基礎情報
概要
がんは、すべての臓器・組織に発生しますが、皮膚や胃・腸の粘膜といった上皮性細胞から発生した悪性腫瘍を「癌」、筋肉・線維・骨・脂肪・血管・神経などの非上皮性細胞から発生した悪性腫瘍を「肉腫(サルコーマ)」、造血臓器から発生した白血病や悪性リンパ腫などに大きく分類されます。肉腫は、体中どこにでも発生する可能性がありますが、四肢(手足)の深部に発生することが多く、肉腫の約25%を占める骨の肉腫には、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などがあり、残りの75%の軟部組織(筋肉、脂肪、神経など)の肉腫には、脂肪肉腫、未分化多形細胞肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫などがあります。肉腫は非常に多くの種類がありますが、総じてまれな腫瘍であり、成人発生悪性腫瘍の1%以下の稀少がんに分類されます。
(国立研究開発法人国立がん研究センター:「肉腫(サルコーマ)」)
時に進行が早く、治療が困難なこともありますが、肉腫の治療経験が豊富な病院で集学的に診断・治療すれば治癒が可能です。
症状
骨の肉腫
骨肉腫の症状として痛みや腫れがありますが、見ただけではあまり分からないことが多く、触ると硬く腫れていたり、少し温かく、違和感を持つ人が多いといわれています。骨肉腫は10代から20代の若年層のひざや肩の周囲に発生することが多く、成長時やスポーツ障害、変形性疾患と混同しがちであり、痛みや腫れだけでは一概に肉腫と診断することは困難です。また、進行すると骨が弱くなって骨折を起こすこともあります。さらに、ユーイング肉腫では、痛みや腫れの症状に加えて、発熱など全身の症状を伴うケースも見られます。
軟部組織の肉腫
30種類以上に分類される軟部肉腫は、痛みのないしこりや腫れが主な症状となります。実際には、しこりや腫れの多くは良性の腫瘍であることのほうが多いのですが、まれに悪性の軟部肉腫があります。だんだん大きくなるしこりや腫れは悪性である可能性があるので、専門病院の受診が勧められます。ピンポン球より大きな5cm以上のものは要注意です。大きくなったしこりが周りの神経を圧迫することによって、神経障害が起こり、しびれや痛み、感覚が鈍くなるなどの症状を感じる人もいます。
原因
原因は、いまだはっきりと解明されていません。しかし、関連する病気や危険因子はいくつか見つかっています。骨肉腫の発症には、遺伝子変異が原因の1つにあると考えられています。
検査・診断
まず年齢、しこりなどが発生した時期、部位などの問診を行います。画像検査は、X線、CT、MRI、PETなどを行います。最終的には、生検(組織検査)を行い、良性なのか悪性なのか、どんな病気なのかを確認することで診断します。生検は針を刺して組織を採取する場合もありますが、正確な診断のためには、手術によって十分な組織を採取したほうがよい場合もあります。
治療
肉腫は幅広い年齢層の患者さんのさまざまな部位・組織に生じるため、その症状や必要とされる治療方法もさまざまです。そのため、手術や抗がん剤など、肉腫の種類や進行度合いに合わせた集学的な治療を受けることが望まれます。こうした希少性、多様性という特徴から、多くの治療実績がある医療機関での診断・治療が何より重要です。
更新:2022.08.22