安全な経口摂取(口から食べること)をサポート

中部ろうさい病院

リハビリテーション科

愛知県名古屋市港区港明

摂食嚥下障害とその原因について

摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)とは、食物を認知し口まで運び、口に取り入れ咀嚼(そしゃく)し飲み込み、食道を通過して胃に食べ物が入るまでの過程で、何らかの機能障害をきたすことをいいます。

原因となる疾患は、脳血管疾患(脳梗塞(のうこうそく)、脳出血、くも膜下出血)、神経・筋疾患、口腔咽頭(こうくういんとう)疾患などです。しかし近年、加齢により骨格筋力の低下(サルコペニア)、軽度の感染症や手術の侵襲(しんしゅう)(体への負担)によるストレスが原因で嚥下機能が低下し、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)(食物が口から食道に入らず、誤って気管に入ってしまうことで生じる肺炎)を発症する高齢者が増えています。

誤嚥性肺炎は、主要な死因別死亡数の第6位ですが、80歳以上では死因の第1位となっています。摂食嚥下障害を早期に発見し、適切な対応をすることが誤嚥性肺炎の予防になります。

嚥下チームの役割

当院では、リハビリテーション科医、言語聴覚士、摂食・嚥下障害看護認定看護師、管理栄養士の4職種で嚥下チームを構成しています。嚥下評価依頼は、年間500件前後です。2019年度の依頼を疾患別にすると、呼吸器疾患が一番多く、次いで脳血管障害でした(図1)。

グラフ
図1 2019年度疾患別嚥下評価依頼

リハビリテーション科医に嚥下評価の依頼があると、摂食・嚥下障害看護認定看護師がベッドサイドで簡易評価を行います。その後、実際の食事を使用し、嚥下造影(透視下に造影剤を飲み込む状態を観察する)や嚥下内視鏡(内視鏡で飲み込む状態を直接観察する)で詳細な嚥下状態を評価します。

そして、嚥下チームでカンファランス(検討会)を行い、適切な食事の形態やとろみの濃度、必要な訓練内容を決定します。

2019年度の調査では、入院前に普通食を食べていて肺炎に罹患(りかん)した患者さんの73%が、検査により嚥下機能の低下が認められ、食事の形態を変更する必要があることが分かりました(図2)。

グラフ
図2 2019年度肺炎患者の嚥下造影後の食形態

安全な経口摂取を継続するために

嚥下造影などの結果を基に、言語聴覚士は日々の訓練を実施するとともに、摂食・嚥下障害看護認定看護師と協同し、実際の食事場面を通して適切な介助方法や摂食方法を、患者さんや病棟看護師に指導します。

管理栄養士は、嚥下機能に応じた食事の作り方、宅配サービスの利用などを指導し、自宅でも安全に口から食べられるようにサポートしています。当院の嚥下障害に対する食事は、嚥下調整食と称し(図3)嚥下リハビリテーション学会から発表された嚥下調整食分類2013に準じた内容になっています。また、とろみの濃度(図4)も同様に学会から発表された内容に準じています。

表
図3 中部ろうさい病院嚥下調整食分類表
イラスト
図4 とろみのつけ方

安全な経口摂取を継続するためには、今の嚥下機能を評価すること、嚥下機能に合った食事の形態を提供すること、嚥下機能に応じた食事摂取方法または食事介助することが必要です。適切な食事の形態や食事摂取方法が、誤嚥および窒息防止につながります。むせや飲み込みにくさなどの症状が続く場合は、かかりつけ医または医療機関の受診をお勧めします。

更新:2022.03.23