きゅうせいかんふぜん

急性肝不全

基礎情報

概要

急性肝不全は、数日から数週間といった比較的短い期間で肝臓の機能が急激に低下し、体内の毒素を無毒化したり、栄養やエネルギーを貯蔵したりといった重要な役割を果たせなくなる病気です。適切な治療が遅れると命にかかわることがあります。

急性肝不全は、正常だった肝臓が急激に壊れることで、「肝性脳症(かんせいのうしょう)」と呼ばれる意識障害を伴う非常に重篤な状態です。発症から脳症が出るまでの期間によって「急性型(10日以内)」と「亜急性型(11〜56日)」に分類され、特に亜急性型は救命率が低い傾向にあり、一刻を争う対応が必要です。

日本では急性肝不全は比較的まれな病気ですが、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス感染や医薬品の影響などによって突然発症し、重症化する例があります。

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図:急性肝不全

急性肝不全の原因

急性肝不全を引き起こす主な原因としては、以下のようなものがあります。

1.ウイルス感染
B型肝炎ウイルスやA型肝炎ウイルスなどによる感染が、急速に肝臓を傷つける場合があります。
C型肝炎ウイルスの場合は慢性化することが多いとされますが、まれに急激に悪化するケースも報告されています。
2.医薬品やサプリメントの過剰摂取
鎮痛剤として広く使われるアセトアミノフェンを大量に服用すると、肝臓に大きなダメージを与える可能性があります。欧米では急性肝不全の主要な原因となっています。
一見安全に見える健康食品や特定のハーブ、あるいは「健康診断の数値を下げる」と謳うサプリメントによっても、体質に合わなければ劇症化することがあります。
3.毒素や化学物質の摂取
工業用溶剤や農薬、毒キノコなどに含まれる毒素が急激に肝臓を傷つけることがあります。
4.自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん)
体の免疫が誤って自分自身の肝臓を攻撃してしまう病気です。急性の経過をたどり、肝不全に至る場合があります。
5.その他の原因
血管のトラブルによって肝臓への血液供給が急に減少する場合(虚血性肝障害〈きょけつせいかんしょうがい〉)
Wilson病(ウィルソンびょう)という、銅が体にたまりやすくなる遺伝性疾患の急激な悪化など

急性肝不全の症状

急性肝不全の初期段階では、風邪のような症状や軽い倦怠感などが見られますが、病状が進むと、次のような症状が急速にあらわれることがあります。

1.黄疸(おうだん)
肝臓がビリルビン(*1)を処理できなくなるため、皮膚や白目が黄色くなったり、だるさや痒みが出ることがあります。
2.腹部の腫れや痛み、浮腫み
肝臓が炎症を起こしたり、腹水(ふくすい)がたまったりして、おなかがふくらむことがあったり、足が浮腫んで重だるく感じたりします。
3.吐き気や嘔吐、食欲不振
肝臓の機能が落ちると、消化器系にも影響が及びます。
4.意識障害や錯乱
肝臓がアンモニアなどの有害物質を処理できなくなると、それらが脳に悪影響を及ぼし、ぼんやりしたり意味不明の言動をしたり、昼夜が逆転する、手が細かく震える(羽ばたき振戦)といった異変は、重症化の重要な兆候です。重度の場合は昏睡(こんすい)状態に陥ることもあります。これを肝性脳症(かんせいのうしょう)と呼びます。
5.あざや出血が起こりやすくなる
肝臓は血液の凝固に必要なタンパク質を作る役割も担っています。その機能が低下すると、少しの傷で出血が止まりにくくなったり、皮下出血が増えたりします。

これらの症状が突然起こったり、急激に悪化したりする場合は、急性肝不全を疑って早急に医療機関を受診する必要があります。

※1:赤血球が壊れたあとにできる色素で、主に肝臓で処理され、体の外へ排出される。

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図:肝硬変を患っている患者さんの特徴

急性肝不全の検査・診断

急性肝不全が疑われるときは、次のような検査を総合的に行います。

1.血液検査
肝機能検査(かんきのうけんさ):AST(エーエスティー)やALT(エーエルティー)などの肝酵素(かんこうそ)を測り、肝臓のダメージの程度を調べます。
血液凝固能(けつえきぎょうこのう)の検査:プロトロンビン時間(*2)を測定し、肝臓が血液凝固に必要な物質を作れているかを確認します。
ビリルビンやアルブミンの測定:肝臓の解毒機能や栄養状態を推測するのに役立ちます。
ウイルス検査:B型肝炎ウイルスやA型肝炎ウイルスなどの有無を確認します。
2.画像検査
超音波検査:肝臓の大きさや血流の状態、腹水の有無を調べます。
CT検査やMRI検査:肝臓の内部構造をより詳しく見て、腫瘍やほかの異常がないかを確認します。
3.肝生検(かんせいけん)(必要に応じて)
細い針を使って肝臓の一部を採取し、顕微鏡で組織を調べます。原因の特定や組織の状態を詳しく知るために行われます。

※2:血液が固まるまでの時間

急性肝不全の治療

急性肝不全の治療は、肝臓へのダメージを減らし、合併症を防ぎながら肝臓の回復を助けることが中心となります。具体的には以下のような方法がとられます。

1.原因に応じた治療
薬物の過剰摂取が原因の場合:可能であれば、体内から薬物を排出する処置や、薬の解毒を助ける薬剤を投与します。
ウイルス感染の場合:抗ウイルス薬や免疫調整薬を使用し、ウイルスによる肝障害を抑えます。
自己免疫性肝炎の場合:ステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬〈ふくじんひしつ〉)を使って免疫反応を抑えます。
2.集中治療
入院管理:急性肝不全の患者は、集中治療室(ICU)で血液凝固や肝性脳症などを厳重に監視しながら治療を受けます。
利尿薬(りにょうやく)などの投与:腹水やむくみを抑え、体内の水分バランスを整えます。
栄養管理:点滴や経管栄養(けいかんえいよう)で、適切なカロリーと必要な栄養素を補給します。
人工肝補助装置(じんこうかんほじょそうち):血液透析(けつえきとうせき)のように血液中の毒素を取り除く装置を使う場合があります。
3.肝移植
迅速な治療でも肝臓の回復が見込めない場合、肝移植が最終手段として検討されます。
ただし、臓器移植にはドナー(提供者)が必要であり、移植後も拒絶反応を抑えるための薬を一生服用するなど、さまざまな管理が必要です。
日本では親族などから肝臓の一部をもらう「生体肝移植」が検討されることが一般的です。

急性肝不全の合併症

急性肝不全が進行すると、次のような合併症が起こりやすくなります。

肝性脳症(かんせいのうしょう)
前述のとおり、アンモニアなどの毒素が脳に影響を及ぼし、意識障害や昏睡状態に陥ることがあります。
多臓器不全(たぞうきふぜん)
肝臓以外の臓器(心臓や腎臓、肺など)も次々に働きが悪くなり、生命の危機にさらされる場合があります。
感染症
免疫機能が低下するため、細菌やウイルスに感染しやすくなり、治療の妨げになる可能性があります。

急性肝不全の予防

急性肝不全を予防するためには、以下のような注意が必要です。

1.医薬品やサプリメントの正しい使用
解熱鎮痛薬などを使用する際は、用法・用量を守りましょう。
サプリメントは医師や薬剤師に相談し、肝臓に負担をかける成分が含まれていないか確認することが大切です。
2.ウイルス感染の予防
A型肝炎やB型肝炎には予防接種が有効です。
B型・C型肝炎ウイルスの感染リスクがある場合、定期的に検査を受けて早期発見・早期治療につなげましょう。
3.健康的な生活習慣
規則正しい食事や十分な睡眠、適度な運動などで免疫力を維持し、肝臓への負担を軽減します。
アルコールの過剰摂取は肝障害のリスクを高めるため、適度な量を守るか、控えることが望ましいです。

更新:2026.09.25