血行再建を伴う消化器手術

中部ろうさい病院

外科

愛知県名古屋市港区港明

国内の死因の第1位は悪性新生物(がん)

外科は、検査・診断・手術・抗がん剤治療(化学療法)・術後の定期診察・終末期医療・救急診療などを担っています。扱う臓器(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肛門・肝臓・胆道・膵臓(すいぞう)・脾臓(ひぞう)・乳房・副腎(ふくじん)等)や疾患(がん・良性疾患・外傷等)も多岐に及んでいます。

がんの治療は、手術と薬による治療(抗がん剤、分子標的薬、免疫賦活薬(めんえきふかつやく)、遺伝子治療等)および放射線を用いた治療を組み合わせて行います。薬による治療の進歩には目を見張るものがありますが、国内の2019年の死因の第1位は悪性新生物(がん、全死亡者に占める割合は 27.3%)、第2位は心疾患(心筋梗塞(しんきんこうそく)等)、 第3位は老衰、第4位は脳血管疾患(脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血)であり、まだまだがんは国内の死因の最上位のままです(図1)。全死亡者のおよそ3.7人に1人は悪性新生物(がん)で亡くなっています。年次推移をみると、この40年間ずっと悪性新生物(がん)が死因の第1位でした(図2)。

グラフ
図1 主な死因(2019年)(厚生労働省 令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況より
グラフ
図2 主な死因別にみた死亡率(人口10万対)年次推移(厚生労働省 令和元年(2019) 人口動態統計月報年計(概数)の概況より

2010〜2011年の5年生存率(がんと診断されてから5年後に生存が確認できた割合)は全がんで66.4%でした。特に膵臓がんでは9.8%、胆嚢(たんのう)がんでは29.3%と予後不良(*)であり(図3)、完全に治すことは難しい状況です。

*予後:今後の病状についての医学的な見通し

グラフ
図3 2010〜2011年の5年生存率

難治性がんに立ち向かう

当科で治療しているがんは、食道がん・胃がん・大腸がん・肝臓がん・胆道がん・膵がん・乳がんなどです。主に手術と薬による治療を行っています。まだまだ薬による治療で、がんを完全に治すことは難しく、手術でがん病巣をすべて切除することにより、完全に治すことが期待できます。

術前に検査を行い、がんの広がっている部位を把握し、手術方法を決めます。重要な血管ががんに巻き込まれているような場合でも、がんの広がっている部位をすべて切除することが重要なので、主要な血管であっても、がんと共に切除し、必要に応じて血管を再建します。

膵がんの症例を「図4」に示します。CT画像を見ると、膵臓にできたがんが腹腔動脈(ふくくうどうみゃく)、総肝動脈、脾動脈を巻き込んでいます。この患者さんのがんを取り切るためには、膵臓の半分と腹腔動脈、総肝動脈、脾動脈を一緒に切除しなければいけません。腹腔動脈からは胃動脈(胃に血液を送る動脈)が分岐しています。腹腔動脈を切除した場合、胃に流れる血流を維持するために、胃動脈を再建する必要があります。この患者さんは、膵臓の半分と腹腔動脈、総肝動脈、脾動脈を一緒に切除し、病巣部を摘出しました。胃動脈は別の動脈と吻合(ふんごう)(つなぐ)して血流を維持しました。

イラスト
図4 膵臓がん(○印)に腹腔動脈、総肝動脈が巻き込まれているため、合併切除を行う

たとえ、体への傷害が大きな手術であっても、がんを完全に治すために、がんの広がる部位をすべて切除することをめざして手術を行います。危険性の高い手術でも、安全に遂行できるように、術前から栄養管理を行い、綿密な計画を立てて実行します。患者さんが安心して治療を受けられるように、医療スタッフとチームを組んで診療していきたいと考えています。

更新:2024.01.25