全身性エリテマトーデス(SLE)
基礎情報
概要
全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己免疫疾患(*1)のひとつです。本来、私たちの免疫システムはウイルスや細菌などの外敵を攻撃して体を守っています。しかし、SLEではこの免疫が誤作動を起こし、自分の組織や臓器を攻撃し続けてしまうことで、全身のいろいろな部位に炎症が起こります。特に皮膚、関節、腎臓、脳、心臓、肺などの重要な部位が影響を受けやすいといわれています。
SLEは女性に多い病気で、10代後半から30代前後に発症しやすい傾向がありますが、男性やほかの年代でも起こる可能性があります。症状は人によって異なり、軽い症状ですむ方もいれば、重い合併症が生じる方もいます。早期に治療を始めることで、生活の質を保ちながらコントロールできるケースが増えています。
※1:自分の免疫が自分自身の体を攻撃してしまう病気
全身性エリテマトーデスの原因
SLEのはっきりとした原因は、まだすべて解明されていません。しかし、いくつかの要因が重なった結果、自己免疫が異常を起こすと考えられています。
- 1.遺伝的素因(いでんてきそいん)
- 家族の中に自己免疫疾患を持つ人がいる場合、SLEを発症するリスクがやや高まるといわれています。
- 2.環境要因
- 紫外線や特定のウイルス感染、喫煙、ストレスなどがきっかけとなることがあります。
- また、思春期や出産前後などホルモンバランスの変化が引き金になることもあると考えられています。
- 3.薬剤性
- ごく一部の薬によってSLEに似た症状が現れる場合がありますが、薬を中止すると多くは症状が改善します。
こうした複数の要素が組み合わさり、免疫システムが体自身の細胞や組織を外敵と誤って認識することで、炎症が全身に広がると考えられています。
全身性エリテマトーデスの症状
SLEの症状は多岐にわたりますが、代表的なものや特徴的なものをいくつか挙げます。
- 1.皮膚症状
- 頬の両側に広がる蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)(*2)が典型的です。蝶形紅斑は、鼻唇溝(小鼻の脇から口角にかけての溝)には赤みが出ないのが特徴です。日光を浴びると赤みや湿疹が悪化しやすい方もいます。
- 2.関節の痛みや腫れ
- 手指や手首、ひざなどの関節が痛んだり腫れたりします。リウマチと似た症状ですが、関節の変形はリウマチほどではないとされます。
- 3.疲れやすさ、発熱
- 慢性的なだるさや、原因不明の微熱(37度台)や発熱が続くことがあります。
- 4.腎臓への影響
- 腎炎を引き起こすことがあり、むくみやタンパク尿や血尿などの症状が出る場合があります。
- 5.血液・免疫系への影響
- 貧血や白血球、血小板の減少が見られることがあります。
- 6.その他
- 頭痛や意識障害など中枢神経系(*3)に症状が出る場合や、胸の痛みや不整脈など、心肺機能に影響が及ぶこともあります。
※2:蝶が羽を広げたような赤い発疹
※3:脳や脊髄を含む神経系

全身性エリテマトーデスの検査・診断
SLEは、症状が多様なため診断が難しいことが少なくありません。複数の検査結果や症状を総合して判断します。
- 1.問診・診察
- 症状の経過や家族歴、体のどの部分に異変があるかを詳しく聞き取り、皮膚や関節などを診察します。
- 2.血液検査
- 抗核抗体(こうかくこうたい)(*4)や抗DNA抗体などの自己抗体が高い値を示すかどうかを調べます。
- 貧血や白血球・血小板の数値、腎臓や肝臓の機能を示す数値なども確認し、SLEの可能性を探ります。
- 3.尿検査
- 腎炎の有無を調べるために、尿中のタンパクや潜血を検査します。
- 4.画像検査
- レントゲンやCT、MRI、超音波検査などで、各臓器に炎症や損傷が起きていないかを確認します。心臓や肺、腎臓などが特に注意されます。
- 5.皮膚や腎臓の生検(せいけん)
- 必要に応じて、皮膚の一部や腎臓の組織を取って顕微鏡で調べることがあります。細胞レベルの観察により、SLE特有の炎症の様子を詳しく確認します。
※4:細胞の核に対して反応する抗体
全身性エリテマトーデスの治療
SLEには根本的な完治を目指す特効薬がまだありません。しかし、症状を緩和し、病気の進行を抑える治療を行うことで、日常生活をできるだけ普通に近い状態で送れるようにすることが目標です。
- 1.免疫抑制薬(めんえきよくせいやく:免疫のはたらきを抑える薬)
- ステロイド薬(*5)やシクロホスファミドなどの薬を使うことで、免疫の過剰反応を抑え、炎症を軽減します。ステロイド薬は症状の重いときに高用量を使用し、症状が落ち着いてきたら減量することが多いです。
- 2.抗マラリア薬
- ヒドロキシクロロキンなどの薬剤が皮膚症状や関節痛の改善に役立つ場合があります。もともとマラリア予防薬として開発されたものが、SLEの症状にも効果があるとされています。
- 3.生物学的製剤
- 近年では、抗体を作る免疫細胞の働きを調整する製剤も使用されています。これにより、過剰な免疫反応を抑えることが期待されます。
- 4.対症療法
- 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など)を使ったり、腎臓の保護のための降圧薬を使ったりすることもあります。
- 5.生活習慣の管理
- 帽子や日焼け止めの使用など日光に長時間当たらない工夫や、十分な休息・睡眠、バランスの良い食事、適度な運動なども治療の一環として大切です
治療は、炎症を抑えるだけでなく、ステロイドの副作用(骨粗鬆症や感染症、満月様顔貌など)を最小限に抑えつつ、病気の活動性を低く保つ低疾患活動性(LLDAS)を目指します。最近はヒドロキシクロロキンなどの併用により、より安全に長期的な安定を目指せるようになっています。
※5:体の過剰な反応を抑える薬
全身性エリテマトーデスの合併症
- 腎不全(じんふぜん)(*6):SLEによる腎炎が悪化すると、腎不全に至る場合があります。血液透析が必要になることもあるため、定期的な腎機能のチェックが重要です。
- 血管障害:血管がダメージを受けやすく、心臓の血管が詰まる心筋梗塞や脳の血管が詰まるまたは破れる脳卒中のリスクが高まる可能性があります。
- 感染症:ステロイドなど免疫抑制薬を使うため、体の抵抗力が弱まり、さまざまな感染症にかかりやすくなる場合があります。
※6:腎臓の働きが大幅に低下した状態
全身性エリテマトーデスの予防
SLE自体を完全に防ぐ方法はまだ見つかっていません。しかし、発症リスクを減らしたり、悪化を防いだりするために、以下のようなことが勧められます。
- 1.紫外線対策
- 帽子や日焼け止め、日傘などを使い、直射日光を避ける工夫をします。紫外線はSLEの症状を悪化させる要因の一つです。
- 遮光対策「夏場だけでなく、曇りの日や室内(窓越し)でも徹底することが再発(フレア)を防ぐ鍵です。外出時はUVカット加工の衣服を選び、数時間おきに日焼け止めを塗り直すなどの遮光の習慣化が、薬と同じくらい大切な治療の一部となります。
- 2.生活リズムの安定
- 十分な睡眠と休息を取り、ストレスを上手にコントロールすることが重要です。免疫が乱れる要因を少しでも減らすために、無理をせず体調管理を行いましょう。
- 3.感染症予防
- 手洗いやうがい、必要に応じたワクチン接種などを心がけ、風邪やインフルエンザ、肺炎などの感染症から身を守ることで症状悪化を防ぎます。
更新:2026.09.25

