基礎情報

概要

特定の食物の摂取によって起こる食物アレルギーは、近年増加傾向にあり、以前には見られなかった果物・野菜・芋類などによる食物アレルギーも報告されています。

スーパーなどに並べられた加工食品のパッケージに記載されたアレルゲン表示は、食物アレルギーにつながりやすい食品を列挙したものです。厚生労働省令で表示が義務化されている特定原材料は、平成13(2001)年の施行当時は「乳、卵、小麦、そば、落花生」の5品目でしたが、現在では「乳、卵、小麦、そば、落花生、えび、かに」の7品目に拡大しました。表示を推奨する特定原材料に準ずるものについても、改定を重ね「アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・くるみ・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・まつたけ・もも・やまいも・りんご・ゼラチン」の21品目となっています。

原因

アレルギー反応は、異物を撃退しようとする免疫反応です。食物アレルギーの多くは、即時型(そくじがた)アレルギー反応と呼ばれ、アレルゲンとなる食品を摂取した直後から2時間以内ぐらいにアレルギー反応が起こります。即時型アレルギー反応には、免疫グロブリンE(IgE抗体)というタンパク質が関与しています。卵に対してIgE抗体を作る人の場合は、卵がその人にとってのアレルゲンとなります。IgE抗体に依存しない非即時型(遅発型、遅延型)と呼ばれる反応もありますが、この場合の発症メカニズムははっきりとは解明されていません。

小児と成人

食物アレルギーの大部分は乳児期に発症します。小児の主要なアレルゲンは、卵・牛乳・小麦・大豆です。それに対して成人の主要アレルゲンは魚類・えび・かに・果物などで、小児と成人では発症後の経過にも違いがあります。

小児の食物アレルギーは1歳前後に多く発症しますが、アレルゲンとされる食品を医師の指導の下に注意深く摂取していくことで次第に耐性がつき、多くの場合は小学校に入学するころには自然に症状が現れなくなります。一方、成人型では耐性の獲得が難しいとされています。

即時型アレルギー反応以外で最近注目されているタイプに「口腔(こうくう)アレルギー症候群」があります。成人女性に多いとされ、果実や野菜を食べたのちに口や喉(のど)の粘膜に刺激やかゆみを感じます。また、学童期以降に見られる「食物依存性運動誘発性(しょくもついぞんせいうんどうゆうはつせい)アナフィラキシー」は、特定の食品を食べてから運動することで発症するタイプで、ショック症状を引き起こすことも珍しくないため、注意が必要です。

グラフ
グラフ:消費者庁「平成30年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」より

症状

食物アレルギーによって引き起こされる症状としてもっとも多く認められるのは、全身のかゆみやじんましん、湿疹、目の充血や目のかゆみ、涙が出るなどの皮膚粘膜(ひふねんまく)症状です。それに次いで、嘔吐(おうと)や下痢、慢性の下痢による体重が増えないなどの消化器症状、口の中や喉のかゆみや腫れ、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの上気道(じょうきどう)症状、喉がゼィゼィする、呼吸が苦しくなるといった下気道(かきどう)症状の順で頻度が高くなります。

出現率は高くはありませんが、深刻なのがアナフィラキシーと呼ばれる全身性のショック症状です。頻脈(ひんみゃく)・血圧低下・活動性低下・意識障害などを引き起こし、生命の危険につながるケースもあります。こうした症状が見られた場合には、即座に医療的な処置が必要です。

検査と診断

食物アレルギーの診断では、アレルギー反応が疑われた際に食べた物や量、症状、食べてから症状が現れるまでの時間などを詳しく聞き取ります。

こうした問診に続いて、血液中にIgE抗体があるかどうかを調べる「血液検査」や、皮膚の上にアレルゲン試薬をのせ、小さな傷を作って反応を見る「皮膚プリックテスト(スクラッチテスト)」を行います。スクラッチテストでは、15分程度経過して皮膚が赤くなれば、食物アレルギーが疑われます。

アレルゲンと考えられる食品がいくつか想定できる場合には、それらの食品を2~4週間除去して症状が改善するかを観察する「食物除去(しょくもつじょきょ)試験」を行います。日頃、母乳を摂取している乳幼児が検査の対象になる場合には、母親の食事からも対象となる食品を除去する必要があります。食物除去試験の確定診断には、実際に特定されたアレルゲンを食べてみる「食物負荷(しょくもつふか)試験」を行うのが一般的です。

治療

食物アレルギーの治療は、正しい診断に基づいた適正な食物除去が基本です。アレルゲンと特定された食品を完全に排除してしまうのではなく、耐性をつけるためにも症状を見ながら少しずつ食べられる食品の種類と量を増やしていきます。

大切なのは、自己判断ではなく医師の指導の下に行うことです。栄養面だけでなく、食の楽しさを広げるためにも、焦らず医師と二人三脚で食事療法を続ける心構えが重要です。

皮膚症状や消化器症状には、抗ヒスタミン薬を投与するなど、症状に応じた対症療法がとられます。

更新:2022.05.25