産婦人科 切らない治療 マイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA)

中部ろうさい病院

産婦人科

愛知県名古屋市港区港明

過多月経とは

子宮腔(しきゅうくう)の表面は子宮内膜という組織で覆われています。子宮内膜は、卵巣が出すホルモンの濃度が下がると一部が剥(は)がれ落ち出血が始まります。剥がれ落ちた子宮内膜が修復されるまでに7日程度かかりますので、この期間は出血が続きます。これが月経です。

月経出血が正常より多いと貧血が起こり、体調が悪くなります。また、出血があまりにも多いために日常生活が困難になる場合もあります。このような出血が多すぎる状態を過多月経(かたげっけい)といいます。

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図1 子宮の構造

過多月経の治療

過多月経は薬や手術で治療できます。手術には、子宮の摘出や過多月経の原因となる筋腫(きんしゅ)などを取り除く手術、さらに、子宮内膜を壊死(えし)(組織や細胞が死んでしまうこと)させて破壊する子宮内膜焼灼(しきゅうないまくしょうしゃく)があります。子宮内膜焼灼術ではマイクロ波加熱装置を用います(図2)。

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図2 MEA本体

マイクロ波子宮内膜焼灼術の特徴

子宮摘出術を行うと、完全に回復するには1か月以上かかります。しかし、マイクロ波子宮内膜焼灼術は子宮内膜だけを破壊するので体の負担が小さく、2〜3日で日常の活動に復帰できます。電子レンジと同じ周波数の2.45GHzのマイクロ波を利用して行う同法では、子宮内へマイクロ波を照射するサウンディングアプリケーターという管を使います(図3)。

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図3 サウンディングアプリケーター

サウンディングアプリケーターは、筋腫で変形や拡大した子宮腔に同法を行えるよう、細く先端が弯曲(わんきょく)した形状になっています。このため子宮筋腫や腺筋症(せんきんしょう)、内膜ポリープがあっても過多月経を治療できます(図4)。

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図4 サウンディングアプリケーター挿入操作

マイクロ波子宮内膜焼灼術の治療により、月経時の出血量は減少し、全くなくなる場合もあります。90%程度の患者さんで症状の改善を認めています。

マイクロ波子宮内膜焼灼術の手順とリスク

マイクロ波子宮内膜焼灼術は多くの場合、下半身のみを麻痺(まひ)させる腰椎(ようつい)麻酔で行います。マイクロ波を照射する前に、子宮内を子宮鏡で観察して、がんなど疑わしい箇所がないかどうか確かめます。

そして、サウンディングアプリケーターを子宮腔内に挿入し、マイクロ波を照射します。子宮内膜が加熱され壊死することにより、月経時の出血量が減少します。所要時間は5分〜数十分です。子宮筋腫や腺筋症のため、子宮腔が拡大・変形している場合には時間がかかります。マイクロ波照射が終了した時点でもう一度子宮内を観察して、焼灼されていない内膜が残っていないかどうか確認します。

マイクロ波子宮内膜焼灼術のリスク(合併症)として、細菌等の感染、子宮に孔(あな)があく、腸管のやけどなどがあります。

術後の状態と経過

患者さんは治療翌日に退院できます。

治療後は下腹部に月経痛のような痛みを感じることがありますが、鎮痛薬で抑えることができます。翌日までには概ね軽快します。子宮内感染を防ぐために抗生剤を服用してもらいます。

また、少量の血液が混じった水のようなおりものが増加し、2週間くらい続くことが多いです。痛みが鎮痛薬で軽快しない、おりものが臭う、高熱が出るなどの場合には病院に連絡してください。

シャワー浴は退院後より可能です。入浴と夫婦生活は術後2週間経過してからにしてください。前記以外の日常活動については、退院後すぐに行ってもらえます。

治らない場合

マイクロ波子宮内膜焼灼術で症状が軽快しない場合の次善策としては、子宮摘出術を選択することになります。

産婦人科の特徴

当科では全般的な産婦人科診療(妊娠・出産・不妊症・婦人科疾患・女性ヘルスケア等)を担当しています。特に、マイクロ波子宮内膜焼灼術をはじめ、症状・年齢・生活背景などを考慮し、種々の薬物療法や手術療法を組み合わせて、個々の患者さんの要望に沿った治療を進めています。

女性の一生涯を通じて、患者さんに寄り添った診療ができるように日々努めています。

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写真 産婦人科スタッフ

更新:2022.03.23