白板症
概要
白板症(はくばんしょう)は、口の中の粘膜が白っぽく変化し、はがれにくい斑(まだら)や板状のかたまりができる病気です。歯ぐきや頬の内側、舌の表面などにできることが多く、「こすってもとれない白い膜」が特徴とされています。
白板症そのものは必ずしもがんではありませんが、一部が口腔がんに進行する例も報告されています。そのため、口の中に気になる白い部分があれば早めに歯科口腔外科や耳鼻咽喉科などを受診し、診断を受けることが大切です。
日本国内で白板症がどの程度の人にみられるかについては、正確な統計データが十分にまとまっていません。早期に異常を見つけ、必要な検査を受けることで重症化を防ぐことが可能です。
白板症の原因
白板症のはっきりとした原因は特定されていませんが、口の中が繰り返し刺激を受けることで発症しやすいと考えられています。主な要因は次のとおりです。
- 1.喫煙(きつえん)やたばこ関連製品
- たばこを吸うことで、口の中の粘膜が慢性的に刺激されます。とくに紙巻きたばこのほか、パイプや葉巻、噛みたばこなどでもリスクが高まります。
- 2.不適合な義歯や歯のトラブル
- 入れ歯が合っていない、または歯のかけらや詰め物がとがっていて、長期間にわたり粘膜を刺激することが原因になることがあります。
- 3.口の中の慢性的な炎症
- 長期にわたり歯周病などがあると、粘膜が刺激を受け、白板症が起こりやすくなる可能性があります。
- 4.アルコールの過剰摂取
- 大量に飲酒すると、口の中やのどの粘膜がダメージを受け、白板症を含むさまざまな病変が生じやすいとされています。
- 5.ウイルス感染(特に毛状白板症:もうじょうはくばんしょう)
- 毛状白板症は、EBウイルス(※1)の感染などで起こる特殊な白板症で、とくに免疫機能が低下している方にみられることがあります。
※1:ヘルペスウイルスの一種
白板症の症状
白板症の主な症状は、口の中に現れる「白いまだら模様や板状のかたまり」です。以下のような特徴があります。
- 1.こすってもとれない白い部分
- 食べかすや舌苔(ぜったい)(※2)のように簡単にはがれません。場所によっては灰色や黄色がかった白に見えることもあります。
- 2.厚みを帯びた硬い膜
- 白い部分が厚くなり、触れるとざらざら、または硬く感じる場合があります。
- 3.痛みやしみる感じがない場合が多い
- 初期には痛みを伴わないため、気づきにくいことがあります。一方、進行してただれたり、ひび割れや潰瘍ができたりすると、痛みや出血を感じることがあります。
- 4.毛状白板症の場合
- 舌や口の内部に「毛が生えたような」白い線状の模様が見えます。免疫力が落ちている方にみられやすいのが特徴です。
白板症のほとんどはがんではない良性とされていますが、白い部分の形や大きさが変わったり、赤い部分が混じったりする場合は、がん化のリスクが高いと報告されています。
※2:舌の表面にたまる汚れ

白板症の検査・診断
白板症かどうかを調べるためには、主に以下のような検査・診断方法が行われます。
- 1.視診・触診
- 医師や歯科医師が口の中を目視で観察し、白い膜の大きさや形状、硬さなどを確認します。同時に周囲の歯や歯ぐきの状態もチェックし、刺激の原因がないかを調べます。
- 2.組織検査、生検(せいけん)(※3)
- 白い膜の一部を切り取り、顕微鏡で観察します。細胞の異常がないか、がん細胞が含まれていないかなどを詳しく調べることで、白板症かどうか、またはがん化の可能性があるかを判断します。
- 3.細胞診(さいぼうしん)
- ブラシなどで軽くこすって細胞を採取し、顕微鏡で観察します。組織検査ほど正確ではない場合もありますが、簡易的に異常の有無を調べることができます。
- 4.口腔内環境のチェック
- 合わない義歯や歯の欠け、歯周病など、粘膜を刺激している要因がないかを確認します。
検査の結果、白板症と診断された場合は、その程度やリスクに応じて治療方針が決まります。場合によっては、定期的に通院して経過を観察することもあります。
※3:患部の一部を切り取って、顕微鏡などで調べる検査
白板症の治療
白板症の治療は、原因となる刺激の除去と、がん化のリスクを減らすことが中心となります。
- 1.原因の除去
- 禁煙:喫煙している場合は、まずたばこを減らし、最終的にはやめることがもっとも重要です。
- 義歯や歯の修正:合わない入れ歯を作り直したり、とがった歯や詰め物を削ったりして口の粘膜への刺激を取り除きます。
- 適度な飲酒への切り替え:大量の飲酒を控え、アルコール摂取量を減らすよう心がけます。
- 2.経過観察
- 軽度の白板症で、原因を取り除いたあとに症状が改善する場合は、定期的に口の中をチェックし、変化がないかを見守ることがあります。
- 3.薬物療法
- 毛状白板症など、ウイルス感染が考えられる場合には、抗ウイルス薬が使われることがあります。また、ビタミン類の補給などが補助的に行われる場合もあります。
- 4.外科的切除
- 白い膜が大きい、またはがん化の疑いが高いと判断された場合は、レーザーやメスで切除することがあります。切除した組織は病理検査(びょうりけんさ)(※4)に回され、がん細胞の有無を詳しく調べます。
※4:顕微鏡で細胞を詳細に見る検査
白板症の合併症
白板症自体は良性のことが多いものの、以下のようなリスクが考えられます。
- 口腔がんへの移行
- 白板症の一部が口腔がんへと進行することがあります。赤い斑点が混じる「紅板症(こうばんしょう)」を伴うものは、がん化のリスクが高いといわれます。
- 口腔内の感染症
- 口の中の粘膜が弱っている場合、細菌や真菌(※5)が感染しやすくなることがあります。
- 口腔機能の低下
- 大きく厚みのある白板症が続くと、しみたり痛んだりして、食事や会話に支障が出る場合があります。
※5:カビの仲間
白板症の予防
白板症の予防には、口の中への刺激をできるだけ減らすことが大切です。
- 1.禁煙・節酒(せっしゅ)
- たばこを吸わない、またはやめることがもっとも効果的です。アルコールの過剰摂取も避けましょう。
- 2.口腔ケアと定期検診
- 歯みがきやうがいを丁寧に行い、歯垢(しこう)や歯石をためないようにします。歯科や口腔外科での定期検診により、歯周病やむし歯、義歯の不具合などを早めに発見・対処することが可能です。
- 3.バランスの良い食事
- ビタミンやミネラルを含む野菜や果物を取り入れ、口や全身の健康をサポートします。栄養バランスが整うことで、粘膜の回復力も高まりやすくなります。
- 4.免疫力の維持
- 十分な睡眠や適度な運動で体力を保ち、ウイルスや細菌感染に対する抵抗力をつけることも大切です。
更新:2026.02.04


