基礎情報

概要

尿失禁とは、自分の意志とは関係なく尿がもれてしまう状態をいいます。女性に多いイメージがありますが、男性や若い人にも起こる可能性があります。たとえば、くしゃみや咳をしたとき、重い荷物を持ち上げたときに少し尿がもれてしまうケースも尿失禁の一種です。

日本では40歳以上の女性の約3人に1人が経験しているとも言われ、決して珍しいことではありません。また、高齢化の影響もあり、尿失禁に悩む人が増えていると報告されています。生活の質に大きな影響を与えるため「年だから仕方ない」と諦めるのではなく、適切な対策で症状は改善することができます。

尿失禁の原因

尿失禁にはさまざまな原因がありますが、大きく分けると以下のようなタイプがあります。

1.腹圧性尿失禁
重たいものを持ち上げた時やくしゃみ・咳・笑い・運動などでおなかに力が入ったときに、尿がもれてしまうタイプです。骨盤底筋(*1)が弱ることで起こります。出産や肥満、加齢などが関係することが多いです。
2.切迫性尿失禁
我慢できないほどの強い尿意を突然感じて、トイレに間に合わずにもれてしまうタイプです。過活動膀胱(*2)などが原因とされています。
3.溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)
膀胱に尿がたまりすぎてあふれるようにもれるタイプです。排尿がスムーズにできず、常に尿が残ってしまう状態が続くために起こります。前立腺の肥大や神経の障害などが関係する場合があります。
4.機能的尿失禁
トイレに行きたい気持ちはあるのに、認知症や体の運動機能の問題でトイレまで間に合わず、結果的にもれてしまうタイプです。排尿の機能自体ではなく、行動や判断の障害が原因となります。
5.混合性尿失禁
上記のいくつかの原因が同時に起こるタイプです。たとえば腹圧性と切迫性が一緒にみられるなど、多様な症状が混在します。

※1:骨盤まわりの臓器を支える筋肉
※2:膀胱が過敏に反応して頻繁に尿意が起こる状態

図
図:尿失禁

尿失禁の症状

尿失禁の症状は、人によって違いがあります。主なものとして、次のような事例が報告されています。

  • くしゃみや咳、重い荷物を持ち上げたときに少量の尿がもれる(腹圧性)
  • 急に強い尿意が起こり、トイレに行く前に出てしまう(切迫性)
  • いつも残尿感があり、少しずつ尿がもれる(溢流性)
  • 歩行や着替えが難しく、トイレにたどり着くまでに間に合わない(機能的)

いずれの場合も、「少しもれるだけだから」と放っておくと、症状が進んで量が増えたり、生活の質が落ちたりすることがあります。違和感がある場合は早めに医療機関を受診するのが望ましいです。

尿失禁の検査・診断

尿失禁が疑われる場合、主に以下のような検査や診断が行われます。

1.問診
医師が、いつどのようなタイミングで尿がもれるのか、どれくらいの量がもれるのかなどをくわしく聞き取ります。また、生活習慣や普段の飲水量、出産経験や泌尿器系の病気などについても確認します。
2.尿検査
細菌が混じっていないかや、血液が混じっていないかを調べます。尿路感染症やほかの病気による影響がないかを確かめるために重要です。
3.超音波検査(エコー検査)
おなかの上から機器を当てて、膀胱や腎臓の状態をチェックします。尿がどれくらい残っているか、残尿量をみることで、溢流性尿失禁の可能性を探ります。
4.排尿日誌の記録
1日のうち何回トイレに行ったか、どれくらい尿が出たか、どんなタイミングでもれたかなどを記録する方法です。もれるタイミングや飲水量の傾向を把握するための最も重要な診断材料の一つとなります。2〜3日分を記録して持参するだけで、診察が非常にスムーズになります。
5.尿流量測定
特別な機器を使って、どのくらいの勢いで尿が出るのかや、出るまでに時間がかかっていないかを調べることがあります。

これらの検査結果を総合して、どのタイプの尿失禁かを特定し、治療方針を決めます。

尿失禁の治療

尿失禁の治療は、原因やタイプによって異なります。主な治療方法を以下にまとめました。

1.生活習慣の見直し
食事・飲水の調整:カフェインやアルコールは膀胱を刺激しやすいので、取りすぎに注意します。
体重管理:肥満はおなかに負担をかけ、腹圧性尿失禁を悪化させることがあります。適度な運動やバランスのよい食事で体重をコントロールします。
排尿訓練:あらかじめ決めた時間にトイレに行って排尿する方法で、切迫性尿失禁の症状を和らげることが期待できます。
2.骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋とは、骨盤内の臓器を下から支えている筋肉群のことです。
ケーゲル体操:おしっこを途中で止めるイメージで骨盤底筋をぎゅっと締める運動を定期的に行います。1回5秒程度、リラックスした状態で繰り返し行いましょう。自宅でも簡単にでき、腹圧性尿失禁の改善に役立つことがあります。
3.薬物療法
抗コリン薬:膀胱の過剰な収縮を抑え、切迫性尿失禁を緩和する薬です。
β3作動薬:膀胱をゆるめて、尿をためやすくする薬です。過活動膀胱の症状を和らげます。
女性ホルモン補充療法:閉経後の女性で、尿失禁に女性ホルモンの減少が関係している場合、ホルモン補充が有効なこともあります。
4.器具の使用
骨盤底を支えるペッサリー(リング状の器具)などを膣に入れることで、臓器が下がりすぎるのを防ぎ、腹圧性尿失禁を軽減する場合があります。
5.手術療法
生活習慣の改善や薬による治療で十分な効果が得られない場合、手術が選択されることがあります。
スリング手術:メッシュ状のテープを尿道や膀胱を支える位置に配置し、腹圧性尿失禁を改善する方法です。
人工尿道括約筋(かつやくきん)の埋め込み:重度の場合に行うことがあり、機器を使って尿道を締めたり緩めたりします。

尿失禁の合併症・影響

尿失禁を放置していると、以下のような影響が生じる可能性があります。

  • 皮膚トラブル:尿がもれたままの状態が続くと、皮膚がかぶれたり炎症を起こしたりすることがあります。
  • 感染症:不衛生な状況から尿路感染症や皮膚感染症を引き起こす恐れがあります。
  • 心理的ストレス:外出を控えたり、人前での失敗を恐れたりして、気持ちが落ち込んだりストレスがたまったりすることが考えられます。

尿失禁の予防

尿失禁を完全に防ぐのは難しい場合もありますが、以下のような工夫でリスクを減らすことができます。

1.適度な運動と体重管理
過度の肥満は骨盤底筋へ負担をかける要因になります。適度な運動で筋力を維持し、健康的な体重を保つようにしましょう。
2.骨盤底筋トレーニングの習慣化
普段からケーゲル体操を行い、骨盤底筋を鍛えておくと、将来の尿失禁リスクを抑えることが期待できます。
3.喫煙や便秘の対策
喫煙は血液循環を悪くし、咳が増える要因にもなります。便秘によるいきみも腹圧を高めるため、これらを改善することで尿失禁のリスクを減らすことができます。
4.こまめなトイレ習慣
強い尿意がなくても定期的にトイレに行く「定時排尿」は、膀胱に尿がたまりすぎることを防ぎ、溢流性尿失禁の予防にも役立ちます。

更新:2026.09.25