肺がんに対するチームワーク医療

中部ろうさい病院

呼吸器内科 呼吸器外科 リハビリテーション科

愛知県名古屋市港区港明

肺がんの治療について

種類

肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞がんの2つに大きく分類されます。さらに非小細胞肺がんは腺がん、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、大細胞がんなどに分類されます(表1)。日本人では腺がんが最も多く、次が扁平上皮がんの順になっています。

■非小細胞肺がん
■ 腺がん
■ 扁平上皮がん
■ 大細胞がん など
■小細胞肺がん
表1 肺がんの種類(組織型)

病期(進行度)

病期とは、がんの進行の程度を表し、肺がんでは進行順に12段階(0、IA1〜3、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IIIC、IVA、IVB期)に分類します(図1)。

図
図1 肺がんの進行度(病期)

治療方針

非小細胞肺がんでは、一般的に0期からIIIA期の一部までが手術治療の対象となります。それ以外の病期では手術ではなく、薬物療法(抗がん剤などによる薬の治療)や放射線療法を行います(表2)。

病  期 治  療
■ 0 -ⅠA期(腫瘍の大きさ2cm以下の場合) 手術
■ ⅠB期(腫瘍の大きさ2 – 3cmのⅠA期の場合) 手術+薬物療法(術後)
■ Ⅱ期 手術+薬物療法(術後)
■ ⅢA期(切除可能) 手術+薬物療法(術後) 術前治療 (薬物療法± 放射線療法)+手術
■ ⅢA期(切除不能)
ⅢB期
ⅢC期
薬物療法+放射線療法
または薬物療法
または放射線療法
■ ⅣA期
ⅣB期
薬物療法
表2 非小細胞肺がんの病気別の治療方針

小細胞肺がんは短期間で進行しやすいがんという性質から、手術を行う患者さんは少なく、薬物療法や放射線療法が主体となっています(表3)。

病  期 治  療
■ 限局型 手術+薬物療法(術後)
薬物療法+放射線療法
薬物療法
→予防的全脳照射
■ 進展型 薬物療法
表3 小細胞肺がんの病気分類とその治療方針

肺がん治療にかかわる多職種チーム

肺がん治療にかかわる関係者といえば、どんな職種が思い浮かぶでしょうか。呼吸器内科医や呼吸器外科医をはじめとする医師を想像するかもしれませんが、ほかにもたくさんの医療者が治療にかかわっています。

例をあげますと、外来や病棟の看護師(がん化学療法やがん性疼痛(とうつう)、慢性呼吸器疾患などの専門看護師もいます)、呼吸にかかわる筋力の向上などを担うリハビリテーション技師、服用している薬や抗がん剤の調整などを行う薬剤師、栄養や食事の管理を通して患者さんの健康を守る管理栄養士、患者さんの社会復帰や転院先の調整などを行う医療ソーシャルワーカー(MSW)、などです。

肺がん治療の真骨頂〜当院でのチームワーク医療〜

肺がんのチームワーク医療といってもなかなかイメージがわかないと思いますので、具体例をあげて紹介します。

働き盛りの50歳男性で、会社での健康診断において胸部X線写真で異常を指摘された患者さんがいました。当院「呼吸器内科」を受診し、気管支鏡検査などの精密検査を受けました。検査の結果、手術可能な左肺下葉の肺腺がんと診断され(図2)、「呼吸器外科」での診療となりました。

イラスト
図2 肺腺がん具体例

手術前の外来診察では、「呼吸器外科医」や「外来看護師」などが手術に関する詳細な内容について説明を行うとともに、手術後の合併症を減らすため、「リハビリテーション技師」が外来にて術前リハビリテーションを実施し、呼吸にかかわる筋力の向上などを図りました。

入院後は、手術を担当する「呼吸器外科医」、麻酔を担当する「麻酔科医」、病棟を担当する「病棟看護師」、手術室を担当する「手術部看護師」、術後の早期回復を担う「リハビリテーション技師」など、さまざまな部署のスタッフが患者さんにかかわりました。

この患者さんの場合、手術後の病理検査にてリンパ節転移を伴う肺腺がんとの診断に至りましたので、術後の追加治療として点滴による抗がん剤治療を行いました(術後補助化学療法)。点滴による術後補助化学療法は、当院では「呼吸器内科医」が担当し、実際の抗がん剤の調整などは「薬剤師」が担当しました。

抗がん剤により、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)や食欲不振などの副作用を認めることがありますので、専門看護師である「がん化学療法看護師」が副作用の予防や対策について援助を行いました。また、食事が思うようにできないことがありましたので、「管理栄養士」が介入しサポートしました。

患者さんの中にはがんの治療費の支出と同時に、子育てやそれに伴う教育費の捻出など経済的な問題を抱えている方もいます。今回の場合も、患者さんは50歳とまだ若く、働きながらの治療継続が希望でしたので、「医療ソーシャルワーカー(MSW)」が治療と仕事を両立させるための各種支援を行いました。

以上のように、当院の肺がん治療ではさまざまな部門のスタッフがかかわっています。そして、治療だけではなくさまざまな問題を解決するため、関係部署間では常に密な情報共有を行っています。これこそが、肺がん治療の真骨頂である当院が提供する「チームワーク医療」です。

写真
カンファレンスの様子

更新:2024.01.25