けっかんにくしゅ
血管肉腫
基礎情報
概要
血管肉腫は、血液やリンパ液が流れる血管の内側をつくる細胞(内皮細胞/ないひさいぼう)から発生する悪性腫瘍です。とてもまれながんの一種で、皮膚や乳房、肝臓など、さまざまな臓器にできる可能性があります。特に皮膚にできる場合は、紫色や赤色のあざのように見えたり、しこりのように触れたりすることがあります。
血管肉腫の原因
血管肉腫のはっきりとした原因は、いまだ完全には解明されていません。ただし、次のような要因が関係している可能性があります。
- 1.放射線治療
- 以前に別のがんなどで放射線治療を受けた部位に血管肉腫が生じることがあります。特に乳がんの治療後に、放射線を当てた乳房付近にできるケースが報告されています。
- 2.リンパ浮腫
- 手術や放射線治療によりリンパ液の流れが悪くなり、患部がはれ上がる「リンパ浮腫」が続くと、その部分の免疫機能が変化し、稀に血管肉腫が発生することがあります(スチュワート・トレベス症候群)。 たとえば、乳がん手術後に腕がむくむことが続いた結果、腕に血管肉腫ができることがあります。むくんでいる場所に「あざ」のような変色が現れた場合は、早めの受診が重要です。
- 3.化学物質への暴露
- 一部の研究では、塩化ビニルなどの化学物質に長期間さらされる職業環境がある場合、血管肉腫のリスクが高まるという指摘があります。ただし、こうした例は非常にまれです。
- 4.遺伝的要因(仮説段階)
- 特定の遺伝子変異が関与しているのではないかという研究もありますが、まだはっきりと確立したわけではありません。
血管肉腫の症状
血管肉腫は、初期段階では自覚症状が少ない場合があります。しかし、以下のような変化に気づいたら注意が必要です。
- 1.皮膚の異常
- 紫色や赤色、あるいは青黒いあざのような変色
- 皮膚がただれたり、表面が出血しやすくなる
- しこり(固いはれもの)や厚みをもった部分ができる
- 2.むくみやはれ
- リンパ浮腫のある部位に、さらに腫れや痛みが強くなることがあります。
- 3.乳房周辺のしこり・変色
- 放射線治療を受けた乳房や周辺の皮膚に、あざ状の変色やこぶが生じる場合があります。一般的なあざは時間とともに色が薄くなりますが、血管肉腫による変色は、数週間経っても消えない、あるいは徐々に広がったり盛り上がったりするのが特徴です。また、少し触れただけで出血しやすいという性質もあります。
- 4.その他の症状
- 肝臓や心臓など、体内の臓器に血管肉腫ができた場合、胃腸障害や呼吸困難、胸の痛みなどがあらわれることがあります。これらの症状だけでは血管肉腫とは限りませんが、持続的に続く場合は医師の診察を受けましょう。


血管肉腫の検査・診断
血管肉腫は、比較的進行が早い病気であり、早期発見・早期診断がきわめて重要です。主な検査方法には、次のようなものがあります。
- 1.画像検査
- X線撮影(*1)(レントゲン):骨や肺などの状態を確認
- CT検査(*2)(コンピューター断層撮影):腫瘍の位置や大きさの詳細を調べる
- MRI検査(*3)(磁気共鳴画像法):軟部組織(筋肉や脂肪など)の異常をより正確に把握
- 超音波検査(*4)(エコー):体内の様子をリアルタイムで観察
- 2.生検
- 疑わしい部位の組織や細胞を一部取り出して、顕微鏡で詳しく調べます。生検の結果が血管肉腫かどうかを確定するための最も重要な検査です。
※1:X線を使って体内の様子を画像化して、病気の有無や形を確認する検査
※2:X線を用いて身体の断面像を撮影する検査
※3:強力な磁石と電波を使って体の断面を画像化する検査
※4:超音波プローブ(探触子)を体に当て、臓器からの反射波を画像化する検査
血管肉腫の治療
主な治療法は以下のとおりです。
- 1.手術
- 病変を取り除くことが基本となります。手術後の再発を防ぐために、周囲の正常組織を含めて切除することが多いです。ただし、部位によっては大きく切除するのが難しいケースもあります。
- 2.放射線治療
- 手術と組み合わせたり、手術が難しい場合に単独で行われたりします。がん細胞に放射線を当てることで、がんを小さくしたり増殖を抑えたりします。
- 3.化学療法(抗がん剤治療)
- 血管肉腫が広がっている場合や、手術前に腫瘍を小さくする目的で行うことがあります。多くの種類の抗がん剤がありますが、血管肉腫に対して有効な薬剤は限られており、症例によって組み合わせを検討します。。
- 4.標的療法・免疫療法
- 一部の遺伝子変異を標的とした薬剤や、免疫の働きを活性化してがん細胞を攻撃する治療法が研究されています。ただし、まだ国内で保険適用されていない治療や、臨床試験段階のものもあります。
血管肉腫の治療は、病変の大きさや部位、患者さんの体力などを考慮して決定されますが、血管肉腫は進行が速いため、外科手術、放射線治療、化学療法を組み合わせた強力な治療が必要です。非常に稀な病気であるため、希少がんセンターなどの治療経験が豊富な専門病院で、各診療科が連携して治療にあたることが推奨されます。
更新:2026.09.25
