増加する皮膚がん

済生会吹田病院

形成外科

大阪府吹田市川園町

皮膚がんとは?

皮膚は体表を覆う組織で、面積は約1・6㎡(おおよそ畳1枚分)あり、体の中で最も大きい器官です。この皮膚組織に生じたがんを皮膚がんといいます。もともと日本人には多くないがんでしたが、近年では高齢社会の進展に伴って患者数も増加傾向にあります。

皮膚がんの原因として、さまざまな要因が考えられていますが、最も多いのは「紫外線」の影響です。そのほか、放射線、ウイルス(イボウイルスの一種)感染、ヒ素などの化学物質も関与するといわれています。

主な皮膚がん

①基底細胞がん(図1)

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図1 基底細胞がん:黒褐色で盛り上がり、中心部に潰瘍形成を認めます

黒色から黒褐色で光沢のある隆起したデキモノとして生じることが多いのですが、正常皮膚色に近いこともあります。しばしば中心部や一部が潰瘍状(かいようじょう)となることがあります。幸い転移することはまれですが、組織破壊性が極めて強く、深く進行すると骨まで破壊してしまいます。

治療の第1選択は手術での切除です。

②有棘(ゆうきょく)細胞がん(図2~4)

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図2 ボーエン病:表面は赤くてざらざらしています
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図3 光線(日光)角化症:表面は赤くてざらざらしています
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図4 有棘細胞がん:悪臭を伴い、出血や膿(うみ)を認めます

表面が疣状(いぼじょう)やびらん・潰瘍などを示す皮膚色や淡紅色の腫瘤(しゅりゅう)です。体のどこにでも生じ、大きくなると独特の悪臭を伴ってくることがあります。有棘細胞がんの前がん病変(表皮内がん)として、ボーエン病(図2)や光線(日光)角化症(図3)などがあります。この状態で留まっている限りは転移を生じません。しかし放置しているとがん細胞が深部まで入り込み、有棘細胞がん(図4)となり、やがてリンパの流れに沿って転移することがあります。

治療の第1選択は切除手術です。手術に際しリンパ節まで取ることもあります。病期と症例によっては化学療法や放射線療法を併用します。

③悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)(図5)

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図5 悪性黒色腫:非対称性の病変で、色調にむらがあり、境界も不鮮明です

皮膚の色(メラニン)を作る細胞のがんです。日本人では半数が手のひら、足底、指や爪に生じるのが特徴です。すべてのがんの中でも悪性度は高く、早期に転移します。したがって、極めて早期に発見することが、完治に至る最大の要因ということになります。

治療の第1選択は切除手術です。場合によってはリンパ節を取ります。また術後抗がん薬による追加治療も必要になってきます。以前は有効な治療法がありませんでしたが、進行した根治(こんち)切除不能な悪性黒色腫に対しても、2014年以降、国内で新しい治療薬が承認され、治療の幅が広がっています。

最後に

皮膚がんは、極めて進行した場合を除いて、通常自覚症状はなく、痛みを伴わないことが多いです。最初はほんの小さな病変でも、放置すればどんどん大きくなっていきます。最初はゆっくりでも、だんだんと加速度的に大きくなってくる場合もあります。

いつかは消えるだろうと(希望的観測に)思っても、あるいは通常の膏薬(こうやく)治療を行っても、全く不変、あるいは拡大する場合は、まず「皮膚がん」を疑ってかかる必要があります。たかが皮膚病と思って軽視していると、皮膚がんであった場合は、最後にはほかの臓器のがんと同様、リンパ節や内臓に転移して死に至ります。治療法のある早期に、対処されることをお勧めします。

更新:2022.03.08