肺炎ー診断・治療と予防について

済生会吹田病院

呼吸器病センター

大阪府吹田市川園町

肺炎はわが国の死因第3位、特に高齢者では要注意!

肺炎とは肺の急性感染症のことで、呼吸器系の疾患としては「ありふれた」病気といえます。

抗菌薬(抗生物質)による化学療法が普及している現代では、比較的簡単に治る病気と考えられがちですが、1970年代以降死亡率が上昇し、2011年には脳血管障害を上回って日本人の死因第3位を占めています。もちろんこれには、わが国の人口の高齢化が関係しており、肺炎で亡くなる人の9割以上が高齢者であることはよく知られています。高齢化が進むにつれ、肺炎にかかる人がさらに増えると予想されますが、一方でここ数年は肺炎の死亡率の低下傾向がみられ、2014年に定期接種が始まった高齢者への肺炎球菌ワクチンの効果ではないかともいわれています。

肺炎にはどんな分類があるか

肺炎は原因となる微生物(細菌など)により細菌性肺炎と非定型肺炎に分類されます。非定型肺炎とはβラクタム剤(ペニシリン系など)抗菌薬が効かない肺炎の総称で、マイコプラズマ肺炎・クラミドフィラ肺炎・ウイルス性肺炎などが該当します。またこれとは別に、病院外で発症した肺炎と院内で発症した肺炎とに分ける考え方もあり、患者さんの状態や原因微生物も異なるため、治療薬の選び方にも影響してきます。

院外発症肺炎の患者さんは約7割が65歳以上の高齢者で、年齢に伴い罹患率は上昇します。原因菌としては肺炎球菌やヘモフィルス・モラキセラなどが多く、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は3分の1とされますが6割以上に誤嚥が関与しているという報告もあります。

肺炎ではどのような症状が出るか

発熱、咳(せき)、喀痰(かくたん)などの症状が一般的ですが、胸痛や呼吸困難を伴うこともあります。高齢者や脳血管障害(脳梗塞(のうこうそく)など)の患者さんでは食欲減退・活動性の低下(会話しなくなる、ぼんやりしている等)で発症する場合がありますので、このような症状が数日以上持続する場合は、早めにかかりつけ医を受診しましょう。肺炎の症状の経過はさまざまで、肺炎球菌肺炎のように症状を自覚して1日以内に重篤な状態になる場合もありますが、軽症のマイコプラズマ肺炎などでは1週間以上にわたって症状が持続し、患者さん本人は風邪としか認識していないこともまれではありません。重症肺炎では意識障害を伴う場合もあります。

診断・治療は?

問診で肺炎を疑う場合、注意深い診察(特に聴診)の上、胸部X線(レントゲン)を撮影し肺炎に矛盾しない異常陰影を認めれば診断が確定します。次に血液(尿)検査、可能であれば喀痰検査などを行い、年齢・症状・診察所見を考慮して重症度を判定します。軽症であれば外来で抗菌薬投与、中等症以上で必要と判断されれば入院での治療となります。

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肺炎の予防はどうすればいいか?

ものを飲み下す働きを嚥下機能、口腔(こうくう)から食道へ入るべきものが気管(から肺)に入ってしまうことを誤嚥といいます。誤嚥性肺炎は嚥下機能低下のため、唾液・胃液や逆流した胃液などを口腔内の細菌とともに誤嚥することによって発症しますが、夜間の微量誤嚥は自覚のないことが多いといわれます。歯垢(しこう)や歯肉ポケットには歯周病菌などの細菌が多数存在するため、適切な口腔ケアは誤嚥性肺炎の発症を減らす効果が認められています。歯磨きの徹底、お茶などによるうがいの励行、義歯の手入れなどの口腔ケアに努めましょう。また誤嚥性肺炎の再発予防には、食事の仕方の指導(摂食・嚥下指導といいます)を受けたり、場合によっては誤嚥予防の薬剤を服用したりすることが必要になります。

肺炎球菌は肺炎の重要な原因菌の1つであり、肺炎球菌ワクチンの接種は肺炎発症の予防と重症化予防に一定の効果があると考えられます。また、高齢者ではインフルエンザウイルス感染後に細菌性肺炎を発症することも多いので、インフルエンザワクチンの接種もできれば毎年受けることをお勧めします。

更新:2022.03.10