ちょうしんけいしょうしゅ(ちょうしんけいしゅよう)
聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)
概要
聴神経腫瘍は、耳から脳へ音の情報を伝える聴神経(前庭神経+蝸牛神経)のうち、聴覚やバランスを担当する部分にできる良性の腫瘍です。主に、神経を包むシュワン細胞(※1)が異常増殖することで発生します。進行がゆっくりで、がんのように周囲に広がって転移することはめったにありませんが、大きくなると脳を圧迫し、難聴やめまいなどの症状を引き起こす可能性があります。
※1:神経を覆う細胞

聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)の原因
聴神経腫瘍の主な原因は、前述のとおりシュワン細胞の異常増殖によるものです。具体的には、耳の奥にある前庭神経と蝸牛神経のうち、前庭神経にできることが多いと報告されています。
多くは突発的に生じますが、ごく一部は神経線維腫症2型(※2)(NF2)の関連で起こることがあります。家族性に聴神経腫瘍が発生しやすいとされるNF2の場合は、両側の耳に腫瘍ができることもあるため、若い年齢で両方の耳に難聴が見られる際には疑われることがあります。
※2:遺伝子の異常によって複数の神経腫瘍ができやすくなる病気
聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)の症状
聴神経腫瘍は大きくなる速度がゆっくりなため、初期には症状が目立たないことが多くあります。しかし、腫瘍が成長して神経や脳の一部を圧迫するようになると、以下のような症状が出やすくなります。
- 1.片側の難聴(なんちょう)
- 特に高い音が聞き取りにくくなったり、電話の音声を聞き取りにくくなったりすることが多いです。
- 2.耳鳴り
- キーンという高い音や、ザーッという雑音が聞こえる場合があります。
- 3.めまい・ふらつき
- バランスをつかさどる神経を圧迫するため、立ち上がったときや歩行時にふらふらするなどの症状があらわれることがあります。
- 4.顔のしびれや筋肉の動かしにくさ
- 腫瘍が大きくなると、顔面神経を圧迫するケースもあり、顔の片側が動かしにくくなることがあります。
聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)の合併症
聴神経腫瘍そのもの、または治療に伴う合併症としては、以下のようなものが考えられます。
- 聴力のさらなる低下や聴覚の喪失
- 顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)
- バランス障害(めまい、ふらつきが続く)
聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)の検査・診断
聴神経腫瘍が疑われる場合、主に以下のような検査がおこなわれます。
- 1.聴力検査
- オージオメーター(聴力測定装置)を使って、左右の耳でどの程度の音が聞こえているかを調べます。特に高周波数帯の聴力低下や、言葉の聞き取りテストの結果から、聴神経腫瘍を疑う手がかりが得られます。
- 2.画像検査
- MRIやCTによって、腫瘍の有無や大きさ、脳との位置関係を確認します。とくにMRIは、軟部組織(※3)の描出に優れており、聴神経腫瘍の診断に広く用いられます。
※3:骨以外の組織
聴神経鞘腫(聴神経腫瘍)の治療
聴神経腫瘍の治療は、腫瘍の大きさや患者さんの年齢、症状の進み具合などによって選択されます。主な方法は次のとおりです。
- 1.経過観察
- 腫瘍が非常に小さい場合や、年齢が高く大きな手術のリスクが高い場合などは、定期的なMRI検査などで腫瘍の大きさを確認し、急激に大きくならなければ治療を行わないことがあります。無理に手術をすると、かえってリスクが増す場合もあるため、症状が軽度なうちは慎重に見守ることも選択肢です。
- 2.手術療法
- 腫瘍が比較的大きかったり、症状が進んでいたりする場合は、脳神経外科などの専門医による手術が検討されます。腫瘍を完全に取り除くことを目標としますが、周囲の神経を傷つけるリスクもあるため、術後に聴力の低下や顔面神経麻痺(※4)が生じる可能性があります。
- 3.放射線治療
- ガンマナイフ(※5)などを用いた定位放射線治療も選択肢の一つです。腫瘍を縮小させたり、これ以上大きくならないようにしたりする効果が期待されますが、聴力などの機能を完全に維持できるかどうかは、腫瘍の位置や大きさによります。
※4:顔の動きが悪くなる状態
※5:体の外から腫瘍に放射線を集中させる装置
更新:2026.02.04

