呼吸器外科 手術をあきらめていませんか?体に負担の少ない完全胸腔鏡下手術

中部ろうさい病院

呼吸器外科

愛知県名古屋市港区港明

完全胸腔鏡下手術って、どんな手術?

呼吸器外科でこれまで行われていた開胸手術(図1)では、20〜30cmと大きく皮膚を切る上、骨や筋肉も切ることから、体への負担が非常に大きい手術でした。しかし近年は小さな傷から胸腔鏡(きょうくうきょう)と呼ばれるカメラを体内に入れて、胸の中をテレビ画面のようなモニターに映しながら手術をする胸腔鏡下手術が増えています。特に、モニターに映し出される画面だけを見て行う手術を「完全胸腔鏡下手術」と呼び、当科でも積極的に行っています(図2)。

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図1 開胸手術
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図2 当院での手術室配置

完全胸腔鏡下手術は傷が小さいので、術後の痛みも少なく体への負担が少ないです。このため、体力の衰えた方や高齢の患者さんでも手術を受けることが可能です。

また、カメラに映る画像をモニター画面で拡大して見ることができるので、細い血管や小さなリンパ節も非常に見やすく、傷の大きな開胸手術と変わらない高い精度と安全性を確保できる手術法です。

当科では、肺がん(転移性を含む)、縦隔腫瘍(じゅうかくしゅよう)、気胸(ききょう)、膿胸(のうきょう)に対して、完全胸腔鏡下手術を実施しています。

当科の完全胸腔鏡下手術の特徴

当科の完全胸腔鏡下手術では、わきの下に1〜2cm程度の穴を3〜4つ開けて手術を行っています(図3)。腫瘍を取り出すときに、穴のうちの1つを腫瘍と同じ大きさに広げ、取り出し用の袋に腫瘍を含んだ肺を入れた後、体内にがん細胞がこぼれ落ちないよう袋ごと体外へと取り出します。

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図3 胸腔鏡手術

手術の傷が小さく、体への負担も少ないことから術後の回復も非常に早いです。ほとんどの患者さんは手術翌日の朝から食事が可能で、少なくとも手術日の翌日からは歩くこともできます。肺がんの場合では月曜に手術して金曜に退院することも可能です。

このため、80歳を超える高齢の患者さんでも「体力が心配だから」と手術をあきらめることなく、安心して負担の少ない手術ができます。

胸の中を直接見て行う開胸手術とは異なり、完全胸腔鏡下手術では、モニターを見ながら穴から中に入れた手術器具を動かして手術を行うため、技術的に熟練を要します。

当科では、手術前に画像を見て患者さん一人ひとりの手術手順のイメージづくりを行うことで、大きな傷を伴う開胸手術と同じように安全に実施でき、良好な治療成績を上げることができると考えています。

2019年度からは、3cm程度の穴を1か所だけ開けて手術を行う「単孔式手術」も開始しており(図4)、さらなる体への負担軽減が期待されます。

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図4 単孔式手術

また、従来は大きな傷で行われていた特殊な手術(スリーブ手術〈気管支を切除吻合(ふんごう)する気管支形成を伴った肺葉切除(図5)〉など)についても、引き続き積極的に完全胸腔鏡下手術で行っていきます。

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図5 スリーブ切除

患者さんへのメッセージ

医師から手術を勧められたら、多くの患者さんは手術方法や術後の痛みなど、さまざまなことが不安になるのではないでしょうか。当科では、少しでも患者さんの不安が少なくなるように、患者さんごとに資料や絵を作成して分かりやすく説明を行っています。

また、当科で治療を受ける場合、呼吸器内科や放射線科など他科医師や、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどがチームを組んで治療にあたります。このような体制を整えることで、手術だけではなく、患者さんの仕事や生活についての不安にも支援を行うことができます。

患者さんが安心して安全な治療を受けてもらうことが最も大切です。胸部レントゲン検査で肺に影があると言われたり、そのほか、胸痛、息切れや息苦しさなどの胸部の症状がありましたら、気軽に相談してください。

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写真 呼吸器外科スタッフ

呼吸器外科の特徴

大きく切開した創(きず)から胸の中を覗いて手術を行うのではなく、モニターに映る画面のみを見て手術を行う「完全胸腔鏡下手術」を積極的に行っています。

モニター画面では肉眼で見るよりも細い血管やリンパ節を拡大して確認することができます。また、わきの下に1〜2cm程度の穴を3〜4つ開けるのみなので、痛みも少なく回復も早いです。2019年度に当科で行った胸部悪性腫瘍手術のうち93.2%が完全胸腔鏡下手術でした。

更新:2024.01.25