かんこうへん

肝硬変

基礎情報

概要

肝硬変(かんこうへん)とは、肝臓(かんぞう)の細胞が何らかの原因で長期間にわたりダメージを受け続けることによって、肝臓の組織が硬く変化し、正常に機能できなくなる病気です。肝臓は、体内の有害物質を分解したり、エネルギーを貯蔵(ちょぞう)したりするなど、とても重要な働きを担っています。肝硬変が進行すると、肝臓が十分に働けなくなるため、体にさまざまな不調が起こるようになります。

肝硬変は、その進行度によって、自覚症状がほとんどなく肝臓の機能が保たれている「代償期(だいしょうき)」と、肝機能が限界を超え、黄疸や腹水などの症状が出る「非代償期(ひだいしょうき)」に分けられます。代償期のうちに適切な治療を開始し、非代償期への進行を食い止めることが、その後の寿命を大きく左右します。

日本では、B型肝炎やC型肝炎が長引くことによって肝硬変へ進行するケースが多いとされています。肝臓病は日本人の死亡原因の上位に挙がっており、肝硬変が含まれる重い肝臓病の患者数は少なくありません。

肝硬変の原因

肝硬変は、肝臓に長期間ダメージを与える原因が続いた結果として起こります。主な原因は以下のとおりです。

1.慢性肝炎(まんせいかんえん)
B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって生じる肝炎が、長期にわたって肝臓を傷つけます。
日本ではこのウイルス性肝炎の影響が大きく、放置すると肝硬変へと進行する可能性があります。
2.アルコールの過剰摂取
長期間にわたって大量のアルコールを飲み続けると、肝臓に負担がかかり続け、肝硬変に至ることがあります。
3.代謝機能障害関連脂肪肝疾患
肥満(ひまん)や糖尿病などによって、肝臓に脂肪がたまり炎症が起こる「脂肪肝炎(しぼうかんえん)」の状態が続くと、肝臓の細胞が破壊されて肝硬変に進むことがあります。
これを特にMASLD(マッスルディー)と呼ぶこともあります。
4.その他の原因
自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん):体の免疫が肝臓を攻撃してしまう病気
原発性胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん):肝臓の中の胆管が炎症を起こしてしまう病気

いずれの原因も、慢性的な肝臓へのダメージが続くことで正常な細胞が傷つき、肝臓全体が硬く変化してしまうのが特徴です。

図
図:肝硬変

肝硬変の症状

肝硬変は、初期の段階でははっきりした症状が出ない場合があります。しかし進行すると、肝臓がさまざまな働きを果たせなくなるため、次のような症状があらわれることがあります。

  • 倦怠感(けんたいかん)や疲れやすさ:肝臓の機能が落ちるとエネルギーの代謝が滞(とどこお)り、体がだるく感じられます。
  • 食欲不振や吐き気:肝臓の機能低下によって胃腸の調子も崩れやすくなります。
  • むくみ:特に足首やふくらはぎなどに水分がたまりやすくなります。
  • 腹水(ふくすい):おなかの中に水がたまり、おなかがふくらんでくる状態。
  • 黄疸(おうだん):皮膚や白目が黄色くなる。肝臓がビリルビン(*1)を十分に処理できなくなるため。
  • 皮膚のかゆみ:胆汁(たんじゅう)の流れが悪くなり、かゆみを引き起こす物質がたまる場合があります。
  • クモ状血管腫(けっかんしゅ):皮膚の表面にクモの巣のような小さな血管の広がりが見られることがあります。

これらの症状が進行すると、肝臓の機能が著しく低下し、生命にかかわる状態に陥ることもあるため、早めの診断・治療が重要です。

※1:赤血球が壊れた後にできる色素

肝硬変の検査・診断

肝硬変の疑いがある場合、主に次のような検査・診断方法が行われます。

1.血液検査
肝機能検査:ASTやALTなどの酵素値を調べ、肝臓の炎症やダメージの程度を把握します。
血液凝固能(けつえきぎょうこのう)の検査:肝臓は血液の凝固にかかわる物質を作っているため、これが低下すると肝機能の悪化が疑われます。
アルブミンやビリルビンの測定:栄養状態や肝臓の解毒能力を推測する指標となります。
2.画像検査
超音波検査:肝臓の形や大きさ、血流の状態を確認し、腹水の有無も調べられます。
CT・MRI:肝臓の内部構造をより詳しく観察し、がんなどの合併症がないか確認します。
肝硬度測定:肝生検のように針を刺さなくても、超音波などを使って外から肝臓の「硬さ」を数値化する検査(フィブロスキャンや剪断波エラストグラフィなど)が普及しています。これにより、身体への負担を少なく進行度を判定できるようになっています。
3.肝生検(かんせいけん)
細い針を使って肝臓の組織を一部採取し、顕微鏡で詳しく調べます。肝硬変の確定診断や進行度の評価に用いられます。

医師は、これらの検査結果や症状の状況を総合的に判断して肝硬変と診断します。原因となるウイルス感染の有無などもあわせて調べることで、治療方針が決まります。

肝硬変の患者さんは、年間に数%という高い割合で肝がんを発症するリスクがあります。ウイルスを除去したりアルコールを断ったりして肝機能を安定させるのと並行して、3〜6ヶ月に一度の定期的なエコー検査やCT、血液検査(腫瘍マーカー)を一生涯継続することが、最も重要な「命を守る対策」です。

肝硬変の治療

肝硬変は、肝臓の組織が元に戻りにくい病気ですが、原因を取り除いたり症状をコントロールしたりすることで、進行を遅らせたり合併症を予防できる場合があります。主な治療方法は以下のとおりです。

1.原因に対する治療
ウイルス性肝炎:抗ウイルス薬を使ってウイルスの増殖を抑え、肝臓へのダメージを減らします。
アルコール関連肝疾患:禁酒を徹底し、必要に応じて栄養管理や薬物治療を行います。
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH):食事療法や運動療法で体重をコントロールし、肝臓への負担を軽くします。
2.症状の管理
利尿薬(りにょうやく):腹水やむくみを減らすために使用します。
薬物療法:肝性脳症(かんせいのうしょう)を防ぐ薬など、合併症に応じて使い分けます。
栄養管理:タンパク質や塩分を適切に制限し、バランスの良い食事を続けることが大切です。
3.肝移植(かんいしょく)
肝臓の機能が極端に低下し、治療で改善が見込めない場合には、肝移植が検討されます。ただしドナー(*2)の確保など、さまざまな問題が伴います。

※2:臓器提供者

肝硬変の合併症

肝硬変が進行すると、以下のような合併症が起こりやすくなります。

  • 肝性脳症:肝臓の解毒機能が低下し、アンモニアなどの有害物質が体内にたまって意識障害などを引き起こす状態です。「おかしな言動」「昼夜逆転」「計算ができない」といった症状が現れます。本人は気づかないことが多いため、ご家族が異変に気づくことが重要です。
  • 食道・胃静脈瘤:血流の行き場がなくなり、食道や胃の血管がコブのように膨らみます。破裂すると大量吐血を招き、命に関わります。ト
  • 脾腫(ひしゅ):脾臓が腫れ、血小板が減少して出血しやすくなります。
  • 肝がん:肝硬変になると、肝臓がんを発症するリスクが大きく高まります。

肝硬変の予防

肝硬変を予防するには、肝臓に負担をかけない生活習慣が大切です。

ウイルス性肝炎の早期発見・治療
B型・C型肝炎に感染している場合は、定期的に検査を受け、早めに抗ウイルス薬の治療を始めましょう。
過度の飲酒を避ける
アルコールは肝臓への大きな負担となります。適量を守る、もしくは控えることが推奨されます。
肥満を予防し、バランスの良い食生活を維持する
糖尿病や脂質異常症(ししついじょうしょう)などを避けるためにも、適度な運動とバランスの良い食事を心がけましょう。
定期的な健康診断
血液検査などで肝臓の状態を把握し、異常があれば早期に対処することが重要です。

更新:2026.09.25