胆道・膵疾患の診断と治療

済生会吹田病院

消化器内科

大阪府吹田市川園町

胆膵内視鏡―内視鏡的逆行性胆管膵管造影/ERCP

消化器内科では胆道や膵臓の疾患の診断や治療も行っています。その代表的な検査として、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(たんかんすいかんぞうえい)(ERCP)があります。この検査は専用の内視鏡を用いて、胆管や膵管に直接器具を挿入して診断や検査、治療をします(図1)。

図
図1 ERCP/ファーター乳頭から総胆管・主膵管にアプローチ

まず造影剤を用いてレントゲンで目的の部位の評価を行い、胆管や膵管の狭くなっている箇所(狭窄(きょうさく))があれば細胞を調べる検査(細胞診)、総胆管結石がある場合は採石を行います。さらに胆管炎などドレナージ(*)が必要な場合は、チューブの留置をします。処置の内容によっては長時間を要する場合があり、また終了後に膵炎や穿孔(せんこう)(消化管の壁に穴が開く)、感染症など合併症を起こすこともあるので、原則入院での検査となります。

*ドレナージ/体内に貯留した消化液、膿、血液や浸出液などを体外に排出すること

胆道疾患―黄疸を引き起こす病態

胆道疾患によって引き起こされる症状として特徴的なものに黄疸(おうだん)があります。これは、総胆管結石が胆管で引っかかって取れなくなること(陥頓(かんとん))や(図2)、腫瘍(しゅよう)などで胆管が狭窄し胆汁の流れがうっ滞し、本来消化管に流れる胆汁成分が血液内に漏(も)れることで、皮膚や白目が黄色くなり、また尿が濃く便が白っぽくなります。さらに流れが滞った胆汁が感染すると、腹痛や発熱がおき、その細菌が血中に回ることで敗血症(はいけつしょう)となり重篤化することがあります。この場合、速やかな処置が必要で前述したERCPを行い、感染した胆汁をドレナージするためのチューブ留置を行います。

図
図2 胆道疾患による黄疸/浮遊結石が胆管の出口に嵌頓することで発症

総胆管結石が原因の場合は、状態が落ち着いたところで採石を行います。また悪性疾患が原因の場合、のちに手術による切除が可能なケースではプラスチック製のステントを留置しますが、抗がん剤など手術以外の治療を行う場合は、より強度がある金属製のステントを留置することもあります。

膵疾患―自己消化によって引き起こされる膵炎

膵臓は胃の後ろ(体の中央)の背中側に位置する臓器で、食物を消化する消化酵素を産生し、十二指腸に分泌する外分泌腺と、インスリンなど血糖を調整するホルモンを血中に分泌する内分泌腺からできています。その消化酵素がいわゆる膵液であり、膵炎という疾患はその外分泌腺に炎症が起こった状態で、みぞおちや背中の痛みが起こります。また急性で激しい炎症を起こす急性膵炎と慢性の経過で進行性の慢性膵炎に分類されます。

急性膵炎は胆石による膵管の閉塞(へいそく)やアルコール多飲によって起こります。膵臓内に貯留されたタンパクを分解する酵素が膵臓内で活性化され、膵臓と周囲の臓器が消化されてしまいます。血液検査や画像検査にて重症度を判定し、原則、入院加療を行い絶食や点滴による治療を実施します。原因が胆石の場合、ERCPを行い乳頭切開や結石の除去、胆管・膵管にドレナージチューブを留置することもあります。重症膵炎は致死率が15~20%と高く、専門医の下で集学的治療が必要です。

慢性膵炎は消化酵素の活性化が徐々に起こるので緩徐に進行します。原因としてはアルコール多飲が最も多く、男性では原因の7割を占めます。女性は2割強であり、原因不明の特発性が最多です。症状は急性の場合と同様に腹痛、背部痛ですが、進行すると消化不良となり下痢が起こり、栄養状態の悪化や糖尿病の原因となります。

治療は飲酒が原因の場合は禁酒が不可欠で、脂肪の過剰摂取を避けるなど、生活習慣の改善と投薬による保存的加療が行われます(図3)。しかし進行すると膵管内に石灰化した結石ができたり(膵石)、膵管の狭窄が起こることもあるので、ERCPによる処置(チューブ留置、結石除去など)が必要になり、また外科治療を行う場合もあります。

フローチャート
図3 慢性膵炎診療ガイドラインの治療フローチャート(日本消化器病学会編集:慢性膵炎診療ガイドライン、南江堂、2009より)

更新:2022.03.08