躁うつ病
基礎情報
概要
以前、躁うつ病と呼ばれていた病気は、現在では双極性障害(そうきょくせいしょうがい)と呼ばれており、気分が極端に高まる「躁(そう)状態(*1)」と、大きく落ちこむ「うつ状態(*2)」が繰り返し起こる病気です。躁うつ病を含む気分障害の患者数は年々増加傾向にあります。中学生を含む若い世代でも発症することがあり、早めの理解と対応が重要です。
躁うつ病には、入院が必要なほど激しい躁状態がある「双極Ⅰ型」と、本人や周囲が「今日は少し調子が良いな」と感じる程度の軽い躁状態(軽躁)が続く「双極Ⅱ型」があります。特にⅡ型は、単なる「うつ病」と間違われやすいため注意が必要です。
躁うつ病は、適切な治療とサポートを受けることで症状を管理し、安定した生活を送ることが可能です。ただし、放置すると学校生活や人間関係に影響が出る場合もあるため、周囲の理解も欠かせません。
※1:気分が高ぶって活動的になる状態気
※2:気分が落ち込み、活動意欲が低下する状態

躁うつ病の原因
原因は一つに限定されているわけではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
- 1.遺伝的要因
- 家族に躁うつ病の人がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。ただし、遺伝だけで必ず発症するわけではありません。
- 2.生物学的要因
- 脳内の神経伝達物質(*3)のバランスが崩れることが、躁うつ病に関わっているとされます。また、脳内の神経伝達物質のバランスに加え、感情をコントロールする脳の「感情調節機能」が一時的にうまく働かなくなっている状態だと考えられています。決して本人の性格や努力不足が原因ではありません。
- 3.環境的要因
- 強いストレスや生活環境の変化、学校や仕事での過度な負担なども、発症や症状の悪化に影響する可能性があります。
これらが複雑に絡み合い、それぞれの人によって発症のきっかけや経過は異なります。
※3:脳で信号を伝える物質
躁うつ病の症状
大きく「躁状態」と「うつ状態」の二つが繰り返されます。症状の強さや持続期間によって「双極I型」と「双極II型」に分けられます。
- 1.躁状態
- 気分が異常に高揚し、自信に満ちあふれる
- 睡眠時間が少なくても疲れを感じにくい
- 頭の回転が速く、話す量やスピードが増える
- 衝動的な行動をとりやすくなる(買い物のしすぎや攻撃的言動など)
- 学校生活では、授業中にもかかわらず落ち着きがなくなるなどの行動がみられることもある
- 2.うつ状態
- 強い落ち込みや悲しみを感じる
- やる気が出ず、普段楽しめていたことに興味をもてなくなる
- 疲れやすく、集中力が低下する
- 食欲や睡眠パターンの乱れ(食べ過ぎまたは食べられない、寝過ぎまたは眠れない)
- 自分を責める気持ちが強くなる
Ⅱ型の「軽躁状態」では、「いつもより仕事や勉強がはかどる」「社交的になる」といった、一見ポジティブな変化に見えることがあります。しかし、その後に必ず深いうつ状態がやってくるため、この気分の高まりを「本来の自分」ではなく「病気のサイン」として捉えることが大切です。
躁うつ病の症状は、躁状態とうつ状態のどちらかだけが目立つこともあれば、急に移り変わることもあります。とくに思春期は気分の変動が大きい時期ですが、激しい変動が続き生活に支障が出る場合は専門家に相談することが大切です。
躁うつ病の検査・診断
診断には、主に精神科医や心療内科医による問診と観察が中心になります。血液検査などの身体的検査は、ほかの病気が原因で気分の変動が起きていないかを確認するために行われることがあります。診断のポイントとしては、以下のような項目が確認されます。
- 1.症状の経過と持続期間
- 躁状態やうつ状態がどのくらい続いているかる
- いつごろから症状がみられるようになったか
- 2.生活への支障の程度
- 学校生活での成績や出席状況、人間関係に影響が出ているか
- 家族や友人とのコミュニケーションに問題が生じているか
- 3.過去の病歴や家族の病歴
- 自分や家族が似たような症状で治療を受けた経験があるか
これらを総合的に判断し、必要に応じて躁うつ病かどうか診断が下されます。
躁うつ病の治療
治療は、薬物療法と心理社会的治療の二本柱で行われます。症状の程度や、そのときの状態によって組み合わせが異なります。
- 1.薬物療法
- 気分安定薬:躁とうつの両方の症状がひどくならないようにコントロールする薬。脳の興奮を抑える薬である、リチウムなどが代表的です。
- 抗精神病薬:強い躁状態や、気分の波が大きいときに用いられることがあります。
- 抗うつ薬:うつ状態が強いときに処方されることがありますが、躁状態への切り替わりを促してしまう場合もあるため、医師の注意深い管理が必要です。
- うつ病だと思って抗うつ薬だけを飲むと、急激に躁状態になったり(躁転)、気分が不安定になったりすることがあります。必ず専門医に過去の「気分の高まり」についても伝えるようにしましょう。
- 2.心理社会的治療
- カウンセリング:医師や臨床心理士との対話を通じて、ストレスの対処法や気分のコントロール方法を学びます。
- 認知行動療法:考え方や行動のくせを自覚し、よりよい方向へ変えていくことで、気分の安定をめざします。
- 家族療法や家族教育:家族も病気への理解を深め、患者を支える方法を学ぶことで、家庭全体の負担を軽減します。
- 生活リズムの調整:規則正しい睡眠や食事のリズムを保ち、ストレスを減らす工夫をすることが症状の安定に役立ちます。
躁うつ病の合併症
躁うつ病は、気分の波が大きくなるため、以下のような状態を引き起こす可能性があります。
- 不安障害やパニック障害:気分の変動にともなって、強い不安やパニック発作(*4)があらわれることがあります。
- 物質乱用:アルコールや薬物に依存しやすくなる傾向があります。
- 自殺念慮(じさつねんりょ):強いうつ状態が続くと、「死にたい」という気持ちが強くなる場合があります。早めの支援と治療が必要です。
※4:突然の動悸や息切れ、恐怖感など
躁うつ病の予防
はっきりとした予防法は確立されていませんが、発作を起こしにくくするための工夫はあります。
- 1.早期受診
- 気分の波が大きいと感じたら、まずは家族や学校の先生など信頼できる大人に相談し、早めに専門医を受診することが大切です。
- 2.生活習慣の安定
- 規則正しい睡眠リズムを保つ
- バランスのよい食事をとる
- 無理のない範囲での運動や趣味を続ける
- 3.ストレス管理
- 学校や部活動の負担を調整し、休息をしっかりとる
- カウンセリングやメンタルヘルスのサービスを活用する
更新:2026.09.25
