肝臓がんについて

済生会吹田病院

消化器 ・肝臓病センター

大阪府吹田市川園町

各種肝臓がんの外科治療と成績

肝臓にできるがんには、肝炎ウイルスや飲酒が原因となる肝細胞がんのほかに、大腸がんなどの消化器がんから肝臓に広がった転移性肝がん、そのほか肝内胆管がんがあります。

はじめに肝細胞がんについて説明します。この病気の7割の原因であったC型肝炎は、内服薬でほぼ治るようになり、肝細胞がんになる人は減少してきていますが、B型肝炎が原因の肝細胞がんは今までと同じ頻度(ひんど)でみられます。また、血液中に肝炎ウイルスがみられない非B非C型肝細胞がん(nBnC型)が増えてきています(図1)。

図
図1 肝細胞がん肝切除症例の肝炎別年次推移(2008年4月~2016年)

非B非C型肝細胞がんの中には、多飲酒や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の人、原因が不明の人(その中の半数の人は、B型肝炎に昔かかって自然に治癒したと考えられます)がいます。肝細胞がんの治療にはさまざまな選択肢があります。ここでは、当院の外科で行っている治療について説明します。

肝細胞がん

肝細胞がんの個数・大きさ・部位・肝臓の元気さなどを考慮して、治療法を決定します。単発で大きさ2㎝以下、血管の中にがんが広がっていないステージⅠと、もう少し進んだステージⅡの人に対して、肝切除もしくは外科的ラジオ波焼灼治療(はしょうしゃくちりょう)を行った成績は良好です(図2)。10㎝以上の大きな肝細胞がんは破裂して出血する可能性もあるので、多少のリスクがあっても肝切除をすることがあります。2008年以後、10㎝以上で切除した人は21人で、8人が今も元気にされています。

図
図2 肝細胞がんのステージ別生存率
外科での治療症例(肝切除とラジオ波治療)(2008~2016年)

肝細胞がんの部位によっては腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いて、お腹(なか)に1㎝大の穴を4~5か所あけ、小さな創(きず)で肝臓の切除を行っています。また、広範囲に肝臓を切除するときでも、腹腔鏡で行うケースもあります。肝臓の表面にできた肝細胞がんは、内科でのラジオ波焼灼治療では、安全に根治(こんち)できないことがあります。そのときには、腹腔鏡を用いて安全・確実な焼灼治療を施行しています。お腹の中に癒着のある人は、開腹手術で行っています。

大腸がん肝転移

大腸がん肝転移に対しては、がんが取り切れる症例の場合は安全第一で、限界まで切除をする方針で治療しています。肝転移が大きくて切除が困難な場合には、抗がん剤でがんを小さくする治療を行い、切除できる可能性を見いだします。肝転移個数が4個以下かつ最大径が5㎝以下のステージⅠの人の累積生存率は約75%と良好です(図3)。肝切除を受けた68人のうち、12人が2回以上の肝切除を行っていますが、経過は良好です。肺転移は2~3個までなら、切除を行うことにより、治癒が期待できます。

図
図3 大腸がん肝転移 肝切除術後生存率 ―H因子―(2008~2016年)

肝内胆管がん

肝内胆管がんは、肝臓にできるがんの約5%と比較的少ないがんですが、吹田市はやや多い傾向です。このがんの特徴は、広がりやすくリンパ節に転移しやすく、20%位の人は肝炎ウイルスにかかっていることです。肝切除が唯一の根治治療です。リンパ節に転移をしている人は再発の可能性が高く、再発したときには抗がん剤治療を行っています。その効果は限定的なことが多いですが、期待できると考えています(図4)。

図
図4 肝内胆管がんの予後―治癒度別―(2008~2018年)

当院の肝内胆管がんの手術成績ですが、リンパ節に転移がなく完全に切除できた人の成績は良好です。この成績からも、機会があるごとに超音波検査などによる肝臓の検査を受けることが大切だと考えています(図5)。

図
図5 肝内胆管がんの予後―リンパ節転移の有無―(2008~2018年)

専門性の高い疾患ですが、当院のがん治療は極めて良好な成績を収めています。

更新:2024.01.25