じょういんとうがん

上咽頭がん

基礎情報

概要

上咽頭がん(鼻咽頭がん)は、頭の骨の一部と首の付け根あたりの間にある上咽頭(*1)にできるがんの一種です。欧米では患者数が少ないとされていますが、東南アジアや中国南部などでは比較的多くみられます。

※1:鼻の奥からのどに向かう空間

図
図:上咽頭がん

上咽頭がんの原因

上咽頭がんが発症する原因には、複数の要因が関係していると考えられています。主な要因としては、以下が指摘されています。

1.エプスタイン・バー(EB)ウイルス
エプスタイン・バーウイルス(ヘルペスウイルスの一種)に感染することで、上咽頭がんのリスクが高まるとされています。エプスタイン・バーウイルスウイルスは多くの人が持っているウイルスですが、一部の環境や遺伝要因などが組み合わさることで、がん化につながる場合があると考えられています。
2.食生活
アジアの一部地域などでは、塩漬けにした魚や野菜を日常的に食べる食習慣が上咽頭がんの発症リスクと関連しているとの報告があります。塩分や発がん性物質と関連する可能性が指摘されており、加工食品の過剰摂取には注意が必要とされています。
3.遺伝的要因
家族のなかで上咽頭がんを発症した人がいる場合、発症リスクが高くなる可能性があります。ただし、必ずしも家族に上咽頭がんの人がいれば発症するわけではなく、ほかの生活習慣やウイルス感染などの要因も複雑に影響します。
4.その他のリスク要因
タバコや過度のアルコール摂取は、頭頸部(*2)(とうけいぶ)がん全体のリスクを高めるとされます。また、大気汚染や化学物質への長期間の曝露も、リスクに影響を与える可能性があります。

※2:脳と眼球を除いた首の上の部分

上咽頭がんの症状

上咽頭がんは、初期段階でははっきりした症状が出にくいと言われています。しかし、病状が進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります。

1.首のしこり
リンパ節が腫れることで、首にしこりのような腫れを感じることがあります。痛みがない場合も多く、首の腫れから病気に気づくケースが少なくありません。
2.鼻血や血が混じった唾液
鼻の奥やのど付近に腫瘍ができるため、鼻血が出たり、唾液や痰に血が混じることがあります。
3.耳の症状(難聴や耳鳴りなど)
腫瘍が耳に近い場所や耳につながる管(耳管)を圧迫することで、片方の耳が詰まった感覚や難聴、耳鳴りなどが生じる場合があります。
4.鼻づまりや鼻声
鼻の奥のスペースが腫瘍により狭くなるため、鼻づまりや鼻声が続くことがあります。
5.のどの痛みや違和感
時にのどが痛んだり、何か引っかかるような感じがしたり、飲み込みづらさを感じたりすることがあります。
6.頭痛や顔面痛
腫瘍が大きくなると神経を圧迫し、頭痛や顔面痛が生じる場合があります。

特に注意が必要なのが、片方の耳だけに起こる耳が詰まった感じ(耳閉感)や聞こえにくさです。これは、がんによって耳と鼻をつなぐ管(耳管)が塞がれ、大人では珍しい滲出性(しんしゅつせい)中耳炎を引き起こしているサインである場合があります。

これらの症状はかぜやほかの病気とも重なるため、長期間続く場合や、首に原因不明の腫れを感じた場合は、早めに医師に相談することが大切です。

上咽頭がんの検査・診断

上咽頭がんの疑いがある場合には、耳鼻咽喉科(耳や鼻、喉の専門科)などで以下のような検査が行われます。

1.問診と視診
まずは症状や生活習慣、家族の病気の歴史などを医師が確認します。そのうえで、口や鼻、のどの状態を視覚的に観察する場合があります。
2.ファイバースコピー(内視鏡検査)
細いチューブ状の内視鏡を鼻や口から挿入し、上咽頭の様子を直接観察します。腫瘍などの異常が認められる場合には、その場で組織の一部を採取し、病理検査(*3)を行います。
3.画像検査(CT、MRIなど)
腫瘍の大きさや周囲への広がりを調べるために、CT検査(*4)やMRI検査(*5)が行われます。これにより、ほかの臓器への転移(病巣が広がること)の有無や病気の進行度を調べます。
4.血液検査
全身状態やEBウイルスに対する抗体の有無などを確認するため、血液検査が行われることがあります。血液検査でEBウイルスに対する抗体価を調べることは、診断の補助だけでなく、治療後の再発チェックにおいても非常に重要な指標となります。多くの人が持っているウイルスですが、この数値が異常に高い場合は精密検査が推奨されます。
5.生検
上咽頭の疑わしい部位から採取した組織を病理医が詳しく調べ、がん細胞の有無を確定診断します。最終的ながんの診断にはこの生検が重要です。

※3:顕微鏡で細胞を調べる検査
※4:X線を用いて人体の内部を輪切り状に撮影する検査
※5:強い磁石と電波を用いて体内の断面画像を撮影する検査

上咽頭がんの治療

上咽頭がんの治療は、病気の進行度や患者さんの全身状態などによって異なります。一般的に以下の方法が組み合わされることが多いです。

1.放射線療法
上咽頭がんは放射線が非常によく効くタイプのがんで、放射線療法が治療の中心になることがよくあります。鼻やのどの奥の腫瘍部位に放射線を照射し、がん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりします。治療期間は数週間にわたる場合が多く、副作用として口内炎やのどの痛み、味覚障害などが生じることがあります。しかし、最近では強度変調放射線治療(IMRT)という技術により、がん組織に放射線を集中させつつ、唾液腺などの周囲の正常組織へのダメージを最小限に抑えることが可能になっています。これにより、治療後の口の渇きなどの副作用も大幅に軽減されています。
2.化学療法
放射線療法と組み合わせて行われる場合が多いです。抗がん剤を点滴などで投与し、血液を通じて全身に行き渡らせることで、がん細胞を攻撃します。吐き気や脱毛、骨髄抑制(*6)(こつずいよくせい)などの副作用がみられることがあります。
3.手術
上咽頭という場所は、手術で腫瘍を完全に取り除くのが難しい部位とされています。しかし、病状や腫瘍の大きさによっては、頭頸部外科の専門医が腫瘍切除の手術を検討する場合もあります。近年では内視鏡やロボット支援手術などの進歩もあり、体への負担をできるだけ少なくする方法が研究されています。

治療によっては長期間にわたる通院が必要になる場合もあります。医師や看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど、チームでサポートを受けながら治療を続けることが大切です。

上咽頭がんは、場所の関係で手術が難しいため放射線と化学療法が主体となりますが、早期に発見できれば根治が十分に期待できる病気です。首のしこり(リンパ節転移)で気づくことも多いため、少しでも違和感があれば、耳鼻咽喉科を受診して相談することがとても大切です。

※6:血液細胞が減ること

上咽頭がんの合併症

上咽頭がんが進行した場合や治療過程の副作用によって、以下のような合併症が起こることがあります。

1.神経への影響
腫瘍が大きくなり、頭蓋骨近くの神経を圧迫して、顔面の麻痺(動かしにくくなる)や視力障害などが起こることがあります。
2.耳や鼻の機能障害
腫瘍が耳管や鼻腔(びくう)に影響を及ぼし、耳鳴りや慢性的な鼻づまりなどが続くことがあります。
3.リンパ節への転移
頚部(*7)(けいぶ)リンパ節への転移が進むと、首周辺の腫れやしこりが大きくなり、神経や血管に影響を及ぼす場合があります。

※7:首の部分

上咽頭がんの予防

上咽頭がんは、はっきりとした予防法を確立するのが難しい病気ですが、次のような点に留意するとリスクを減らせる可能性があります。

1.バランスの良い食生活
塩分の取りすぎに注意し、新鮮な野菜や果物、タンパク質をバランスよく食べることがすすめられます。
2.タバコやアルコールを控える
頭頸部がん全体に言えることですが、禁煙や節酒はリスク軽減に役立ちます。
3.定期検診や早期受診
首の腫れなど気になる症状がある場合は放置せず、早めに耳鼻咽喉科などを受診しましょう。特にのどや鼻の奥に不快感や出血が続く場合、早期発見に努めることが大切です。

更新:2026.09.25