腎臓内科 腎臓が悪くなったときの選択肢-患者さんとともに考え、実践します

中部ろうさい病院

腎臓内科

愛知県名古屋市港区港明

腎臓が悪くなったら週3回の透析しかない?

尿検査結果や腎(じん)機能に異常がある「慢性腎臓病」の方は、20歳以上の8人に1人に当たる1300万人いるとされ、今や国民病の1つといえます。そのうち、腎臓病が進行し「透析」を受けている方は、約34万人もいます。

「透析」といわれても、「透析」なんて全く知らない、あるいは週3回病院に通う「血液透析」をイメージする方が多いのではないでしょうか。外来で患者さんの話を聞いていても、腎臓病が悪くなったら「血液透析」「頻回(ひんかい)の病院通い」というイメージを持っている方が多いように感じます。

ですが、腎臓が悪くなったときの選択肢は週3回の血液透析だけではありません。自宅で行える「在宅血液透析」や、お腹(なか)に細いチューブを入れて自宅で行う「腹膜透析」、腎臓を移植することで透析をしなくてすむ「腎移植」などの選択肢があります。これらをまとめて「腎代替療法」と呼びます。

フローチャート
図1 腎代替療法

腎代替療法——どう選ぶ?どれを選ぶ?

「腎代替療法」のうちわけは、通院の血液透析が約33万人、お腹のチューブを使う腹膜透析が1万人弱、腎移植は1,700人強、自宅で行う血液透析は720人です。人数では血液透析が圧倒的に多く、患者さんのイメージが血液透析に偏っているのも頷けます。

「血液透析が最も向いているからやっている」という方が多くいる一方、「血液透析以外の説明を受けた記憶がない」という患者さんも思いのほか多いといわれています。背景の一部には、「普段の外来で説明の時間が取りづらい」「医療者は経験のない治療について詳しく話をせず、勧めづらく感じる」といったことがあると思われます。どの治療を選ぶかで患者さんの生活は大きく変わりますので、すべての患者さんが可能なすべての治療について話を聞き、相談をして決めるのが理想です。

腎移植

腎移植は、他の腎代替療法に比べ寿命の点で優れており、透析と違って毎日の時間的な負担もありません。親族や家族から腎臓をもらう生体腎移植と、亡くなった方や脳死の方から提供を受ける献腎移植の2種類があります。

可能であれば検討したい治療ですが、現在は移植希望者より腎提供者が少なく、献腎移植の待機期間は10年以上と長くなっています。生体腎移植は、腎臓をあげる側(ドナー)に提供の意思のほかに、年齢制限や高血圧・糖尿病・腎臓病がないなどの条件があります。

腹膜透析

腹膜透析は、自分で毎日の透析作業を行うかわりに通院が少なくて済むのが特長で、日中に時間が取れない勤労者の方や、自分で透析作業が可能な理解力・判断力のある方に向いているといえます。

反対に自分で透析作業ができず、自力での通院が困難な方でも、家族や訪問看護などのサポートのもと、腹膜透析を選ぶことがあります。合併症予防のため、現在では長くても10年程度を目安に血液透析などに切り替えるべきといわれています。

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図2 腹膜透析

血液透析

通院での血液透析は、透析にかかわる作業を医療者が行うため、細かな自己管理が難しい方でも選びやすく、病院で行う安心感もあります。

また、最も幅広く行われている治療であり、血液透析が可能な施設も多いです。在宅血液透析は腹膜透析と同じく、自宅で行う透析です。こちらもある程度、自己管理できることが必要で、サポートできる同居人や透析機械を設置するための工事が必要なことがあります。

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図3 血液透析

当院では、腎臓病教育入院や腎臓病外来を通じて、患者さんが最も自分に適した治療を選べるよう支援しています。入院できない方には、外来で1時間ほどかけて、すべての治療法について説明しています。

また、血液透析や腹膜透析を施行しており、実際の臨床経験に即した話ができます。腎移植や在宅血液透析については、近隣の実施施設に紹介をしています。

腎代替療法は1つではない——ライフプランに応じた柔軟な使い方

透析や腎移植といった腎代替療法は、一度選んだら一生そのままとは限りません。

若い方なら、腎移植を受けて移植腎が弱ってきたら腹膜透析に変更する、というケースもあるでしょう。仕事があるうちは自宅でできる腹膜透析をして、時間にゆとりができたら血液透析を併用したり、血液透析に切り替えるとか、腎移植を受けたいけれど移植腎の提供が得られるまでは、腹膜あるいは血液透析を選択することもできます。

透析も移植もせずに生活できることが第一目標ですが、それでも腎代替療法が必要になってきた患者さんについては、その方の生活やライフプランを理解して、最適な治療法を一緒に考え実践するのが当科の役割と考えています。

【参考文献】
* CKD疫学:平成30年5月腎疾患対策検討会報告書(案) 2018/5/31付け 厚生労働省HPより
*腎代替療法総数 2018年我が国の透析医療の現況、日本移植学会HPより

腎臓内科の特徴

当科は2診体制の外来と40人弱の入院患者さんの治療と並行して、血液透析(80〜100人)と腹膜透析(15〜20人)を担当しています。

腎生検に加え、血液透析のためにシャント手術・血管拡張などの処置もできるだけ院内で施行しています。

リウマチ・膠原病科(こうげんびょうか)と合同で診療していることも大きな特徴で、腎臓病でステロイド剤などを使う際にはリウマチ膠原病診療の経験が大きく役立っています。

更新:2022.03.23