実績と信頼ある不整脈診療
循環器内科

不整脈とは?
心臓の鼓動(脈)の異常を示す医学用語であり、単に不整で不規則な脈というだけでなく、規則正しくても、ゆっくりすぎる脈を「徐脈(じょみゃく)」、速すぎる脈を「頻脈(ひんみゃく)」と呼びます。
徐脈の代表は、洞不全(どうふぜん)症候群と房室(ぼうしつ)ブロックで、ペースメーカ治療が必要となる病気です。一方、頻脈の代表は、心房細動(しんぼうさいどう)や発作性上室頻拍(ひんぱく)、心室(しんしつ)頻拍などで、薬による治療のほか、カテーテル(※1)治療や外科手術、植込み型除細動器が必要になる病気です。診断と治療の方法は患者さんごとに異なり、専門性の高い診療が必要です。

※1 カテーテル:医療用の細い管
不整脈の症状と検査
不整脈に対する自覚症状は、患者さんごとに異なります。一般に、脈が1分間に40回以下になると、徐脈による「めまい」「ふらつき」などの症状を自覚するようになり、徐脈が長期間に及ぶと、「息切れ」や「浮腫(ふしゅ)」または「むくみ」などの心不全の症状も生じます。急に脈が飛ぶ場合には、「動悸(どうき)」や「胸痛(きょうつう)」として自覚し、脈が停止している時間が長くなると「急なめまい」、気を失い転倒する「失神(しっしん)」として自覚することもあります。
一方、脈拍数が突然100回/分以上になり、安静にしていても改善しない場合には、病的な頻脈の可能性があります。頻脈になると動悸や息切れ、ときに胸痛、めまい、失神といった多様な症状を自覚します。不整脈は、症状のみから正確な診断を行うことが難しいため、「不整脈専門医」による診察をお勧めします。
動悸やめまい、心臓の病気を疑われた場合に行う代表的な検査は、12誘導心電図(10秒~3分程度の記録)、長時間心電図(ホルター心電図とも呼ばれ、24時間から数週間記録できる心電計もあります)、心臓超音波検査(心エコーとも呼ばれ、心臓弁膜症(べんまくしょう)や心臓の動きを評価する検査)などです。いずれも痛みを伴わず、患者さんの体の負担も比較的少なく行うことができます。これらの結果を踏まえて、不整脈の詳細な診断と治療方針を決定していきます。
カテーテルアブレーションの適応となるさまざまな不整脈
心臓は4つの部屋に分けられています。上方にあるものが心房で、左と右(左心房、右心房)に分けられ、下方にあるものを心室と呼び、同じく左と右(左心室、右心室)に分けられます。正常な心臓では、一定のリズムの電気信号が心房から心室へ伝わることで、心房と心室が順に規則正しく動いています。そして、①心房を動かすために洞結節(どうけっせつ)、②心室を動かすために房室結節という2つのペースメーカ(電気を作り、脈を作る細胞)が働いています(図2)。

心房で発生する不整脈
心房細動や心房粗動(そどう)、心房頻拍は、いずれも心房で発生する電気の流れの異常によって起こります。特に心房細動は、心房全体の電気信号の乱れによって十分な収縮をせず、けいれんするように細かく震えることで脈が不規則になる病気です。その結果、脳梗塞(のうこうそく)や心不全の原因となるため、薬物治療やカテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術(しんきんしょうしゃくじゅつ)とも呼ばれます、図2)の適応となります。
期外収縮
「ときどき脈が飛ぶ」を自覚している場合には、心房細動のきっかけになる、期外収縮(きがいしゅうしゅく)の可能性もあります。期外収縮は、健常者でも起こるものですが、頻発する場合や自覚症状が強い場合には、治療の適応となります。期外収縮は、心房でも心室でも発生します。原因はさまざまですが、心不全や心臓弁膜症などのほか、高血圧、ホルモン異常など心臓以外の病気が関与している場合があります。
発作性上室頻拍
発作性上室頻拍は、期外収縮のあとに突然脈が速くなり、しばらく続いたあとに突然止まる不整脈のことです。健康診断で心電図異常(WPW症候群など)を指摘される方もいますが、多くの患者さんは、発作がないときの心電図が正常であるため、見逃されることも多いので注意が必要です。
心室で発生する不整脈
心臓のうち心室から生じる不整脈にも多様なものがあります。心室期外収縮は、生まれつき健康な方にも発生しますが、心室期外収縮が連続して出現するものを心室頻拍といい、心筋梗塞や心筋症の患者さんに多く発症します。失神や突然死の原因となることがあり注意が必要です。そのほか、心室頻拍、心室細動を発症する可能性のある病気、Brugada(ブルガダ)症候群、早期再分極症候群、QT延長症候群などは、「不整脈専門医」による治療を必要とします。
ペースメーカ治療の適応となる徐脈性不整脈
心臓は電気の力で動いていますが、自分のペースメーカの機能が悪くなると、洞結節の電池が切れてしまう洞不全症候群や、房室結節の電気が途中で途絶してしまう房室ブロックになる場合があります。房室ブロックになると徐脈となり、めまいや失神を起こす可能性があります。徐脈は高齢者にみられることが多いですが、知らないうちに何か心臓に病気を抱えていて徐脈となる場合もあり、詳しく心臓を調べることが大切です。
徐脈によるめまいや失神があれば、恒久的(人工)ペースメーカ治療が必要となります。従来は、左前胸部にペースメーカ本体(電池)、心房と心室にリード(電気を伝える電線)を2本留置する、リード付きのペースメーカが一般的でした(図3A)。しかし近年では、リードがないリードレスペースメーカが登場し、当院でも植込み手術を行っています(図3B)。

房室ブロックによい適応となり、長い管で足の付け根から右心室までリードレスペースメーカを誘導して留置をするので、創(きず)も小さく植込み翌日には体を動かすことができます。機械を体に植込むことへの抵抗が強い患者さんもいますが、とても安全で、元気に日常生活を送るために非常に有効な治療方法です。
歴史ある不整脈カテーテル治療施設
不整脈、特に心房細動は、患者さんの数が年々増加し、すでに100万人を超える国民病ともいわれています。動悸や息切れなどの症状が出るばかりでなく、脳梗塞や心不全、そして認知症の発病の危険性が3~5倍にも高まることが知られています。介護や支援を受けることなく、やりたいことが自由にできる健康寿命を長く保つためには、これらの病気の元となる心房細動を早めに治療することが大切です。
治療法として、脳梗塞の危険性が高い患者さんは、血液をサラサラにする抗凝固薬を内服します。最近では心房細動自体の治療として、カテーテルアブレーションが注目されています。心房にある諸悪の根源となる不整脈の震源地をカテーテルで焼灼するため、有効性がとても高いという特徴があります。
当院では、カテーテル治療に伴う放射線被ばくを最小限にした治療方法を開発しており、心房細動以外にも、発作性上室頻拍、心室頻拍などさまざまな不整脈の治療に応用しています。不整脈心電学会認定の「不整脈専門医」6人を有する診療体制により、安全・安心な治療の提供に努めています。3泊4日での入院治療が必要となりますが、当院では土曜にもカテーテル治療を実施しているため、ライフスタイルのニーズに合わせた週末を利用しての治療も可能です。
当科の特色と診療実績 循環器内科
当院では、1992年1月より不整脈カテーテル治療を実施しており、日本における黎明期より30年以上にわたるカテーテル治療の歴史があります。
当院には、日本循環器学会認定の循環器専門医が、常時20人以上在籍していますが、不整脈は心臓の病気の中でも専門性が高く、循環器専門医の中でもさらに専門性の高い不整脈治療を行うことができる不整脈心電学会認定の「不整脈専門医」が6人います。そのため、3つの血管撮影室にて、同時に3人の患者さんの不整脈カテーテル治療が可能です(写真)。

2023年まで5年連続で年間500件以上の治療実績があり、これまでに治療した患者さんは2023年時点で8,500人を超えています。不整脈カテーテル診療の豊富な経験と実績を持つ施設として都内でも有数で、不整脈診療の中心的役割を担っています(図4)。

更新:2025.12.12
