首の痛み
基礎情報
概要
首は、重さが6〜8kgもある頭部を支える重要な部位です。頭は、前後左右、ぐるりと回すなど、自在に動かすことができますが、こうした動きを可能にするのは、首が支えになっているからです。常に頭を支える役割を果たしているため、加齢や運動不足などによって首の筋肉が衰えたり、同じ姿勢を長時間続ける、寝具が合わないなどの理由から、首の可動域が狭くなったり、痛みを感じたりするようになります。長い間負担をかけ続けると、骨や関節に変形を起こします。
症状
首の骨のことを、頸椎(けいつい)と呼びます。頸椎は、骨が関節でつながっている7つの骨からできていて、頸椎の中央には、脊髄(せきずい)が通り、脊髄は全身の神経とつながっています。骨の間には、クッションの役割を果たす椎間板(ついかんばん)があり、靱帯(じんたい)や筋肉が周りを支えています。
初期には首こり、筋肉痛といった症状ですが、放置すると痛みは慢性化します。やがて頸椎に変形が起こると、肩が痛い、手や足がしびれる、麻痺(まひ)、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、ひんぱんに尿意をもよおすなど、全身に症状が現れます。頸椎は、全身の神経の中心なので、損傷した場所によって、その症状はさまざまです。変形してしまうと、元に戻ることはなく、長期にわたる治療が必要です。早いうちに治療を開始すれば、回復も早いでしょう。
原因
加齢や悪い姿勢、急な衝撃などによって起こりますが、内臓疾患が原因の場合もあります。進行して変形を起こすと、首の病気と診断されます。また、進行状況によっては手術が必要になることもあります。
原因となる疾患
- 頸椎捻挫(むちうち):
- 交通事故や転倒、転落など、頭部に強い衝撃を受けると、頸椎の関節に強い力がかかって、靱帯や筋肉に損傷を起こします。これを頸椎捻挫(けいついねんざ)といい、外傷性頸部(けいぶ)症候群と呼ぶこともあります。
- 頸椎症:
- 椎間板の組織の一部が飛び出し、変形した頸椎が脊髄や神経を刺激して起こります。
- 頸椎椎間板ヘルニア:
- 椎間板がずれて、脊髄や神経を圧迫することで起こる病気です。
- 関節リウマチ:
- 自己免疫が異常に反応して、関節の内面に炎症を起こし、長い期間かけて関節を破壊する病気です。
- 後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)、黄色靱帯骨化症(おうしょくじんたいこつかしょう):
- 頸椎を支える靱帯が骨のように硬くなり、脊髄や神経根(しんけいこん)を圧迫して起こります。
治療
重い頭部を常に支えている首にとって、姿勢を正したりリラックスして動かしたりすることは、痛みの軽減法であり、予防法でもあるといえます。
日常生活の改善
猫背や前かがみの姿勢を修正します。頸椎は、なだらかな曲線になっていることで、重い頭部を支えています。この曲線がうまくバランスを取って、頭部の重さを分散しているのですが、悪い姿勢を続けると、この曲線がなくなって、首への負担が増えてしまいます。頸椎の曲線がなくなった状態をストレートネックといい、首こりの原因になります。
スマートフォン、パソコンでの作業、デスクワーク、テレビの見すぎなど、長時間、同じ姿勢を続けるのはよくありません。こうした姿勢はストレートネックを誘発するだけでなく、血液の流れも悪くなります。机やいすの位置にも気をつけて、腰をしっかりいすの背につけて背筋を伸ばし、目線が下になりすぎないよう注意しましょう。
運動
運動を取り入れて体に柔軟性を取り戻し、血行を良くするのが治療の第一歩です。
下記のストレッチを、それぞれ5秒ずつ行います。力を入れず、ゆっくり少しずつ動かすのがポイントです。一定時間(30分以上)作業をしたら、5セットを目安にストレッチを行いましょう。
- 首を、右、左の順に倒す。
- 顔を、右、左(真横の位置)の順に動かす。
- 肩を大きく、前、後ろに回す。
- 両腕を上げて脱力した状態で、肩を揺らして腕をぶらぶらさせる。
- 両腕を下げて脱力した状態で、肩を揺らして腕をぶらぶらさせる。
保存療法
症状が少し進んでつらい場合には、鎮痛剤(貼り薬や内服薬)によって痛みを軽減します。器具を使って、首をけん引するリハビリテーションや、ネックにカラーを巻いて固定して首を安定させる方法、首を温める温熱療法があります。さらに、強い痛みを和らげる神経ブロック注射という方法があります。
手術療法
進行してしまったケースでは、手術が検討されることがあります。歩行障害やしびれ、排尿障害など、日常生活に支障をきたすほど強い症状が出ているかどうかが基準になります。
更新:2022.05.26