関節リウマチはもう、こわくない!~関節エコーで最速診断し、寛解へつなげる~

中部ろうさい病院

リウマチ・膠原病科

愛知県名古屋市港区港明

関節リウマチとは

関節リウマチは、関節に存在する滑膜(かつまく)に炎症が起こり、病気が進行すると関節が破壊されて変形を生じ、日常生活に支障をきたす原因不明の病気です。

成人では約100人に1人が関節リウマチを発症しますので、まれな疾患ではありません。男性より女性の方が多いことが知られていますが、男性でも生じます。

典型的な症状は、数週間〜数か月の間に手指、足趾(そくし)(足の指)、手首などの関節の痛みと腫(は)れが徐々に起こることです。関節に熱感が伴うこともあり、手足だけでなく、肩・肘(ひじ)・膝(ひざ)の関節にも生じることがあります。

進歩した関節リウマチの治療

ここ20年間で治療薬が進歩したことで、「関節が壊れない治療」を提供できる時代になってきており、生物学的製剤やJAK阻害薬という最新薬を使用すれば、多くの患者さんが「寛解(かんかい)(*1)」をめざすことができます。

このような時代に大事なことは、関節が壊れる前に早期診断・早期治療を行うことです。血液検査では異常がなく、手首や手指などの典型的な場所に症状が現れない関節リウマチ患者さんもいます。診断しづらく、見逃されやすい関節リウマチ患者さんを早期に診断する有効な手段として「関節エコー」があります。

*1 寛解:病気の症状がほぼ消失し、コントロールされた状態

リウマチ科医にとっての聴診器「関節エコー」

リウマチ膠原病(こうげんびょう)診療医は、関節痛で受診する患者さんに対して、触診・血液検査・X線写真などで関節リウマチかどうかを判断してきました。しかし、それらで異常がなくても実際には関節に炎症があるため、徐々に関節痛と関節変形が悪化してからようやく、関節リウマチと診断される患者さんもいました。

このことにより、X線写真や触診では関節に炎症があるかどうか、正しく認識できない場合があることが示唆されます。当科では、病気の経過や患者さんの訴えを聞き、診察時に関節エコーを用いて関節の炎症の有無を判断し、関節リウマチなどの関節炎を生じる疾患であるかどうかを判断します(図1)。

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図1 関節エコーにおける関節滑膜炎

内科医にとって聴診器が重要であるように、リウマチ膠原病診療医にとっての聴診器は「関節エコー」です。関節エコーを用いて関節炎の有無を評価することで、関節炎の早期診断・早期治療が可能になります。

関節エコーで最適な診療を心がける

当科は、以下の3つのポイントに代表する「関節エコーを用いたリウマチ治療戦略」で、リウマチ患者さんそれぞれに最適な治療を提供することを心がけています。

①早期診断・鑑別診断

関節リウマチには「ウィンドウ オブ オポチュニティ」と呼ばれる期間が存在します(図2)。発症から約2年間を指し、その期間に関節の破壊が約50%進行します。関節エコーを用いることで早期診断を行い、関節が破壊される前に治療を開始可能です。

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図2 関節リウマチのwindow of opportunity

また、関節エコーを用いることで、関節リウマチと鑑別(*2)すべき疾患の結晶性関節炎・脊椎(せきつい)関節炎・乾癬性(かんせんせい)関節炎などを疑うことができる場合もあります。

*2 鑑別:よく調べて、種類や性質、真偽、良否などを見分けること

②真の「寛解」の判断

関節リウマチ診療における治療目標である「寛解」には複数の指標があります。寛解の指標を達成していても、関節の破壊が進行する患者さんが存在することも分かっています。そういった患者さんを関節エコーで評価すると関節炎が残存していることが多く、該当する患者さんは治療内容を強めることにより、関節の破壊を防止することができます。

③不必要な治療の回避

関節リウマチの患者さんは、リウマチ以外の原因(整形外科的疾患など)で関節が痛くなることもあります。 「関節リウマチの患者さんに起こる痛み=リウマチによる痛み」ではありません。誤った判断で治療内容を強めてしまうと、薬剤の副作用を心配しないといけなくなりますし、痛みの原因を正しく治すことになりません。

関節エコーを用いて関節の評価を行うことで、リウマチによる関節炎が経過中に生じた関節痛の原因であるかどうか、判断が可能になります。それにより不必要な治療を避け、適切な治療にとどめることができます。

更新:2022.03.23