニター画面上で、手術参加者(術者、助手、看護師)の観察下に行われますので、安心して手術を受けてもらえます。

一方、腹腔鏡手術(小切開手術ではありません)は、体の中で手術操作する空間を作るため、炭酸ガスを体内に送り込む操作(気腹(きふく))が必要になります。小切開手術では気腹は行わないため、気腹に伴う合併症が生じることはありません。

また、地球温暖化が話題になっている昨今、炭酸ガスを使用しない小切開手術は環境にやさしい手術ともいえます。さらに、この小切開手術は原則、腹膜を温存して手術(腹腔内に手術操作が及ばない)を行うため、腹腔内操作に伴う腸閉塞(ちょうへいそく)などの合併症はほとんど起こりません。

短所は小さい創から手術を行うため、従来の開腹術に比較して手術時間が長くなる傾向があります。

手術の長所 手術の短所
術後の疼痛が軽減され、入院期間も短く、傷も小さく目立ちにくい低侵襲手術である 狭い空間で行う手術では操作に制限があり、開腹手術と比較して手術時間が長くなる
内視鏡を併用することで手術に参加している手術参加者全員で手術操作を確認でき、拡大視も可能である 手を創内に入れて用手的操作ができないため触診ができない(ただし切開創を延長すれば可能になる
腹腔鏡手術で必要な気腹操作、腹腔内操作は行わないため、付随する合併症は起こりにくい  
手術が難渋した場合、切開創を延長し容易に開腹手術に変更できる  
表1 小切開手術の長所と短所
患者さんのメリット 両者のメリット 医療者側のメリット
術後の疼痛が軽減される 内視鏡を併用するために手術操作を複数の手術参加者(医師、看護師等)が観察可能となる 腹腔鏡手術で使用する使い捨てのトロカーポート等の器具を使用しないので経済的である。小切開手術に必要な器具はほとんどが再利用できる
入院期間が短くなる 内視鏡を創から挿入して拡大視ができる 傷が小さいため予防的抗菌薬の使用量を抑えることができ、経済的である
傷が小さいので目立ちにくい 腹腔鏡手術では気腹に伴い炭酸ガスが必要になるが小切開手術では使用しないため、環境にやさしい手術である。また気腹に伴う合併症も起こり得ない 個々の手術の難易度に応じて切開創の長さを変えることができる
  原則、腹腔内での操作は行わないので術後腸閉塞等の消化管の合併症が起こりにくい  
表2 小切開手術のメリット

どんな病気に小切開手術を行うの?

泌尿器科の領域では、前立腺がん・腎(じん)がん・尿路上皮がん(腎盂(じんう)がん、尿管がん、膀胱がん)、副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)などの病気で行っており、ほぼ、がんに対する手術です。

小切開手術はどこの病院で受けられる?

日本ミニマム創泌尿器科内視鏡外科学会ホームページ内に、令和元年度腹腔鏡下小切開手術施設基準医認証者一覧が掲載されています。当院でも施行可能です。

また、泌尿器科の手術には、腹腔鏡下小切開手術以外にも低侵襲手術として、腹腔鏡手術やロボット支援腹腔鏡下手術もあります。主治医の先生とよく相談してください。

泌尿器科の特徴

当科は皆さんがイメージしているより守備範囲が広く、多様な病気を扱っています。例えば、1)膀胱・腎臓・前立腺などのがん、2)耐え難い痛みを引き起こす尿路結石症、3)尿に菌がつき、引き起こされる急性膀胱炎・腎盂腎炎(じんうじんえん)、4)尿の回数が増えたり、尿漏れを起こす過活動膀胱、5)膀胱にたまった尿が出なくなる男性特有の前立腺肥大症など、さまざまな病気があります。

また、尿路結石症に対して、体外から衝撃破で結石を粉々にする体外衝撃波結石破砕術、遠隔操作が可能になったロボット支援腹腔鏡下手術など、最先端の技術がいち早く導入されるのも泌尿器科の特徴です。

更新:2024.01.25