基礎情報

概要

睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることで、無呼吸の状態になる病気です。まれに、脳や神経などの異常が原因で、呼吸をするための筋肉への指令が届かなくなることで起こる場合もあります。

無呼吸状態とは、10秒以上呼吸が止まることをいい、大きないびきを繰り返すのもこの病気の特徴です。良質の睡眠が妨げられるとともに、無呼吸状態になることで血液中の酸素が不足してしまい、睡眠時に十分に体を休めることができなくなります。昼間に強い眠気が生じるなど、日常生活に支障をきたすことになるのはもちろん、時には心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳卒中などの重大な合併症を引き起こすリスクもあるので注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群は、家族から就寝中のいびきを指摘されることで発覚するケースが少なくありません。日中の眠気や疲れやすさなどを感じる場合も含め、早めに専門医による診察を受けることが大切でしょう。

図
図:正常な状態(左)と睡眠時無呼吸症候群で気道が閉塞した状態(右)

症状

睡眠中に10秒以上の無呼吸状態といびきを繰り返すのがこの病気の特徴で、睡眠が浅くなるため、夜中に何度も目が覚めたり、起きたときに疲れが取れていないと感じたりすることが多く、慢性的な睡眠不足の状態になり、日々の疲労が蓄積していきます。そのため、日中の眠気や起床時の頭痛を引き起こすほか、慢性的な倦怠感(けんたいかん)を覚えたり、集中力や注意力が散漫になるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

症状が進むと、高血圧不整脈動脈硬化により、狭心症心筋梗塞脳卒中といった重篤な合併症につながるリスクも高くなります。特に、1時間の睡眠の間に、無呼吸や呼吸が弱くなる低呼吸が30回以上ある重症レベルになると、心臓や脳にトラブルが生じる危険性が約5倍になるという研究結果も明らかにされています。

原因

睡眠時無呼吸症候群の原因として多いのは、睡眠中に空気の通り道である上気道がふさがれてしまうことです。例えば、太っている人があおむけの姿勢になると、空気の通り道である喉(のど)が狭くなり、呼吸がしづらくなることがあります。このとき、いびきが生じるとともに、空気の通り道が一時的につぶれてしまうことで、無呼吸の状態を引き起こします。そのため、首や喉の周りに脂肪が多い肥満気味の人に発症しやすくなりますが、ほかにも下顎(したあご)が後ろに引っ込んでいる人や、舌や舌の付け根が大きい人など、体形が睡眠時無呼吸症候群の原因となることが多くあります。

また、慢性的な鼻炎や鼻中隔湾曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)などの鼻の病気によっても空気の通り道が狭くなります。呼吸をつかさどる脳の延髄の呼吸中枢に異常が生じることで、正常な呼吸運動ができなくなって発症するケースもまれにあります。

検査・診断

睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状があるときは、まず睡眠ポリグラフ検査を行い、睡眠の質や睡眠中の呼吸の状態を調べます。この検査には、自宅でできる簡易検査と、入院して行う精密検査があり、簡易検査を行って睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いと認められた場合に精密検査を実施するのが一般的です。

簡易検査は携帯用の機器を用いて、いびきの状態や喉の空気の流れ、血液中の酸素濃度などを調べていくものです。一方、精密検査は医療機関に入院して調べることで、睡眠の質や呼吸状態をさらに詳しく評価することができます。

そのほか、睡眠時無呼吸症候群は喉や鼻、舌の異常によって生じることもあるため、X線検査やCT検査などの画像検査を行い、異常がないかを調べる場合もあります。

治療

肥満が睡眠時無呼吸症候群の原因となるケースが多いため、まずは肥満の解消に努めることが重要といえます。特に、喉の周りの脂肪を落とすことが必要なため、体重を減らすことをめざす生活習慣を確立することが大事です。

それとともに、症状の重さによっては経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)や、マウスピースの装着などの治療を行います。経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、睡眠中に鼻マスクを着け、そこから強制的に空気を送り込み、狭くなった気道を広げて呼吸を改善する治療法です。これにより、心筋梗塞脳卒中の発生リスクを通常レベルまで下げることができます。また、早急に気道の確保が必要な場合には、手術によって喉の一部を切除する方法が選択されることもあります。

更新:2022.08.22