視神経脊髄炎(NMOSD)
基礎情報
概要
視神経脊髄炎(NMOSD、別名:デビック病)は、本来は体を守るはずの免疫が、誤って自身の目(視神経(*1))や背中の神経(脊髄(*2))を攻撃してしまう病気です。発症すると、視力低下や四肢(手足)の麻痺(まひ)など、生活に大きな影響を及ぼす症状がみられます。
※1:目から脳へと信号を伝える神経
※2:背骨の中心にある神経のかたまり
視神経脊髄炎(NMOSD)の原因
視神経脊髄炎は自己免疫の異常が原因と考えられています。通常、免疫は体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を攻撃して排除します。しかし、この病気では、本来は自分の身体を守るはずの免疫が誤って自分の中枢神経系(脳や脊髄など)を攻撃するのです。
多くの患者さんの体内では、脳や脊髄の細胞にある水を通すための通路(アクアポリン4)を敵とみなして攻撃する抗体が作られています。この通路が攻撃されて壊れることで、神経が激しく腫れ上がり、情報の伝達が妨げられてしまうのです。
視神経脊髄炎(NMOSD)の症状
視神経脊髄炎の主な症状は、視神経と脊髄に炎症が起こることで現れます。代表的な症状は以下のとおりです。
- 1.視覚障害(しかくしょうがい)
- 視力の低下や視野が狭くなる
- 目の奥が痛む(視神経炎によるものが多い)
- 両目または片目だけの障害など個人差がある
-

図:視神経脊髄炎(NMOSD) - 2.脊髄症状
- 四肢のしびれや麻痺(上下肢が動かしづらくなる)
- 体幹や足先にかけて感覚が鈍くなる
- 排尿や排便のコントロールが難しくなる(膀胱や腸の機能障害)
意外な症状として、数日間止まらないしゃっくりや吐き気が現れることがあります。これは脳の特定の場所(最後野)に炎症が起きることで生じるこの病気特有のサインの一つで、単なる胃腸の不調と間違われやすいため、注意が必要です。
視神経脊髄炎(NMOSD)の検査・診断
視神経脊髄炎の診断には、主に以下のような検査が行われます。
- 1.血液検査
- アクアポリン4抗体の有無を調べる
- MOG抗体など、他の自己抗体の有無を確認する
- 2.MRI検査(磁気共鳴画像検査)
- 視神経や脊髄の炎症や損傷箇所を画像で確認する
- 多発性硬化症との鑑別(区別)にも役立つ
- 3.髄液検査
- 脊髄液を採取して炎症の有無や異常たんぱくの有無を調べる
- 多発性硬化症の場合とは髄液の所見が異なることが多い
- 4.視覚誘発電位検査(*3)
- 視神経から脳に伝わる電気信号の伝導速度を測定し、視神経の障害を確認する
これらの検査結果を総合的に判断し、視神経脊髄炎と多発性硬化症など他の類似疾患との区別を行います。早期発見が大切であり、視覚障害や手足の麻痺などを感じた場合は、早めに神経内科や眼科を受診することが望ましいです。
※3:視覚刺激を与えて脳の反応を記録し、視神経や視覚経路の働きを調べる検査
視神経脊髄炎(NMOSD)の治療
視神経脊髄炎の治療は、大きく分けて「急性期の治療」と「再発予防のための治療」の二つに分かれます。
- 1.急性期の治療
- ステロイドパルス療法
高容量のステロイド(*4)を点滴で投与し、急激に進行する炎症を鎮めます。 - 血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう)
ステロイドだけでは十分に症状が改善しない場合に、血液中の有害物質や抗体を除去する目的で行われます。 - 2.再発予防のための治療
- 免疫抑制剤の使用
ステロイド薬や免疫抑制剤を長期的に服用し、免疫による攻撃を抑制して再発を防ぎます。 - 生物学的製剤
最近は、特定の自己抗体や免疫細胞の働きを抑える薬。より効果的な再発予防が期待されています。
※4:免疫を抑える薬
NMOSDは一度の再発が大きな後遺症に繋がりやすいため、再発をゼロに抑えることが治療の最大の目標です。現在は、原因物質をピンポイントでブロックする非常に効果的な新しい薬(分子標的薬)が登場しており、再発の不安を最小限に抑えながら生活することが可能になっています。
更新:2026.09.26
