疲労骨折
基礎情報
概要
疲労骨折(ひろうこっせつ)は、骨に繰り返し負荷がかかることで、小さなひび割れのような状態が生じる骨折の一種です。激しい運動や長期間のトレーニングを続けた結果、一回一回は耐えられる小さな力でも、同じ場所に繰り返し加わることで、骨に微細なひびが入ってしまいます。最初は運動中だけの違和感でも、放置すると歩くことさえ困難な完全な骨折に繋がる恐れがあります。特に陸上競技やバスケットボールなど、足に衝撃が加わるスポーツをする人に多くみられますが、誰にでも起こり得るケガです。
部活動や運動習慣が盛んな若年層を中心に、スポーツ外来などで比較的よくみられる障害といわれています。適切な予防と早期の対処によって、重症化や長期の運動制限を避けることが可能です。

疲労骨折の原因
疲労骨折の原因は、骨に繰り返し加わる負荷です。特に以下のような条件が重なると、発生しやすくなるとされています。
- 1.運動量や負荷を急に増やす
- 走る距離や練習時間などを短期間で大幅に増やすと、骨が耐えきれずにひびが入りやすくなります。
- 2.不適切なトレーニングやフォーム
- ランニングやジャンプなどで足にかかる力のバランスが偏っていると、一部の骨に負担が集中します。
- 3.硬い路面での練習が多い
- アスファルトやコンクリートなど、クッション性の低い場所で長時間トレーニングを行うと、衝撃がダイレクトに骨に伝わります。
- 4.栄養不足や骨密度(こつみつど)の低下
- カルシウムやビタミンDなどの栄養が不足したり、過度なダイエットによって骨密度が下がったりすると、骨がもろくなり、疲労骨折を起こしやすくなります。
- 5.合わない靴や用具
- サイズの合わない靴や摩耗(まもう)したシューズを使い続けると、足への衝撃吸収が不十分になり、特定の部位に大きな負担がかかります。
練習量の急増(オーバーワーク)はもちろんですが、すり減ったシューズや硬すぎる路面での練習も大きな要因です。また、栄養不足や睡眠不足で、骨の修復(新陳代謝)が負荷に追いつかなくなったときに、疲労骨折のリスクは高くなります。
疲労骨折の症状
疲労骨折の特徴的な症状としては、最初は運動中や運動後に感じる軽い痛みから始まり、次第に以下のような状態に進行することが多いです。
- 1.患部(かんぶ)の痛みや違和感
- はじめは「軽い張り」や「少しズキズキする」と感じる程度ですが、無理を続けると痛みが強まります。
- 2.患部の腫れや圧痛(あっつう)
- 見た目にはあまり大きな変化がない場合もありますが、押すと鋭い痛みを感じたり、運動後に軽い腫れが出たりする場合があります。
- 3.休んでも痛みが引きにくい
- 早期であれば休養をとることで回復が期待できますが、症状が進むと安静にしていても痛むようになります。
- 4.体重をかけられないほどの痛み
- さらに悪化すると、歩くことや足をつくことすら困難になり、日常生活に影響が出ることがあります。
疲労骨折は、骨折なので押す強い痛みがある明確な場所があるのが特徴です。また、練習を始めると痛むが、温まると一時的に痛みが消え、運動を終えると痛みがまた出現するという初期症状も見逃せません。
痛みの程度は人それぞれですが、初期症状のうちから対処を始めることが大切です。そのまま我慢していると骨折が広がり、治療に長い時間を要するケースもあります。
疲労骨折の検査・診断
疲労骨折が疑われる場合には、整形外科などで専門医による診察を受けます。主な検査方法は以下のとおりです。
- 1.X線検査
- 一般的な骨折の診断でよく行われる方法です。ただし、疲労骨折はごく小さなひび割れのため、発症の初期段階では写りにくいことがあります。
- 2.MRI検査
- 骨の中の状態まで詳しく調べることができ、X線では見つからないような初期の骨の変化を捉えられます。骨だけでなく周辺の軟部組織(なんぶそしき)(※1)にも異常がないか確認できます。
- 3.CT検査
- 骨の構造を3次元的に見ることができるため、骨折の細かい形状や位置を把握しやすいですが、MRIに比べると軟部組織の情報は得にくい場合があります。
医師は痛みの場所や運動状況などを聞き取り、必要な画像検査を組み合わせて総合的に診断します。
※1:臓器や骨組織を除く筋肉や皮膚及び皮下組織、血管、末梢神経などのこと
疲労骨折の治療
疲労骨折の治療は、骨が回復するまで患部を休ませることが最も重要です。具体的には次のような方法が取られます。
- 1.安静と休養
- 運動を中止、あるいは大幅に制限し、患部にかかる負荷を減らします。痛みが取れるまで、通常は数週間から数か月かけて休む必要があります。
ただし、安静は単なる休みではなく、骨を以前より強くするために必要な修復期間です。痛みが消えたからとすぐに元の練習に戻るのではなく、筋力トレーニングやフォームの見直しを行い、負荷に負けない体を作ってから復帰することが、再発を防ぐ大切な方法です。 - 2.装具(そうぐ)や松葉杖(まつばづえ)の使用
- 足など体重がかかる部位にストレス骨折が起きた場合、ギプスやブーツ型の固定具を利用することがあります。痛みが強い場合は松葉杖で歩行を補助することもあります。
- 3.痛み止めや炎症を抑える薬
- 非ステロイド性抗炎症薬などで痛みを和らげることがあります。ただし、薬だけに頼ると、痛みが軽減した状態で無理を続けてしまうリスクもあるため注意が必要です。
- 4.リハビリテーション
- 痛みがおさまってきたら、専門家の指導のもとで筋力トレーニングやストレッチを始めます。急にハードな運動には戻らず、徐々に体力をつけていきます。
- 5.手術の可能性
- ごくまれに、骨折部分の治りが悪い場合などは手術による固定が検討されることがあります。ただし、疲労骨折の多くは手術をせずに治すことが可能です。
疲労骨折の合併症
疲労骨折を放置したり、回復途中で無理をしてしまうと、以下のような合併症を引き起こす場合があります。
- 完全骨折
- ひび割れが進んで、骨が完全に折れてしまうことがあります。治療期間が長期化し、手術が必要になる場合もあります。
- 慢性的な痛みや歩行障害
- 十分に治らないまま運動を続けると、痛みが長引いて日常生活にも支障をきたすおそれがあります。
- 骨の変形
- 骨折部分がずれたまま治癒(ちゆ)すると、骨が変形し、将来的に関節に負担がかかる場合があります。
疲労骨折の予防
疲労骨折の予防には、以下のようなポイントが重要です。
- 1.適度な運動量の調整
- 運動を始めるときや、トレーニング量を増やすときは、少しずつ段階的に負荷を上げます。
- 2.正しいフォームの指導を受ける
- ランニングやジャンプなどの動作を正しい姿勢で行うことで、足や骨にかかる衝撃を均等に分散できます。
- 3.休息日を設ける
- 連日ハードに練習するのではなく、体や骨を休ませる日を必ず入れます。睡眠をしっかり取ることも回復には欠かせません。
- 4.栄養バランスに気をつける
- カルシウムやタンパク質、ビタミンDなど、骨を強くする栄養を十分にとりましょう。必要に応じて栄養士や医師のアドバイスを受けるのも有効です。
- 5.適切なシューズや用具を使用する
- 足にフィットした靴や、クッション性に優れたシューズを選び、適度に買い替えることで衝撃をやわらげます。
更新:2026.09.25
