基礎情報

概要

下垂体腺腫は、脳のほぼ中央にある下垂体(ホルモンの司令塔)の細胞が増え、こぶ状にふくらんだものです。ほとんどが良性で、がん化はまれですが、腫瘍が大きくなると周囲を圧迫して視野が欠けたり、頭が痛くなったりします。また、下垂体がつくるホルモンの量が多くなり過ぎたり、逆に足りなくなったりして、体調に影響が出ることもあります。

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図:下垂体腺腫

下垂体腺腫の原因

下垂体腺腫ができる原因は、はっきりと解明されていない部分があります。多くの場合、遺伝子に変化が起こり、細胞が異常に増殖することがきっかけと考えられています。ほとんどの脳下垂体腫瘍は良性であり、悪性のものはまれです。

ほとんどが良性ですので、他の臓器に転移したり、周囲の組織を破壊しながら増えたりすることはありません。ただし、ホルモンバランスや視機能への影響があるため、適切なタイミングでの加療が推奨されます。

下垂体腺腫の症状

下垂体腺腫による症状は大きく二つの種類に分けられます。

1.ホルモン分泌過多や分泌不全による症状
成長ホルモンが過剰に分泌されると、手足やあご、鼻が大きくなる先端巨大症(せんたんきょだいしょう)を引き起こすことがあります。
副腎皮質刺激ホルモン(*1)が過剰になると、体重増加や満月様顔貌(*2)(まんげつようがんぼう)などのクッシング症候群(しょくごうぐん)を発症することがあります。
プロラクチン(乳汁分泌を促すホルモン)が過剰になると、女性は月経不順や不妊、乳汁の分泌などの症状が現れやすく、男性では性欲の減退や勃起障害などにつながる場合があります。
逆にホルモンが十分に作られなくなる場合、体のエネルギー代謝が落ちる、疲れやすいなどの症状が出ることもあります。
2.腫瘍自体が脳や周辺組織を圧迫することによる症状
視神経(*3)やその交差部周辺を圧迫し、視野が欠けたり見えにくくなったりすることがあります。視神経が交差する場所が圧迫されるため、両目の外側が見えにくくなる(両耳側半盲:りょうじそくはんもう)のが典型的な症状です。「歩いていると横から来た人にぶつかりやすい」「運転中に左右の確認がしにくい」といった違和感から発覚することがあります。
大きな腫瘍になると、頭痛や吐き気などが生じる場合があります。

※1:副腎という臓器を刺激してコルチゾールというホルモンを出す命令をする物質
※2:顔に脂肪がつき、満月のように丸みを帯びた状態
※3:目からの情報を脳に伝える神経

下垂体腺腫の検査・診断

脳下垂体腫瘍を疑った場合、以下のような検査が行われます。

1.血液検査・尿検査
ホルモンの量を調べることで、ホルモン分泌の異常がないかを確認します。
2.画像検査
MRIやCTを利用して、脳下垂体付近に腫瘍があるかどうか、またその大きさや周辺組織への影響を調べます。
3.視野検査
視野が狭くなっていないかを確認することで、腫瘍の圧迫による視神経障害がないかを調べます。

これらの検査結果を総合的に判断し、脳下垂体腫瘍かどうかを診断します。腫瘍の種類や大きさ、ホルモンの分泌状態などによって治療方針が変わるため、正確な検査が重要です。

下垂体腺腫の治療

下垂体腺腫の多くは治療を必要としません。治療は、腫瘍の種類や大きさ、症状の有無などによって異なります。主な治療法としては以下のものがあります。

1.外科的治療
経蝶形骨洞手術(*4)(けいちょうけいこつどうしゅじゅつ)が一般的です。脳への負担が比較的少ないため、多くの下垂体腺腫でこの方法が選択されます。頭を大きく切り開くのではなく、内視鏡手術が主流です。鼻の穴から細い内視鏡を入れて腫瘍を取り出すため、「顔に傷がつかない、入院期間が短いといったメリットがあります。
2.薬物療法
プロラクチンが過剰に分泌されるタイプの腫瘍には、プロラクチンの分泌を抑える薬が効果的です。また、クッシング症候群などでホルモン調節が必要な場合も、ホルモン阻害薬や調節薬が使用されることがあります。
3.放射線療法
手術が難しい場合や、薬物療法で十分な効果が得られない場合に行われることがあります。ガンマナイフ(*5)など、腫瘍の位置を正確にとらえて高エネルギー放射線を集中して照射する方法もあります。

治療後は、ホルモンバランスや再発の有無を定期的にチェックすることが大切です。とくに、下垂体腺腫の手術後はホルモンの分泌が不足することがあり、補充療法(*6)が必要になる場合もあります。

※4:鼻や口の奥から脳下垂体に到達する手術方法
※5:脳内の病巣にガンマ線(γ線)を集中照射する放射線治療装置
※6:不足したホルモンを薬として補う治療

下垂体腺腫の合併症

下垂体腺腫やその治療によって、さまざまな合併症が起こることがあります。たとえば、視神経の損傷による視力障害が挙げられます。また、ホルモン分泌の異常が長く続くことで、骨粗しょう症(*7)(こつそしょうしょう)や高血圧などのリスクが上がる場合もあります。合併症を早期に発見し、適切に対処するためには、定期的な通院や検査が欠かせません。

※7:骨がもろくなる病気

更新:2026.09.25