透析療法とは

済生会吹田病院

腎臓内科

大阪府吹田市川園町

末期腎不全とは

糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などにより腎臓の機能が低下し末期腎不全と呼ばれる状態になると、嘔気(おうき)や食思不振などの尿毒症状、全身の浮腫(ふしゅ)や息切れをきたすため、腎代替療法により本来の腎臓の機能を補う必要があります。治療には透析療法(血液透析、腹膜透析)、腎臓移植の選択肢がありますが、各療法は相互に移行が可能なものであり、長期的な視野に立ち検討する必要があります。腎臓移植の適応があり患者さんが希望する場合は、大学病院など移植治療が可能な施設へ紹介しています。本稿では当院で行っている透析療法について紹介します。

透析療法とは

日本透析医学会による2014年末時点での統計では、年間の新規透析導入患者数は約3万8千人、慢性透析患者は約32万人とされます。

血液透析

血液透析は、週3回、1回3~5時間をかけて間歇的(かんけつてき)に行われる透析療法です。血管から取り出した血液と血液透析液をダイアライザ(透析器)に収納された透析膜を介して交通させ、尿毒素などの老廃物や貯留した水分を除去し、腎不全によって不足する電解質などを補います。

血液透析では1分間に200~250㎖もの血液を安定して取り出す必要があるため、上肢(じょうし)の動脈と静脈を吻合(ふんごう)する内シャント手術を行い、表在の静脈をシャント血管として発達させます。ほかに人工血管による動静脈グラフト、動脈表在化、長期留置型カテーテルなどの選択肢もあります。

入院をして血液透析を開始し、不均衡症候群などの導入期合併症がないことの確認、透析処方や内服薬の調整を行います。退院後は自宅近隣の透析施設へ紹介します。週3回の通院が必要ですが、自宅への送迎サービスがある施設も多くあります(図1、2)。

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図1 血液透析の仕組み(出典:「腎不全 治療選択とその実際」2017年版、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会)
図
図2 ダイアライザ(透析器)の仕組み

腹膜透析

腹膜透析は、腸管などが存在している腹腔内(ふくくうない)を覆う腹膜を利用する透析療法です。全身麻酔手術で腹腔内に腹膜透析カテーテルと呼ばれるチューブを留置します。そのチューブの先端は点滴のカテーテルのように体表に出た状態で固定されますので、それに腹膜透析液が入ったバッグを自宅で患者さん自身あるいは介護者が接続し、腹腔内に腹膜透析液を貯留します。腹膜を介して血液と腹膜透析液の間で老廃物や水分の移動が行われます。

標準的なCAPDと呼ばれる腹膜透析では、1日に4回バッグを接続して腹膜透析液を注入・排液し、日常生活を送りながら24時間かけて緩徐に透析療法が行われます。APDと呼ばれる腹膜透析では、腹膜透析カテーテルと腹膜透析液のバッグを専用の機械に接続し、夜間就寝中に自動的に透析液を交換して効率の良い透析を行うため、日中の交換が不要となります。

腹膜透析では通院は月1~2回で、日常的な透析療法は自宅や職場で完結できる治療法ですが、腹膜炎などの合併症に注意が必要です。残腎機能が廃絶した状態では継続が難しく、また腹膜透析の継続で腹膜が徐々に劣化するため、個人差はありますが5年程度で血液透析への移行や腎移植を検討する必要があります(図3)。

図
図3 腹膜透析の仕組み(出典:「腎不全 治療選択とその実際」2017年版、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本移植学会、日本臨床腎移植学会)

透析療法を開始した後に、安定した維持透析療法を継続することも大切ですが、末期腎不全に至って透析療法を必要とするまでの慢性腎不全の期間の管理も重要です。当院では、腎臓内科で腎生検検査を含めた腎疾患の診断・治療を行い、かかりつけ医療機関とも連携して慢性腎不全の管理を行っています。また現在は、新規透析導入患者の半数以上が糖尿病性腎症を原疾患としますが、当院の糖尿病内科では糖尿病性腎症の初期の段階から糖尿病治療に加えて、食事療法を含めた透析予防指導を行い、腎不全の進行を遅らせることに努めています。

それでも腎不全が進行した場合は、嘔気や食思不振などの尿毒症状や、強い呼吸困難を伴う心不全などの身体的につらい症状を患者さんが経験することのないよう、適切なタイミングで透析療法を導入することが理想的です。そのためには事前に、保存期腎不全に対する教育入院などの機会に腎代替療法について説明し、患者さんに合った治療法をともに選択し、シャント手術などの透析療法に向けた準備を計画的に行います。医師・看護師・薬剤師・栄養士・ソーシャルワーカーといった各スタッフがチームとして協力し、患者さんが前向きに透析療法に向き合えるよう努力しています。

更新:2024.10.29