多血症(赤血球増加症)
基礎情報
概要
多血症は、血管の中を流れて酸素を運ぶ細胞である赤血球が異常に増えてしまう病気です。骨髄(※1)から赤血球が過剰につくられることで、血液が濃く粘りけを帯びるようになり、血液が流れにくくなるのが大きな特徴です。血液の粘り気が増すことで、心臓に負担がかかったり、細い血管で流れが滞ったりしやすくなります。
世界的に見ると比較的まれな病気です。多血症は骨髄増殖性腫瘍’(※2)の一つとして指定難病に分類されており、患者数は他の血液疾患に比べて多くはありません。日本全体では数千人程度と推測されていますが、正確な数字は今後の調査が期待されています。
多血症は、中高年以降に発症することが多いと報告されていますが、若い年代で起こる例もまれにあります。治療により、症状をやわらげたり、合併症を予防したりすることが可能です。早期発見と適切な対応が大切になります。
※1:骨の中にある血液をつくる組織
※2:血液をつくる細胞が増えすぎる病気
多血症の原因
多くの原因は、骨髄内の造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)(※3)に起きた遺伝子の異常によって、赤血球を増やす誤った指令が止まらなくなることにあります。これを真性多血症と呼びますが、それ以外にも、喫煙や肥満、ストレスなどによって、体が一時的に赤血球を増やして対応しようとする「二次性多血症」もあります。
ただし、この遺伝子異常がなぜ起こるのか正確にはわかっていません。多くの場合、体質や環境要因、加齢などが複合的に影響していると考えられています。家族性にみられる例は多くなく、「遺伝する病気」とは言いにくいですが、血縁者に同じ病気の人がいる場合は注意が必要です。
※3:血球をつくるもとになる細胞

多血症の症状
多血症では、血液が増えることによって体内を流れにくくなるため、さまざまな症状があらわれることがあります。代表的な症状としては、次のようなものがあります。
- 1.頭痛やめまい
- 血液が濃くなることで血流が悪くなり、頭が重く感じたり、めまいを起こしたりすることがあります。耳鳴りを感じることもあります。
- 2.顔面や手足の赤み
- 血液の量が増え、酸素を運ぶ赤血球が多くなるため、皮膚、とくに顔や手足が赤っぽくなることがあります。
- 3.倦怠感(けんたいかん)や疲れやすさ
- 血液が粘りけを帯び、うまく流れない状態が続くことで、体に十分な酸素や栄養がいきわたらず、だるさや疲労感を覚えることがあります。
- 4.かゆみ
- おふろなどで体が温まると、体の表面近くの血液量が増えてかゆくなる場合があります。
- 5.視力の変化や目の充血
- 血液の流れが悪いと、目の血管の状態にも影響を及ぼし、ときに視力の低下や充血などがおこることがあります。
- 6.胸の痛みや息切れ
- 心臓に負担がかかると、胸が痛くなったり、ちょっとした動作でも息切れが起こったりすることがあります。
初期の段階ではこれらの症状があまりはっきりと出ないことも多く、健康診断の血液検査で偶然発見されるケースもあります。
多血症の検査・診断
- 1.血液検査
- ヘマトクリット値(血液全体に占める赤血球の割合)
基準値よりも大幅に高い場合、多血症の可能性を疑います。 - ヘモグロビン値(赤血球に含まれ、酸素を運ぶたんぱく質の量)
これも高い値を示すことが多いです。 - 白血球や血小板(※4)の数
場合によっては白血球や血小板も増加していることがあります。 - 2.遺伝子検査
- 血液の細胞を調べ、JAK2(ジャックツー)遺伝子異常があるかどうかを確認します。多くの患者さんでこの遺伝子異常がみつかります。
- 3.骨髄検査
- 骨髄から細胞を採取して、赤血球やそのもとになる細胞の状態を詳しく調べます。
- 4.その他の画像検査
- 超音波検査(エコー)やCT、MRIなどで、臓器の状態や血流を確認する場合もあります。
※4:血を固めるはたらきをもつ細胞
多血症の治療
多血症の治療は、血液が濃くなりすぎないようにして、血管が詰まるような合併症を予防することが最大の目的です。主な治療法としては次のようなものがあります。
- 1.瀉血(しゃけつ)療法
- 定期的に血液を採取して、血液中の赤血球を減らします。献血のような要領で行われ、赤血球が増えすぎないように管理します。これに血液をサラサラにする薬を組み合わせることで、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な合併症を未然に防ぎます。
- 2.薬物療法
- 低用量アスピリン
血小板による血栓(※5)形成を抑えることで、血液の流れを良くします。 - ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア)
骨髄での血球産生を抑制し、赤血球や白血球、血小板などの増加をコントロールします。 - インターフェロン製剤
体の免疫を調節する働きがあり、異常に増えた血球の増殖を抑えます。若い患者さんや妊娠中の方に使用されることがあります。 - 3.生活習慣の改善
- 血栓を防ぐために、水分を十分にとって血液がどろどろにならないよう心がけます。また、喫煙は血管を傷つけ血流を悪くするので、禁煙が推奨されます。肥満も心臓や血管に負担をかけるため、適度な運動とバランスの良い食事が大切です。
治療法は、年齢や健康状態、合併症のリスクなどによって異なります。医師と相談しながら、定期的な検査を受け、長期的に管理していくことが重要です。
※5:血のかたまり
多血症の合併症
多血症をそのまま放置すると、血液が濃くなり、血管内で血栓ができやすくなります。血栓ができると、脳の血管が詰まる脳梗塞、心臓の血管が詰まる心筋梗塞、肺の血管が詰まる肺血栓塞栓症など、命にかかわる病気を引き起こす危険があります。また長期的には、骨髄の働きが逆に低下してしまい、貧血(※6)などに移行するケースや、まれですが急性白血病(※7)に移行する可能性も指摘されています。
※6:血液中の赤血球やヘモグロビンが足りない状態
※7:血液をつくる細胞ががん化して急激に増える病気
多血症の予防
多血症自体を根本的に予防する方法は、現時点でははっきりしていません。原因となる遺伝子変異を防ぐ方法がまだ確立されていないためです。ただし、以下のような工夫をすることで、合併症を予防したり、病気の悪化を防いだりすることが期待できます。
- 1.定期検診と早期発見
- 年に1回程度の健康診断で血液検査を受け、赤血球数やヘマトクリット値に異常がないか確認しましょう。早期に発見すれば、リスクを減らす治療が始めやすくなります。
- 2.生活習慣の改善
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- 十分な水分補給
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 禁煙
- 3.ストレスの軽減
- ストレスは全身の血行不良をまねきやすいため、自分なりに息抜きをしたり、趣味を楽しんだりするなど、心身のリラックスを心がけることも大切です。
更新:2026.09.25
