外科 3次元画像解析システムを用いた消化器手術

中部ろうさい病院

外科

愛知県名古屋市港区港明

3次元画像解析システムとは

現在、医療画像の多くは2次元画像を用いています。通常のCT検査、MRI検査などでは、2次元断面像を作っています(図1)。体の内部構造、臓器の関係性が分かるようになり、診断に大きく寄与しています。

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図1 2次元CT画像

医療機器は大きく進歩し、より鮮明な画像が得られるようになりました。さらに技術が進歩し、3次元画像解析システムを用いて、立体的な3次元画像を作ることができるようになりました。画像解析システムとは、CT検査、MRI検査などの画像データから高精度な3次元画像を再構築し解析するシステムです。

当院では、富士フィルムメディカル社の3次元画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプスビンセント)」を導入して、手術前に手術に関する手術シミュレーションを行っています。また、CT画像のデータから3次元の画像を作って、診断や治療に活用しています(図2)。

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図2 肝腫瘍の3次元解析画像

3次元画像解析システムを用いた画像診断

過去に手術を受けた患者さんが、別の病気となり当院で治療する際に、以前の治療情報がなければ、治療方針をたてるのに難渋することがあります。手術中に、これまでにどのような手術が行われていたか判断せざるを得ません。現在は、手術前に3次元画像解析システムを用いることで、CT検査のデータからこれまでにどのような手術が行われていたかを判断できるようになりました。

35年前に結核性膀胱萎縮(けっかくせいぼうこういしゅく)に対して、小腸を用いた膀胱の容量拡大手術を受けていた患者さんが、血尿を主訴に受診しました。検査の結果、膀胱小腸吻合部(ぼうこうしょうちょうふんごうぶ)や小腸内に複数の腫瘍(しゅよう)(図3-1、2)を認めました。以前の受けた手術に関する情報はなく、膀胱に吻合(*)された小腸の血管と周囲臓器が、どのような関係にあるのか分かりませんでした。手術前にCT検査を行い、3次元画像(図4)によって、どんな関係にあるのかが判明しました。術前に腫瘍のある小腸を切除するためには、どのように手術することができるのかをシミュレーションしました。このように、手術前に以前の手術内容や、現在のお腹(なか)の中の状況を理解し、新たな手術を実施しています。

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図3 小腸と腫瘍の2次元CT画像
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図4 小腸と腫瘍と血管の3次元画像

*吻合:縫ってつなぐこと

3次元画像解析システムを用いた手術シミュレーション

当科で行っている3次元画像解析の1例を提示します。CT検査のデータを用いて、肝臓の血管と腫瘍の関係、肝臓の大きさが理解できる手術シミュレーション画像です。「図5-1」は肝臓内の血管を描出しています。どのような走行をしているかが分かります。「図5-2」は肝臓の切除範囲を識別できるように色分けしています。手術前に肝切除量や残肝量を把握します。「図5-3」は予定肝切除を行った場合のシミュレーション画像です。血管との関係性が分かります。

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図5 肝臓の3次元画像解析と手術シミュレーション

3次元画像解析システムを用いて、診断から手術シミュレーションを行い、手術を安全に実施できるよう努めています。

外科の特徴

当科は、検査・診断・手術・抗がん剤を用いた治療(化学療法)・術後の定期診察・終末期医療・救急診療等を担っています。扱う臓器や疾患も多岐に及んでいます。診療の中心はがん治療と手術です。手術でがんを残さずに切除し、完全に治すことをめざします。体への傷害を低減させる低侵襲手術を心がけ、若年から高齢の患者さんまで安心して手術を受けてもらえるよう日々努力しています。

更新:2024.01.25