がん治療-薬による治療について

済生会吹田病院

呼吸器内科

大阪府吹田市川園町

がんに対する薬物療法とは

がんの種類や進行の度合いにもよりますが、薬物治療は次のような目的で行われます。

  • がんを治癒させるため
  • がんが転移・再発するのを防ぐため
  • がんの成長を遅らせるため
  • 体のほかの部分へと転移しているかもしれないがん細胞を殺すため
  • がんによって起こっている症状を和らげるため

薬物治療は大きく分けて点滴の薬と飲み薬があり、がんの種類や患者さんの状態・希望などに合わせて外来通院や入院での治療を行っています。当院の化学療法センターは2018年1月現在、リクライニングチェア8台、ベッド4台の計12床で運用を行っており、がんの種類を問わず、点滴での薬物治療を行う患者さんにご利用いただいています。点滴の治療だけでも年間3000件以上(延べ件数)の薬物治療を行っており、より安全に、安心して治療を受けていただける環境づくりをめざしています。

化学療法ってどんなもの?

化学療法とは、点滴や飲み薬によりがん細胞を治療するもので、大きく分けると殺細胞性の抗がん剤(以下抗がん剤)と分子標的薬に分けられます。

抗がん剤は、点滴や飲み薬などさまざまな種類があり、がんの種類や状態、個々の患者さんの状態によって1種類もしくは数種類を組み合わせて使用します。最も頻繁(ひんぱん)に現れる副作用は、①吐き気、②脱毛、③白血球減少の3つですが、種類や程度は薬の種類によって異なり、個人差もかなりあります。また、副作用の種類によって現れる時期にも差があります(図)。

図
図 抗がん剤の副作用について

分子標的薬は、がんの増殖にかかわっている特定の分子を標的にして、その働きを阻害する薬です。大きく分けて、がんへ栄養を供給する血管をターゲットにしたもの(血管新生阻害剤)と、がん自体に対するものの2種類があります。

がん自体に対するものはがんの種類によってさまざまですので、ここでは血管新生阻害剤について説明します。がんは自らが成長するために栄養や酸素が必要です。がんは新しい血管を形成することにより、これらの補給を行いますが、正常の血管と比べると不完全です。血管新生阻害剤は、このような血管形成を阻害するとともに、不完全な血管の壁を整え、治療薬がうまくがんへ届くようにすることで、がんの成長を抑制します。

副作用としては高血圧・タンパク尿・出血・傷が治りにくくなるなどがあり、がんの種類や患者さんの状況により、ほかの薬と併用して使われます。

免疫療法ってどんなもの?

免疫療法とは、私たちの体の免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法です。さまざまな治療法が報告されていますが、ここでは、「免疫チェックポイント阻害剤」という、ここ数年で新たに有効性が認められ、多くのがんに対して保険適用となった薬剤について説明します。

私たちの体には異物を排除するための免疫機能があり、がん細胞も本来この攻撃を受けます。しかし、がん細胞はこの働きにブレーキをかけて攻撃を阻止していることが分かってきました。がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にして、がん細胞を攻撃できるようにする薬を「免疫チェックポイント阻害剤」と呼んでいます。

2018年1月現在、悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)、非小細胞肺がん、腎細胞(じんさいぼう)がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部(とうけいぶ)がん、胃がん、メルケル細胞がんへの使用が承認されています。しかし、前記のがんでも患者さんのがんの種類や状態によって使用できないこともあり、詳細については主治医に相談してください。

これまでの化学療法に比べると、副作用は比較的軽いとはいわれています。しかし、免疫そのものの働きを強めるため、自分の体を攻撃する自己免疫反応が起こることがあります。この反応は全身のどこにでも起こる可能性があり、具体的には倦怠感(けんたいかん)・発熱・腹痛・下痢・動悸(どうき)・脱力感など多岐にわたります。出現する症状や強さ・時期についても個人差が大きいため、薬を使用中に体調が悪いと思ったら、診察日を待たずに相談することも大切です。

更新:2024.01.25