まいこぷらずまかんせんしょう

マイコプラズマ感染症

基礎情報

概要

マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマという細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。マイコプラズマは、風邪(かぜ)や気管支炎、肺炎などを引き起こす細菌の一種で、細胞壁を持たない特殊な構造をしています。そのため、通常の抗菌薬では効果が少なく、治療には特殊な抗菌薬が使用されます。
マイコプラズマ感染症は、子どもに多く見られ、感染者の約80%が14歳以下ですが、大人も感染することがあります。
日本では、1980年代までは周期的に流行が報告されており、1984年と1988年に比較的大きな流行がありましたが、1990年代以降は目立った流行はありませんでした。しかし、2000年以降、再び増加傾向にあります。

原因

マイコプラズマ感染症の原因は、マイコプラズマと呼ばれる細菌です。
主な感染経路は、感染している人の咳(せき)やくしゃみのしぶきを吸い込むことによる飛沫(ひまつ)感染と、細菌が付着した手指で鼻や口を触ることによる接触感染です。
感染後の潜伏期間が2週間~3週間と長く、症状が軽い場合が多いため、感染者は感染に気付かずに外出してしまい、ほかの人にうつしてしまうことがあります。このため、マイコプラズマ感染症は「歩く肺炎」と呼ばれることがあります。

症状

症状は比較的軽く、潜伏期間の後、発熱、頭痛、喉(のど)の痛み、全身の倦怠(けんたい)感、痰(たん)を伴わない咳などの一般的な風邪に似た症状が現れます。咳は数日遅れて始まることもあります。
また、熱が下がっても3週間~4週間にわたり頑固な咳が続くことがあります。

鼻水や鼻づまりの症状が少ないことが特徴のひとつで、風邪との違いになります。
多くは感染しても軽症で治りますが、一部の人は肺炎を引き起こし、症状が長引いたり重症化することがあります。肺炎になると、治った後も肺機能が低下する可能性があります。

検査・診断

マイコプラズマ細菌に感染しているかどうかを調べる検査は、①マイコプラズマ抗原迅速検査 ②マイコプラズマ LAMP 法 ③マイコプラズマ抗体価(PA 法)の3つの検査方法があります。

①マイコプラズマ抗原迅速検査
  • 喉のぬぐい液で検査します。喉(咽頭(いんとう))を綿棒でこすります。
  • 検査結果は数分で得られます。
  • 検査タイミングによっては感染していても検出されない可能性があります。
②マイコプラズマLAMP 法
  • 喉のぬぐい液で検査します。
  • 遺伝子検査のため、結果がわかるまでに2日~3日かかります。
  • 咽頭に必ずしも菌が多いわけではないため、検出されない可能性があります。
③マイコプラズマ抗体価(PA 法)
  • 血液で検査します。症状が出始めたころと、その2週間後の2回採血します。
  • 抗体の上昇を確認することで診断します。
  • 検査精度は高いですが、2回目(2週間後)の採血の時点では症状が治まっていることが多く、実用的ではありません。

以上のように、マイコプラズマ感染症の確定診断には、インフルエンザのように迅速で確実な検査方法がありません。そのため、胸部レントゲンやCTの画像検査に加え、咳が長引いているなどの症状を経過観察することにより、総合的に診断することが一般的です。

治療

マイコプラズマ感染症は、多くの場合は自然に症状が治まります。
重症化して肺炎を発症してしまった場合は、一般的にはマクロライド系抗菌薬(抗生物質)を使用して治療します。しかし、最近はマクロライド系の抗菌薬が効かない耐性菌が増えてきています。マクロライド系抗菌薬で2日~3日治療しても効果が見られない場合は、テトラサイクリン系やキノロン系の抗菌薬を使用します。ただし、8 歳未満の子どもの場合は歯が黄色く変色する副作用が出ることがあるため、テトラサイクリン系抗菌薬は使用しません。

更新:2024.03.18