たはつせいこうかしょう(えむえす)
多発性硬化症(MS)
概要
多発性硬化症(MS(エムエス))は、中枢神経系を守る髄鞘(ずいしょう(*1))に異常が起こる病気です。神経は情報を伝える「電気コード」のようなものです。コードの周りには絶縁体の役割をするカバー(髄鞘)がついていますが、このカバーが自分の免疫によって壊され、むき出しになってしまう病気です。その結果、情報の伝わり方が遅れたり、途絶えたりして、全身に様々な症状が現れます。世界的には珍しい病気の部類ですが、日本でも少しずつ患者数が増えてきているとされています。
※1:神経をおおう膜

多発性硬化症(MS)の原因
多発性硬化症の正確な原因はわかっていません。しかし、主に以下のような要因が関わっている可能性が指摘されています。
- 1.自己免疫反応
- 免疫系が、本来は守るべき自分の神経の髄鞘を敵だとみなし、攻撃してしまうといわれています。これによって髄鞘が壊れ、神経への信号伝達がうまくいかなくなるのです。
- 2.遺伝的要因
- 家族の中に同じ病気を持つ人がいる場合、発症リスクが高まるという報告もあります。ただし、親から子へ必ず遺伝するわけではありません。
- 3.環境要因
- ビタミンD不足やウイルス感染症、生活習慣など、さまざまな外的要因が影響している可能性があります。特定の要因だけでなく、複数の要素が重なって発症すると考えられています。
多発性硬化症(MS)の症状
脳や脊髄の異常が出る場所によって、目が見えにくい、手足がしびれる、力が入らないといった、人それぞれ異なる症状が出ます。また、症状が急に出る(再発)と落ち着く(寛解)を繰り返すのが大きな特徴ですが、再発を繰り返すと徐々に後遺症が残りやすくなるため注意が必要です。
- 1.視力の低下や痛み
- 視神経炎が起こり、突然片方の目が見えにくくなったり、目を動かすと痛みが出たりすることがあります。
- 2.しびれや感覚の異常
- 手足や顔などにピリピリしたしびれや感覚の鈍さを感じることがあります。
- 3.筋力の低下やけいれん
- 足や手の筋肉がうまく動かせなくなり、力が入らないことがあります。筋肉のけいれんや突っ張りが起こることもあり、歩行が難しくなる場合もあります。
- 4.疲れやすさ
- 何もしていなくても強い疲労を感じたり、集中力や持久力が落ちたりすることがあります。
- 5.めまいやバランスの乱れ
- 頭がふらついたり、姿勢を保ちづらかったりするケースもあります。
多発性硬化症(MS)の検査・診断
多発性硬化症が疑われる場合、神経内科などを受診します。主な検査や診断の方法は以下のとおりです。
- 1.問診・神経学的検査
- 医師が、いつから症状が出始めたか、どのような症状があるかなどを詳しく聞き取ります。同時に、歩き方や目の動き、手足の感覚などを確認し、神経に異常がないかを調べます。
- 2.MRI検査(磁気共鳴画像)
- 脳や脊髄を撮影して、髄鞘の損傷部分があるかどうかを詳しく調べます。損傷部位の白い影や異常が確認できるかが、診断の大きな手がかりになります。
- 3.髄液検査(ずいえきけんさ)
- 腰のあたりから針を刺して髄液を少量取り、たんぱく質や免疫細胞の状態を調べます。多発性硬化症では、特有のたんぱく質の増加などがみられることがあります。
- 4.血液検査
- 多発性硬化症に似た症状を起こすほかの病気との区別をつけるために、さまざまな項目を調べます。
これらの結果を総合的に判断して、多発性硬化症かどうかを確定します。
多発性硬化症(MS)の治療
治療には、今起きている強い症状を抑える「急性期治療」と、将来の再発や体の障害が進むのを防ぐ「再発予防治療」の2つがあります。現在は再発を強力に抑える薬(再発予防薬)が進化しており、早期から適切な治療を始めることで、以前よりもずっと長く生活の質を保つことができるようになっています。
- 1.免疫調整薬
- 免疫系の過剰な働きを抑え、髄鞘への攻撃を軽くすることを狙います。内服薬(飲み薬)や注射薬など、さまざまな種類があります。
- 2.ステロイド療法
- 再発時に症状を強く抑えるために、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の点滴などを使います。炎症をおさえ、回復を早める効果が期待できます。
- 3.リハビリテーション
- 筋力やバランスを維持し、日常生活の動作を少しでも楽にするために、理学療法士(動作の練習を指導する専門家)らの指導のもとでリハビリを行います。作業療法士(仕事や家事などを行う練習を指導する専門家)による日常動作訓練も重要です。
- 4.症状を和らげる薬
- しびれやけいれん、痛み、めまいなど、特定の症状に合わせて対処する薬を使うこともあります。
多発性硬化症(MS)の合併症
多発性硬化症は再発と寛解を繰り返すうちに、下記のような合併症が生じることがあります。
- 運動障害
- 筋力の低下やふらつきによって、転倒や骨折のリスクが高まります。
- うつ症状や認知機能の低下
- 長期的なストレスや神経のダメージが原因で、気持ちの落ち込みや集中力・記憶力の低下がみられることがあります。
更新:2026.09.26

