のうそっちゅう

脳卒中

概要

脳卒中とは、脳の血管が詰まる、脳の動脈が破れるなどといった脳の血管に障害が起きて発症する病気の総称で、脳血管疾患とも呼ばれます。脳卒中の代表的な疾患には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)があります。何の前触れもなしに、突然起こることが多く、発症後には早急な診断と治療が必要とされています。

脳血管疾患による死者数は、がん、心疾患に続く第3位となっています。患者数や死亡数と死亡率は減少傾向にありますが、再発を繰り返したり、後遺障害が残ったりするため、通常の日常生活を送ることが困難になる比率が高い疾患といえます。

原因

日本における脳卒中は、以前は高血圧などによって血管が破れて出血を起こす脳出血が多く見られました。しかし、塩分過多の食生活の改善や高血圧に対する自己管理が定着した近年は、脳出血が減少傾向にあります。その一方で、食生活が欧米化し、糖尿病脂質異常症などの生活習慣病が増えたことによって、動脈硬化不整脈などが原因の脳梗塞が増加しています。

それぞれの疾患で見ると、脳梗塞の原因は、心臓にできた血栓が血流に乗って脳の動脈に詰まる心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)、脳の表面や首の太い血管が動脈硬化によった詰まるアテローム血栓性脳梗塞、脳組織の深い部分の細い血管が詰まるラクナ梗塞などがあります。加えて、脳への血流が一時的に悪くなり、運動麻痺(まひ)、感覚障害といった症状が現れて、24 時間以内、多くは数分以内にその症状がなくなる一過性脳虚血発作があります。

脳出血の原因は、長期間にわたる高血圧により脳内の細い血管が破裂する高血圧性脳出血があげられ、くも膜下出血は、脳表面の脳血管にできたこぶが破裂して起こります。

図
図:脳卒中の種類

症状

脳卒中の症状は突然起こります。疾患により差はありますが、主な症状は次の通りです。

  • 片方の手足、顔半分の麻痺やしびれ
  • 舌がもつれる、しゃべれなくなる
  • 急にふらふらして歩けなくなる、立てなくなる
  • 片方の目が見えなくなる、物が二重に見える、半分見えなくなる
  • 突然の激しい頭痛、嘔吐(おうと)

このほかにもめまいや痙攣(けいれん)など、1つの症状だけが起こることもあれば、複数の症状が同時に起こることもあります。

脳卒中で脳が損傷を受けると、損傷を受けた領域の働きに障害が残ってしまい、発症前のような日常生活を送ることが困難になってしまうケースが多く見られます。これらの症状が出たときには、早急に医療機関の診察を受けることが大切です。

検査

症状だけで診断することは難しいため、基本的には、まず脳出血の有無を確認するために、頭部CT検査(X線によるコンピュータ断層撮影/脳内を輪切りにした画像で異変している場所や広がりを調べる)が行われます。そして、頭部MRI検査(磁気共鳴断層撮影/脳梗塞の有無や大きさ、発生箇所などを調べる)やMRA検査(磁気共鳴血管撮影:脳の血管を撮影し、くも膜下出血などの原因となるこぶなどの有無を調べる)などで、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの詳しい状態を調べ、診断へとつなげます。また、心臓の状態を評価するために、心エコー検査や心電図検査なども併せて行われます。

画像診断技術の発展に伴い、1980 年代の後半から、健診のメニューに脳の画像検査が加えられ、脳ドック専門の施設が開設され始めました。現在では、頭部MRI や脳血管撮影、マルチスライスCTなどの画像検査で、破裂する前のこぶをはじめ、脳腫瘍、脳動静脈奇形、自覚症状のない脳梗塞といった脳の異変を発見することが可能になっています。

治療

脳卒中は、発症後すぐに医療機関による治療を受けることが大切です。脳梗塞の場合は一刻も早く、詰まった血管の血流を再開させることが必要であり、破れた血管からの出血量が多く、命に関わる場合は脳内を圧迫する血腫(けっしゅ/血のかたまり)を素早く取り除くことが求められます。

脳梗塞に対する治療

30〜40年前は治療が遅れて命を落としたり、重い障害が残るケースが多く見られましたが、現在では、発症から 4 時間半以内に、血栓を溶かす薬剤の点滴投与を開始する「t-PA療法(血栓溶解療法)」によって、高い治療効果が期待できるようになりました。しかし、時間に制約があるためt-PA療法を受けられなかったり、受けても血流を再開できなかったりするケースもあります。

こうした問題点を解決するために登場したのが「血栓回収療法」という血管内治療です。これは、カテーテルを足の付け根の太い血管から血栓で詰まっている箇所まで挿入し、血栓を取り除く治療法です。カテーテルの先端に付けるデバイス(道具)によって、より早く効率的に血栓を取り除くことができるようになりました。血栓回収療法が有効なのは、脳梗塞発症から原則 8 時間以内とされています。

脳出血

脳出血においては、脳組織への圧迫や損傷を減らすために開頭術や内視鏡により、血腫を取り除く手術が行われます。

くも膜下出血

くも膜下出血では、まず再出血を防ぐために脳の血管にできたこぶが破裂することを防ぐための開頭クリッピング術、カテーテルによるコイル塞栓術などが行われます。

更新:2022.08.22

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