みんなでつなぐ脳卒中医療~歩いて家にかえろう~

中部ろうさい病院

神経内科

愛知県名古屋市港区港明

超急性期脳梗塞治療の進歩

脳卒中とは、脳の血管が詰まったり破れたりして脳が障害を受け、体の機能や言葉の機能が失われたりする病気です。脳卒中は脳梗塞(のうこうそく)・脳出血・くも膜下出血に分類されますが、なかでも脳梗塞に対する超急性期(*1)治療は目覚ましい進歩を遂げています。

発症4.5時間以内の脳梗塞に有効性が認められている血栓溶解療法(t-PA静注療法)や、カテーテルを用いて血栓を回収する脳血管内治療を行うことで、従来なら重い後遺症で寝たきりになるような患者さんが歩いて退院できる時代になってきています。このような治療の恩恵を得るためには、脳卒中を疑う症状が現れたときには、一刻も早く救急車を呼び受診する必要があります。

当院は、日本脳卒中学会から一次脳卒中センターに認定されており、24時間365日いつでも脳卒中患者さんを受け入れ、t-PA静注療法や血管内治療を含む超急性期診療を行っています。急性期(*2)のリハビリや脳卒中再発予防の指導にも力を入れ、脳卒中診療チームによる超急性期から在宅まで、継ぎ目のない脳卒中医療を提供しています。

*1 超急性期: 厳密な定義はないが、発症後4.5時間以内
*2 急性期:発症4.5時間から2週間程度

脳卒中患者さんの生活再構築をめざして

脳卒中は再発しやすい病気の1つで、再発を繰り返すごとに後遺症が残り、介護が必要な状態や寝たきりの状態になる可能性が高くなります。再発予防には、生活習慣の改善や治療を続けることが大切です。

そこで私たちは、入院した患者さんが再び脳卒中にならないために、再発予防指導に力を入れています。また、指導とともに、「おかしいな」と思ったときに行う簡易検査のFAST(図)を説明し、早期発見・早期受診ができるようにしています。入院患者さんへのFASTの説明だけでなく、一般の方々への脳卒中の啓発活動も行っています。

フローチャートイラスト
図 超急性期脳梗塞治療フローチャート

看護師は、超急性期の治療後から安全に早期離床ができるように、看護の実践について医師やリハビリスタッフと定期的に学習会や演習を行い、自己研さんに努めています。

さらに、医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー(MSW)の多職種が集まって、定期的に情報交換と話し合いを行い、治療や術後ケア、リハビリ、退院調整を進めています。

脳卒中の早期リハビリテーション

脳卒中の発症後に必要なことは、「不動・廃用症候群(発症前のように体を使えないことから、筋力低下、関節拘縮(かんせつこうしゅく)、骨粗しょう症(こつそしょうしょう)、持久力低下、肺うっ血など多岐にわたる病態を引き起こす)を予防し、早期の日常生活動作(ADL)向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとにできるだけ発症後早期から積極的なリハビリを行うこと」1)です。

当院でも、発症後の早期に医師からリハビリ訓練が処方され、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)に指示されます。PTは、主に身体機能の評価から立位、歩行など移動能力の練習を中心に行います。OTは、食事や着替えなどの実践的な動作の練習を行い、退院に向けた環境設定や住宅改修の相談に応じます。STは、嚥下(えんげ)(飲み込み)機能の評価から食事形態を検討し、コミュニケーション機能の障害に対して症状に合わせた訓練を中心に行います。

また、看護師と情報共有し、入院生活の実際の場面で具体的にできる動作を増やし、活動量を増やしていきます。

退院や施設入所まで手厚くサポート

医療ソーシャルワーカー(MSW)は、患者さんと家族に対して、転院調整や在宅退院調整などでかかわることが多くあります。

転院調整を行う際に、多くの病院で脳卒中地域医療連携パス(以下、連携パス)を取り入れています。

連携パスの活用により、中部ろうさい病院から回復期リハビリテーション病院を経て、退院や施設入所に至るまでリハビリ経過の情報共有が可能になり、患者さんへの切れ目のない治療やリハビリの提供につながります。

当院では年に一度、連携している病院を訪問し、過去の相談ケースの検討や各病院の受け入れ体制などを確認しています。MSWは、今後の療養生活を見据えながら、患者さんそれぞれに合ったリハビリ環境に向けてサポートしています。

【参考文献】
1) 脳卒中治療ガイドライン2015・日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会・株式会社協和企画・2015

更新:2022.03.23