前置胎盤
概要
前置胎盤(ぜんちたいばん)とは、赤ちゃんに栄養や酸素を送る胎盤が、子宮の出口付近に位置してしまう状態をいいます。本来、胎盤は子宮の上の方に付着することが多いのですが、何らかの原因で下の方にあると、出産予定日が近づくにつれて出血を起こしやすくなります。

前置胎盤の原因
前置胎盤が起こる明確な原因は、いまだにはっきりわかっていません。しかし、いくつかの要因が関係していると考えられています。たとえば、過去に子宮を手術した経験がある人や、帝王切開での出産をしたことがある人、人工妊娠中絶を経験した人、子宮内膜症などで子宮に傷ができた人は、胎盤が子宮の下の方に付着しやすいと言われています。
また、年齢が高めの妊娠や、たばこを吸う習慣がある場合も、胎盤異常のリスクが上がると指摘されています。これらの要因はあくまで傾向であり、必ずしもすべての人が前置胎盤になるわけではありません。それでも、リスクを下げるために禁煙を心掛けたり、妊娠前から健康管理に努めたりすることが大切です。
前置胎盤の症状
前置胎盤で最も特徴的なのは、痛みをともなわずに出血が起こることです。これは、妊娠中期から後期にかけて増えていき、出産予定日に近づくほど頻度や量が多くなることがあります。出血量が少しだけで済むこともあれば、突然、大量出血が始まることもあるため注意が必要です。
前置胎盤の検査・診断
前置胎盤の検査・診断には、主に超音波検査(※1)(エコー検査)が利用されます。妊娠中期以降の定期健診で子宮内の胎盤の位置を確認できるため、特別な症状がなくても、超音波検査で「前置胎盤の可能性がある」と診断されることがあります。
超音波検査には、腹部から行う方法と、経腟(けいちつ)と呼ばれる膣から近い部分にプローブ(※2)をあてる方法があります。ただし、前置胎盤が疑われる場合は、注意しながら検査を進めます。一般的に妊娠が進むにつれ、胎盤の位置が自然に子宮の上方に移動することもあるため、中期段階で前置胎盤と診断されても、後になって問題が解消する例もあります。
※1:体の内部を画像として映し出す検査
※2:超音波検査(エコー検査)の際に患者に当てる部分
前置胎盤の治療
前置胎盤と診断された場合、治療の基本方針は「母子ともに安全を確保すること」です。妊娠後期に出血が起こると、母体が大量に血を失うリスクがあり、赤ちゃんにも影響を及ぼす可能性があります。そのため、出血の量や妊娠週数、母体の体調などによっては入院して安静を保つことが必要です。
また、多くの場合、出産方法として帝王切開が選択されます。赤ちゃんが産道を通れない位置に胎盤がある場合や、大量出血の危険がある場合は、経膣分娩(けいちつぶんべん)は難しいと判断されるためです。前置胎盤で帝王切開を行うときは、出血対策として輸血準備をしたり、熟練したスタッフがそろった病院で出産したりすることが望ましいとされています。
治療期間中はなるべく安静にし、医師や助産師の指示に従いましょう。無理をして外出したり重い物を持ち上げたりすると、出血が増える恐れがあります。自宅で安静にしている間でも、少しでも出血量が増えたり気分が悪くなったりした場合は、すぐに病院に連絡することが大切です。
前置胎盤の合併症
前置胎盤における主な合併症としては、産前から産後にかけての大量出血が挙げられます。特に出産時に胎盤を剥離(はくり)するとき、子宮の収縮がうまくいかなかったり、子宮の傷が大きくなったりすると、止血が困難になりやすいです。これを「産後出血」といい、最悪の場合は母体がショック状態になるおそれもあります。
更新:2026.02.04

