肋骨骨折
基礎情報
概要
肋骨骨折(ろっこつこっせつ)は、胸の左右に配列している肋骨が折れたりひびが入ったりすることです。外部から強い衝撃が加わるなどして起こるけがの一つです。胸をぶつけたり、転倒や交通事故などで強い力が肋骨(ろっこつ)(※1)にかかったときに発生します。スポーツ中の接触プレーや、階段からの転落など、日常生活でも起こりうるため、誰にでもリスクがあります。
肋骨骨折は単に胸が痛むだけでなく、呼吸に合わせて動くたびに鋭い痛みが走るようになります。また、折れた骨が内側にある肺などを傷つけていないかを確認することが、治療において非常に重要です。
※1:肺や心臓などを保護している骨

肋骨骨折の原因
肋骨骨折を引き起こす主な原因は、胸の辺りを強く打撲(だぼく)(※2)することです。具体的には次のようなシーンで起こりやすいとされています。
- 1.転倒や転落
- 家の中や外で転んだり、高い場所から落ちたりして胸を強打すると、肋骨に過剰な力がかかって骨折することがあります。
- 2.交通事故
- 車や自転車、バイクに乗っているときに衝突事故が起きると、シートベルトやハンドル、地面などで胸部を強く圧迫して肋骨骨折につながるケースがあります。
- 3.スポーツ中の衝突や衝撃
- ラグビーやアメフトなどの激しいコンタクトスポーツ、あるいは球技や格闘技などで相手や道具、地面との強い衝突がある場合も要注意です。
- 4.骨が弱くなっている場合
- 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)(※3)や加齢などにより骨が弱っていると、軽い衝撃でも肋骨が折れやすくなります。
また、強い衝撃以外に、ゴルフのスイングの繰り返しや、激しい咳を何度も続けることで骨にひびが入る疲労骨折によることもあります。特定のスポーツをしている人や、風邪が長引いている人は注意が必要です。
※2:ぶつけること
※3:骨密度が低下し、骨がもろくなる病気
肋骨骨折の症状
肋骨骨折の症状は、折れ方や場所、年齢や体格によって異なりますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 1.胸部の強い痛み
- 体を動かしたときはもちろん、呼吸をするだけでも痛むことがあります。とくに深呼吸やくしゃみ、咳などで胸が大きく動くときに強い痛みが走ります。
- 2.腫れや皮下出血(ひかしゅっけつ)
- 骨折部位の周辺が腫れたり、内出血によって青紫色に変色する場合があります。
- 3.呼吸のしづらさ
- 痛みのせいで深い呼吸を避けるようになり、浅い呼吸になることがあります。肺を十分にふくらませられず、息苦しさを感じる場合もあります。
- 4.骨の変形や突起感
- 強い衝撃で肋骨が大きくずれたり、ひどく折れたりしている場合、押さえたときに骨の突起を感じたり、不自然な凸凹を確認できることもまれにあります。
最大の特徴は、深く息を吸ったとき、咳やくしゃみをしたとき、体をひねったときに強い痛みが出ることです。強い痛みで呼吸が浅くなりがちですが、それが原因で肺に痰が溜まり、肺炎を引き起こすこともあるため、痛みをコントロールしながら適切に呼吸を続けることが大切です。
症状によっては、肺や心臓、血管などに影響が出ている可能性もあるため、強い痛みや呼吸困難があるときは早急に医療機関を受診する必要があります。
肋骨骨折の検査・診断
肋骨骨折を疑う場合、整形外科や救急外来などで以下のような検査を行います。
- 1.問診と視診・触診
- まず、いつどのように胸をぶつけたのかを聞き取り、痛みの度合いや腫れ、変形の有無を確認します。触診で押さえたときに強い痛みがあるか、骨のずれが感じられるかなどを調べます。
- 2.X線検査
- 肋骨骨折の診断にもっともよく使われる方法です。骨折線(※4)が確認できる場合が多いですが、小さなひびの場合は写りづらいこともあります。
- 3.CT検査
- レントゲンでははっきりしない骨折や、複数の肋骨が折れている場合など、詳しい骨の状態を調べるときに使われます。
- 4.超音波検査やMRI検査
- 肋骨そのものだけでなく、周囲の筋肉や血管、内臓などの損傷が疑われる場合に追加で行われることがあります。
骨折の有無やずれ方、さらに周囲の臓器への影響を総合的に判断しながら、今後の治療方針を決めていきます。
※4:骨に入った亀裂や割れ目
肋骨骨折の治療
肋骨骨折の治療は、折れた肋骨の位置や重症度、患者の体力などによって異なります。一般的な治療方法は以下のとおりです。
- 1.保存療法
- 肋骨骨折の多くは、骨をギプスのように固定することが難しく、経過観察で自然治癒(しぜんちゆ)を目指す「保存療法」が中心となります。以下のような手段で痛みをコントロールしながら、折れた骨が自然にくっつくのを待ちます。
- 鎮痛薬(ちんつうやく)の服用や注射
痛みを和らげるために、痛み止めの薬やブロック注射(※5)を使うことがあります。 - 胸部の固定
過去には、胸部を強く圧迫して動きを制限するバストバンドを使う方法が一般的でしたが、深呼吸がしづらくなるなどのデメリットがあり、現在はあまり推奨されない傾向にあります。 - 呼吸リハビリ
肺炎(はいえん)などを防ぐため、痛みが強くない範囲でできる限り深呼吸や軽いせき払いを行い、肺に十分な空気を入れるように心掛けます。 - 2.手術
- 肋骨が複雑に折れている、骨の破片が内臓を傷つけている、呼吸障害が著しいなど重症の場合は、金属プレートなどで骨を固定する手術が検討されることがあります。ただし、肋骨骨折の大半は手術を行わずに治療可能です。
治癒には一般的に数週間かかりますが、年齢や健康状態、骨折の部位によって差があります。痛みが軽くなるまで無理をせず、医師の指示に従った安静とリハビリを続けることが大切です。
※5:痛みを抑える注射
肋骨骨折の合併症
肋骨骨折に伴い、以下のような合併症が起こることがあります。
- 気胸(ききょう)や血胸(けっきょう)
- 肋骨の破片が肺や胸膜(きょうまく)(※6)を傷つけ、肺や胸腔(きょうくう)(※7)に空気や血液がたまる状態です。呼吸困難や胸の痛みを引き起こします。
- 肺炎
- 深呼吸やせきがしづらいことから、肺にたまった細菌や分泌物をうまく排出できず、肺炎を起こしやすくなります。
- 骨の変形や治りの遅れ
- 重度の骨折や高齢者の場合、骨折部分がずれたままくっついたり、治癒に時間がかかったりすることがあります。
合併症を防ぐためにも、痛みがある場合でも可能な範囲で呼吸を保ち、痛みが耐え難いときは医師に相談しながら鎮痛薬を適切に使うことが重要です。
※6:肺を覆う膜
※7:胸の中の空間
肋骨骨折の予防
肋骨骨折を完全に防ぐことは難しいですが、以下のような対策が有効と考えられています。
- 1.転倒や衝突事故を減らす工夫
- 段差や滑りやすい床を見直す、照明を明るくするなど、家庭内外で転倒を防ぐ環境を整えましょう。自転車やバイクに乗るときは、ヘルメットやプロテクターを正しく着用するなどの安全対策が大切です。
- 2.骨の健康を保つ
- カルシウムやビタミンDを含む食品を積極的にとり、適度な運動で骨密度(こつみつど)を維持します。特に骨粗鬆症が疑われる人は、医師の指導を受けながら治療やサプリメントを検討します。
- 3.適度な筋力トレーニング
- 体を支える筋肉が強ければ、衝撃を受けたときに骨への負担を減らすことができます。無理のない範囲で筋力を維持・向上させると、骨折のリスクを減らすことができます。
更新:2026.09.25
