予防医療ー骨粗しょう症とロコモティブシンドローム

済生会吹田病院

整形外科

大阪府吹田市川園町

健康寿命を脅かす骨粗しょう症

2016年の国民生活基礎調査の結果では、要介護の原因疾患の1位は認知症(24.8%)、2位脳血管障害(18.4%)、3位高齢による衰弱(12.1%)、4位骨折・転倒(10.8%)で、骨粗(こつそ)しょう症(しょう)による骨折は健康寿命を脅かす存在になっています。

骨粗しょう症は、骨強度の低下によって骨折のリスクが高くなる骨の障害です。特に更年期に女性ホルモンが減少することと深く関係しており、閉経後の女性に多いとされています。骨強度は骨密度が70%、骨質が30%を反映するとされており、骨強度が弱くなった結果、脊椎(せきつい)(背骨、腰骨)圧迫骨折、大腿骨(だいたいこつ)近位部骨折(よく頸部(けいぶ)骨折といわれます)、橈骨(とうこつ)遠位端骨折(手首の骨折)、上腕骨近位端骨折などの脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折を生じます。脊椎や大腿骨骨折は日常生活動作の低下のみならず、寿命を縮めるというデータも報告されています。

脆弱性骨折に関係するもう1つの原因に「転倒しやすさ」があります。サルコペニアという言葉をご存じでしょうか。サルコペニアとは高齢になり骨格筋の筋量が減少し、筋力もしくは身体機能が低下した状態をいいます。サルコペニアの診断基準は握力低下あるいは歩行速度の低下が指標に用いられ、サルコペニアと転倒しやすさはおおむね同じ意味と理解されています。

一方、日本整形外科学会がロコモティブシンドローム(運動器症候群)という考え方を提案しています。これは骨や関節など運動器の衰え(老化)が原因で歩行や立ち座りなどの日常生活、移動能力が低下をきたした状態を指します。疾患でいうと骨粗しょう症による骨折、サルコペニアはもちろん、関節症や脊椎症などが挙げられます。これらの疾患が進行しすぎると回復できない状態(不可逆的変化)を招いてしまうため、進行予防と手術を含めて的確なタイミングでの対処法が重要です。

骨粗しょう症に対しては、DXA法で腰椎あるいは大腿骨近位部の骨塩量が70%YAM(若年成人平均/20歳から44歳までの平均骨塩量に対する割合)以下の場合には薬物療法が推奨されており、継続的な服薬により脆弱性骨折を予防できます。サルコペニア、関節症、脊椎症などには、有効な薬物療法はありませんが、運動療法により各疾患の進行を予防できる可能性があります。宇宙飛行士は無重力状態の宇宙に滞在した後に骨密度と筋量の減少を生じますが、薬物療法、運動療法により改善することが分かっています。

骨粗しょう症の二次検診施設である当院は、吹田市医師会(一次検診施設に登録した診療所で受診が可能です)と協力して2008年から「骨粗しょう症地域連携パス」を運用し、骨粗しょう症性脆弱性骨折の発生予防を実施し、国際骨粗しょう症財団より金賞を授与されました。女性では50歳、男性では65歳を越えたら、5で割り切れる年に骨粗しょう症検診を受けてください。二次検診ではロコチェック(表)も行っていますので、あわせてご利用ください。

・家の中でつまづいたりすべったりする
・階段を上がるのに手すりが必要である
・15 分くらい続けて歩くことができない
・横断歩道を青信号で渡り切れない
・片足たちで靴下がはけなくなった
・2kg 程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
(1 リットルの牛乳パック2 個程度)
・家のやや重い仕事が困難である
(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
表 ロコチェック
1つでも当てはまればロコモの危険性があるので、整形外科を受診してください

更新:2022.03.28